1章その4侍女頭マリアンヌの策略
マリアンヌは、宮廷では一目置かれる侍女であった。
生まれは場所が場所なら、貴族にでもなっていたほどの容姿と頭の良さで侍女頭にまで上り詰めた。
(私が侍女頭という身分に登り詰められたのも、私の美貌と立ち振る舞いのお陰……。只の公爵令嬢には無理な事ですわ。)
マリアンヌは王子様のティーカップに紅茶を注ぎながら、心の中でそう呟いた。
その頃ロゼッタ家では、エミリーが天蓋付きのベッドでゴロゴロしながら考えていた。
(ダンジョンに行きたいが、あの親の性格じゃ、外の街に出た後ににこっぴどく叱られてお灸を据えられるのが一番ありそうだろうな……。)
エミリーは腕組みをしながら考えた。(それにしても、ダンジョンが出来ていたなんてどこかのゲームじゃあるまいし、緑が好きで読んでいたあの本と同じ世界だよなぁ。)
エミリーもとい栄二は栄二の考えに戻ってダンジョンにとう行くか考えていた。
そして、そんな事をエミリーがうだうだ考えている最中に、宮廷では次々とダンジョンの中の調査報告が届いていた。
あるギルドメンバーはゴブリンに襲われて死んだり、あるメンバーは餓死で死んでいくものもあった。
何分、どこまで広いのか、深さはどの位あるのか未知数なのである。
「また炎の騎士団のメンバーが失敗しました。」
また宮廷にギルドメンバーの死亡が次々と届いてくる。
「そんなにダンジョンは大変なのか?」
王子は驚いていた。
「教会に次々と負傷者が送られて来ます。」
聖ペトラ教会のは次々とダンジョンの立ち向かった勇者達の死体の山が累々とある。
「それでも……ダンジョン探索は辞めないのですね。」
領主は呆れながら、王子の顔をちろりと見た。
「なんだ、その目は。今すぐ止めさせろとでも言うのかい?無駄さ。」
王子は領主に言った。
「ダンジョン探索の褒美も多めに出している以上、沢山来るだろうさ……。」
王子は執務官が持って来る大呂絵の書類を領主に見せながらこう話した。
「僕はこれからこの書類に探索許可の印を押すが、こんなに一杯探索したいギルドの者たちを君一人の力で止められるかね?」
王子はにやりと笑った。
その表情に領主は思わずたじろいでしまう。
「とにかく僕のやり方に口を出さないでくれたまえ。」
王子は領主が何もない反論が出来ないのを見てふんと鼻を鳴らした。
(ダンジョンの中に行った者のメンバーの中の報告書に面白いものがあったからなあ。)
王子は机の上にある沢山の報告書の中から、少しの報告書を取り出して机の上にそれぞれバラバラに並べた。
「この報告書はダンジョンの入り口から帰るまでの時間が書いてあってとても有効だ。そして、こちらの報告書はダンジョンのいる魔物の襲撃時間までを書いてある。だかその報告書を書いた者は死んでしまったと報告書の最後に書いてある最後の報告書はダンジョンの中の装飾についてだ。ダンジョンの階層ごとに宝玉がある事が蔵書についての研究で分かった。だが今出ている階層は真の階層ではないから発掘して最深部に行かないとな。」
王子はまた報告書を山の中に戻した。
その時にコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「マリアンヌか?中に入れ。」
王子はメイド服を来た茶色の髪に緩いウエーブが掛かった女性に話しかけていた。
「紅茶でございます。」
マリアンヌの白い手から、とても高そうな白い磁器に繊細な花の模様が施されたティーカップの中に透明で赤みがかった紅茶を出した。
「マリアンヌの入れてくれる紅茶はいつも美味しいよ。」
王子はそう言って紅茶を持っていたマリアンヌの持ってきた紅茶と同じ色の瞳をじっと見つめた。
「……。君ももしかしたらダンジョンの秘密を探っているんじゃないのかねぇ?」
その話を王子がして来た途端にマリアンヌは隠していた本性を露わにした。
王子様には全てお見通しでしたか。」
そう言うとマリアンヌは頭につけていたメイドの頭からレース付きのカチューシャを外して、頭の後ろのシニヨンをほどいたら、元の優しげな姿とは雰囲気が違う女性が現れた。
「元貴族のマリアンヌ。それ位分かっているさ。君の父親は古文書を解読した優秀な学者でそれから母親が伯爵夫人だって事も。」
「その事は、私は王子様に一言も伝えてませんが……。あのダンジョンの竜玉の事も存じ上げているご様子。」
「御名答。」
王子はふっと笑った。
「やれやれ、君には隠し事も出来ないな。」
「そちらこそ。ダンジョンに関しては一部の階層がが岩石の崩落により下に向かえない様ですね。」
マリアンヌは報告書の山の中を漁りながら話していた。
「特にこれ……。ダンジョン下方に向かう階段にいつからか分からない岩石の崩し落ありで先に進めずと。」
「そうらしいね。」
王子は、マリアンヌの広げだダンジョンの報告書を見ながら、そのギルドメンバーの名前やらを確認しながら、それをまたくるっと丸めた。
「ダンジョンの竜玉を見つける鍵はロゼッタ家だと、古文書を翻訳した私の父が書いていた本にはそうありました。」
マリアンヌは一冊の古びた本の赤茶けた表紙には『ロゼッタ家とドラゴンの関係』と描かれた本だった。
「これはお父様が個人的に古文書を翻訳し、自分だ本を作った物。それか本棚の奥から出てきました。」
マリアンヌは本をめくりながら話す。
ロゼッタ家が、ドラゴンテイマーの血筋で長らく重宝されて来たなど歴史や、ダンジョンの装飾全てに意味があること等、マリアンヌの持っていたは本には、詳しく書いてあった。
「彼女が生贄になればダンジョンの奥にいるドラゴンも大人しくなるでしょう。」
「それはいい考えだ。ご主人様のいないドラゴンは大人しくするしかあるまい。」
マリアンヌの話を聞いて、王子は頷いた。
その頃、聖ペトラ教会では大変な事が起きていた。
神々しい絵画が描かれた天井に、目の前には目が眩むばかりにまばゆいばか金色の十字架があった。
「皆様に髪のご加護がありますように。」
そこには修道女達が、ダンジョンから次々と敗れて負傷している者達のケアにいそしんでいた。
負傷しているメンバーの中に年端もいか無い子どももいた。
「僕のお父さんがゴブリンに襲われて死んでしまったんだ。」
その子どもは泣きながら、缶の袋に入った金貨を沢山出した。
「シスターさん!これぐらいの金額ならお父さん生き返る?」
子どもは目に大粒の涙を浮かべながら話した。
「分かりました、何とかします。ちょっと、シンシア?今手が塞がってるから朝食は自分たちて作っていて!」
シスターの話した事にはーいと声が返ってきた。
孤児院の子達の声だ。
この教会では慈善事業として、孤児院を運営している。
その中でもシンシアはトップクラスにお世話をするのが上手なのだ。
「シンシアがいたお陰で助かるわ……。」
シンシアは、銀色の髪を軽く結わえなが、孤児院の2階から降りて来た。
一階のテーブルには数多くの子ども達が集まっている。
この子達は何かしらの理由で捨てられた子ども達だ。
「この世界には、死者蘇生も出来るのにどうしてこんなに子ども達が?」
シンシアは目玉焼きを作りながらそう思った。
多分、この世界にはこの世界なりの理由があるのだろう。
シンシアはため息をつきながら料理を作っていた。
シンシアはいつの間にかこの世界にいた。
シンシアは自分自身がどういうきっかけでこの世界にいるのか、そして、自分自身がどこから来て、どうしてここにいるのか?シンシアは思い出せそうで思い出せなかった。
孤児院の子たちも記憶喪失をしている子もおるので共有出来ても記憶喪失の部分だけで、彼らや彼女らは自分たちのいる世界はここだと確信しているからだ。
シンシアみたいなもしかしたら己が異世界から来たのかもという感覚がある者と違って、彼ら、彼女らのはこの世界には血の番った者が必ずとごかにいるのだ。
……。私はこの孤児院にいても共感出来ないのだわ……。」
シンシアは、玉ねぎを包丁で刻みながら、あふれ出る涙を堪えた。
「もしも、私みたいの異世界から来た友達がいたらいいのに……。」
シンシアは子ども達にスープとパンに見えるものを配りながら涙を拭った。
自分に残っている記憶がうっすらあった事をシンシアは思い出していた。
(確か、見知らぬビルの上で私が誰かを狙っていたという事だけは覚えているわ。)
シンシアは、弓を弓兵の元兵士のおじさんから教わった。
その時分の弓矢の腕前を褒めてくれた。
「まるで寓話の主人公じゃないか!」
そうおじさんは褒めてくれたが、戦場にも出ていない自分がなぜかこんなに弓矢の腕前が百発百中なのか。
それを考えると急に頭が痛くなって何も出来なくなる。
仕方ないのでシンシアは他の人に朝食の後片付けを頼んで寝ることにした。
(ダンジョンが出来たというのなら、そこに私自身の過去を辿れる事が出来ればいいのだけど。)
シンシアは目眩で何とか横になって抑えていた。
彼女らが子になっているダンジョンでは、2階層目から、ドクンドクンと脈打つ何かがあった。
その脈打つものはダンジョンに来ているギルドメンバー達を、虎視眈々と見張っていた。
(何じゃ……最近人間共が来始めて騒がしいのぅ……。)
そのドラゴンは、ギルドの猛者達がゴブリン達と必死の戦いを繰り広げる様子を眠そうな目を堪えて見ていた。
(我は高位のドラゴンじゃぞ……。ゴブリン共め何をしておるのじゃ……。)
ドラゴンが寝ている壁の近くでは、剣と槍のやり合う音がガチンと響き合う。
音的にはゴブリンがやっと苦戦するメンバーが現れたらしい。
(ぽっぽっぽっ……やだとゴブリンが苦戦する相手が出て気負ったか。)
ドラゴンは壁の横で含み笑いをした。
(ゴブリンのが後から我らの寝床を住処にしおった。)
ドラゴンは息を吐いたら、小さな炎はぼっとと吐いた。
「お母様……人間たちが怖いでしゅ。」
小さな子どものような声が聞こえた。
「どうしたんだい……、坊や……。」
ドラゴンは小さなドラゴンを抱え込むように抱いた。
その色は母竜と同じ赤色だ。
「怖いかえ……。人間達が。」
母竜は子どものドラゴンを舌で舐めているあやした。
その壁の横では、昼夜も問わず、ゴブリン達と人間達の死闘が繰り広げられていた。
その戦いのさなか、宮廷では侍女頭マリアンヌが良からぬ事を企んでいた。
「王子様と私も同じように考えている事が分かったわ……。」
マリアンヌは羊皮紙を広げ、羽ペンできちんとした公文書を書いていた。
(これをロゼッタ家に持って行けば怪しまれずにダンジョンに連れ出せるわ。)
マリアンヌは羊皮紙に英語ともどのヨーロッパの言語とも付かない言語で描かれた言語で文章を書いていた。
そして、ロゼッタ家では、公爵様と公爵夫人が、公務から帰って来た後だった。
マリアンヌはほどいた髪の毛をまたシニヨンの結い直しカチューシャをつけて、有能な侍女頭が演じていた。
「公爵様方、お帰りですか〜。」
マリアンヌはいつものぽやぽやとした天然メイドのような雰囲気で話をし始めた。
「実は、ロゼッタ家のエミリーロゼッタ様に頼みたい事がございまして。」
マリアンヌはニコニコしながら、持ってきた羊皮紙を広げて見せた。
そこにはダンジョン入場許可書が頼んでもいないのに作られていた。
「行ってはダメよ。」
すかさずテレサが制止した。
「でも、ダンジョンに行く位いいじゃないか」
クラウス公爵は読みながらテレサに言った。
「駄目です。」
テレサは、あくまで、エミリーをダンジョンに行かせる気はないらしい。
「なんだい?母さん。」
エミリーは屋敷の奥から駆け足でこちらに来た。
「こら、エミリー走るんじゃありません!」
テレサはエミリーを叱った。
「王子に仕えているマリアンヌと申します。」
マリアンヌはエミリーの両親とエミリーに深々と頭を下げた。
「君は王子から聞いている……確かとても有能だと褒めていたよ。」
「お褒めの言葉感謝いたしますわ。」
そう行ってマリアンヌへ微笑んだ。
「ダンジョンに行ってはいけない訳でもあるのか?」
エミリーは思わず栄二の時の言葉遣いで話していた。
「とにかく、行ってはなりません 。」
テレサは嫌がおうでも行かせないつもりだ。
「困りますわ、私たちにとっては大事な大事なエミリー様ですから。是非ともダンジョンに行ってくださらないと。」
マリアンヌはニコニコと笑顔で圧を掛けていた。
テレサはそのマリアンヌの笑顔に渋々と納得した
テレサはきっぱりと言い張った。
「我が一族の掟を犯した場合、即刻ダンジョンから退却すること。」
「仕方ありませんね。ですが……一つだけ忠告をしておく。」
テレサはきっぱりとマリアンヌに伝えていた。
エミリーはマリアンヌの横顔を見ると笑顔の中に憎悪が見え隠れした。




