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第二章3話 暗闇に潜む魔物たち

「おーい、シンシア。そこにいるのか?」

エミリーはシンシアに呼びかけた。

教会の保管庫はとても暗く、小さくなった蝋燭の光があるだけだ。

「あら、エミリー。どうしてここが分かったの?」

シンシアは少し笑いながら、エミリーの呼び掛けに答えた。

だが、暗闇が濃い保管庫ではシンシアがどこにいるかも分からない。

「ここは随分と暗いなあ。私が蝋燭の火を取り替えて置くよ。」

そういった後にエミリーは、棚にあった予備の蝋燭にマッチで火をつけた。

みるみる保管庫内に光が広がる。

すると、シンシアの銀髪がふわっと現れた。

「やっぱり!シンシアだったのか?」

エミリーは安堵した。

なぜなら、大量に魔物が増殖している今、外に出るのはとても危険だからだ。

「エミリーちゃん!どうしてここごが分かったの?」

シンシアは弓矢を手入れしながら話していた。

「シンシアは本当に弓矢大好きなんだね。」

エミリーは、こんな大変なのに片時も弓矢の手入れを欠かさないシンシアに感動した。

「そういえば、エミリーさんに私の弓矢の腕前を見せてませんでしたね。」

シンシアは、外に出ると、そこにゴブリンが点で見えていた。

「あれは、ゴブリンじゃねぇか!早く逃げろ!シンシア!」

するとシンシアは、ふふっと笑って、そのゴブリンの方に向かって弓を構えた。

ゴブリンは点で何も見えない。

すると、シンシアの矢が虚空をきり裂いたゴブリンの頭をぶち抜いた。

ゴブリンがいた所をみると、叢に紫色の血が滲んでいた。

「シンシア……すごいな!」

エミリーはそのシンシアの弓矢の腕前に感心した。

兵士も見た事無いが、点でしか見えないゴブリンを一撃必中で倒す人はエミリーの周りにはいなかった。

「この能力に気がついたのは最近なんです。」

シンシアは弓を下ろしながら話をし始めた。

「孤児院の子達が、湖のほとりにある林檎の樹を見つけてそれを欲しがって……。湖だから、落ちると溺れてしまうでしょう?その時に近くに狩りをしているおじさんがいて、その人から、弓矢を借りて試しに撃って見たのよ。そしたら、一つの林檎が割れずに落ちたの。」

シンシアは、また新しく矢を継いだ。

点でしかないゴブリンを見つけていた。ゴブリンはこちらに全く気づかない。

シンシアは呼吸を、整えながら弓矢を構えた。

「ふぅぅぅ……。」

シンシアは息を吸い込むとかなり息を吸い込むとバシュッ!と音を立ててゴブリンに目掛けて矢が放たれこれでもかと撃ち込んだ。

それと同時に、ゴブリンはまた紫色の血の海の中に倒れた。

(すごいっすね……シンシア。)

肩に乗っていたフレイがエミリーの話しかけた。

エミリーがフレイと話しているその時に、急に黒い影が現れた。

それをシンシアが間髪入れずに、矢を放つと、それはフェンリルだった。

フェンリルは、シンシアの矢で喉を貫かれて動かなくなっていた。

「うっわ……危なかったなぁ。」

エミリーは目の前で動かなくなったフェンリルを見ながら少し教会側に動いた。

「どうやら、ここも魔物達が近づいて来ているようね。」

シンシアは穴の開いた矢を構えていた。

「おいどうするんだ?シンシア?」

シンシアは、エミリーの制止するまもなく、教会の方に向かって飛ばすとその矢は、ピューという音を鳴らしながら教会の方に向かっていく。

その音を聞いた、教会の孤児達や、シスター・ヴィヴィアンが、その音に気かついて教会のありとあらゆる所に鍵を掛け始めた。 

「シンシアさん達からの矢による警報ですね」

ヴィヴィアンはシンシアの弓矢の腕前を知っていた。

なので、シンシアの音の出る弓矢は、警報だとすぐに気がついたのは、シンシアを除いた年長の子達は、大慌てで、今日教会で籠城出来るように準備をし始めた。

鉄製の保管庫の扉をガッツリ閉めて、魔物に食料や、武器が奪われないようにした。

そして、土嚢によるバリケードを作る事にした。

その間に、シンシアとエミリーは、教会の中に慌てて戻っていた。

フェンリルに襲われそうになったのだから仕方ない。

雨は、一旦止んでいた。

雨も、シンシアやエミリーか、教会に逃げ込んだ途端に、急に土砂降りの雨と雷の轟音が鳴り始めた。

教会の席に避難をしている。

シンシアは、ホッとしたように話しかけた。

(さっきまでのシンシアとは違う……。)

エミリーはそう思った。

(さっきのシンシアが倒したフェンリルは、結構強い魔物っすよ。)

その話をフレイから聴いて、エミリーは背筋がゾクッとして。

あの時にシンシアが倒していなかったら、俺はもしかしたらこの異世界で死んでいたのかも知れないと思った。

「今の状態だと讃美歌もミサも出来ないね。」

孤児院にいる女の子が項垂れながら話した。

魔物大増殖なんて初めてだからだろう。

「井戸とか襲われていないといいな……」

水汲み担当の男子が

ぼやいていた。

外では打ちつける雨の音がとても大きく聞こえた。

外からは湿った雨の匂いが溢れてくる。

「シスター・ヴィヴィアンも落ち着かないだろうな。」

エミリーが溜め息をついてぼーっとしていた。

「おい!聞いたか!ダンジョンの様子!」

男の子の間ではダンジョンの話で持ちきりだった。

「ダンジョンでは、鉱夫達が惨殺されているらしいぜ。」

「確か、襲って来ているのは魔物とか。」

男の子達がざわざわしている横で、孤児院の女の子達は、その話を聞いて泣きだす子もいれば怒ら出す子もいた。

「こんな時に、そんな話するの止めてくんないかな?」

一部の女の子はダンジョンの残虐な話を喜んでいる男子に軽蔑の眼差しを向けていた。

「何もこんな時に喧嘩なんてしなくてもいいのに」

シンシアはいつものシンシアに戻っていた。


「そりゃダンジョンにはお宝があると言われたら誰だってワクワクするのね。」

シンシアは溜め息をついた。

その表情は、いつもの女の子ような表情だった。

(さっきまで見せていた狙撃手の様な表情は何だったのだろう。)

エミリーもとい栄二は胸がザワザワする感覚を覚えた

(あれ……この感覚遠い昔に感じた事があるぞ。)

確か、向こうの世界で狙撃手がいた様な気がした。

そう言う事を、色々と考えていると突然雷鳴と共に、教会の窓には魔物の影が映り込んで、孤児院の子達が悲鳴を上げた。

男の子達はその女の子の悲鳴に、ざわつきはじめた。

「もしかしたら、あのバリケード突破されたのか!」

男の子が騒ぐと、周りの子たちが、一斉に教会の真ん中の集まった。

それと同時に勢いよく、閉じられた扉が開かれて、教会の高い所から見ていた男の子が教会に戻ってきてからこう言い放った。

「土嚢で作ったバリケードがオーガによって潰されている。沢山の街の人達が教会のある丘に向かって避難してきている人達が多数いるんだ!」

その話に、教会の孤児院の子達は一斉に震え上がった。

「まさか……オーガか来るなんて聞いて無いぞ!精々、ゴブリン位だと思っていたのに。」

教会の一番高い所にいた男の子は泥と雨に塗れてぐちゃぐちゃだった。

「所でシスター・ヴィヴィアンは?どこに行っているの?」

エミリーは、その男の子に質問をした。

「シスター・ヴィヴィアンなら、カルヴァン神父と一緒に街の方に出かけて行きましたよ。」

その男の子は息を切らしながら、エミリー達に説明をした。家も襲われているに違いないと思った。

「大人達がいない間どうするんだよ!」

エミリーは、ロゼッタ家の事を思い出した。魔物大増殖で確かロゼッタ家はダンジョンの近くにあったはずだ。

「こんな時に限ってテレサやクラウスさんの事を思い出しちまうなんてな……」

エミリーは自分の心の不安に気がついたのかフレイに話し掛けた。

(これは多分……!大岩の詰まりを解いちゃったから出てきただけの魔物っす。)

フレイはそう話した。

「でも、大岩の詰まりを取り除いた割には大量じゃんか。」

エミリーはしどろもどろした。

(それは、何千年も魔物達が閉じ込められていたからっす!)

フレイは小さい羽をパタパタしながら、うんうんと首を捻った。 

「何千年も、閉じ込められた魔物達なんて一瞬で片付けられる訳無いだろう!」

エミリーはあまりの不安で大声を出した。

(でも、大丈夫っす!)

フレイは、えっへんと威張り散らしいた。

「えっ、マジかよ。」

エミリーは、驚きのあまりぽかんとしていた。

「このまんま、どうしたらいいんだよ!」

孤児院の男の子が大声を上げた。

「おい、お前らこの困難を突破出来る良い方法があるんだぜ。」

エミリーはフフンとドヤ顔をした。

「どうするんだ?」

孤児院の男の子がエミリーの話を聞き始めた。

「それはだな……。」

エミリーは、その孤児院の男の子達と話した後に、保管庫に向かって、金棒や、蝋燭、スコップやらを準備した。

雨も小雨になり始めた。

孤児院の子達は、それぞれ武器を持っていた。

松明で戦おうとしている子もいて。

「よし、行くぞ!」

エミリーのその一言で、皆が一斉に動き始めた。

まずは、ゴブリンだ。ゴブリンは、街の人達が戦っていたらしくて死体がゴロゴロと転がっている。

孤児院の男の子達はゴブリンの頭を狙ってボコボコ叩き始めた。

するとゴブリンは、口から紫の血を吐き出して倒れた。

続いて襲って来ているフェンリルも、エミリーが保管庫から発掘して来た短剣で喉元を描ききった。

すると、フェンリルはすぐに動かなくなった。

シンシアは、エミリー達と一緒になって弓矢を構えていた。

点に見えているゴブリン達を、シンシアは意に介さず矢を番えてバシュ、バシュっと撃っていく。

するとゴブリン達は目にも止まらずに倒れていった。

(シンシア!お願いがあるっす!)

フレイは、シンシアに頼みごとをした。

するとシンシアがコクンと頷いて弓矢を、ゴブリンキングのいた方向に構えていた。

ゴブリンキングは、頭に赤い宝玉を付けている。

「でも、こんなに沢山の魔物相手にした事はないの。」

シンシアは、とても不安そうな顔をしていた。

「そんな事言っているじゃねえ!」

エミリーは、絶叫しながら、目の前のゴブリンの短剣をためらいもなく突き刺した。

「そんなちまちました事を話していたらシンシアの命もなくなっちまうんだぞ?分かっているのか?」

エミリーの着ていたドレスがゴブリンの返り血と雨の泥でぐちゃぐちゃだった。絶対、家に着いたらエミリーはこっぴどくテレサに叱られる違いないと思った。

「フレイ!本当のボスはどこなんだ!この魔物大増殖を生み出しているのは!」

(本体は、オーガでは無くて、ゴブリンキングの頭についている宝玉っす。あればモンスターテイマーという石っす。)

「よし、それが本体だな。」

エミリーはやる気満々でいるが、シンシアは不安で倒れそうになっていた。

「シンシア、心配するな。孤児院の皆だって協力しているはずだ。お前は一人ではないから頑張れ。」

シンシアがその言葉にコクン頷いた。

案の定、魔物達は手強くて子供達がだけでは苦戦してしまうので、狼煙を上げることにした。

「そうしないと、ヴィヴィアンさんやカルヴァン神父が戻って来ない!」

シンシアと同年代位の男子が咄嗟の判断で保管庫から、持ってきた緊急事態用の狼煙を上げた。

「街の方にいるシスター・ヴィヴィアンさんや、カルヴァン神父の目に届くと良いですね!」

シンシアは、弓矢は構えながら、岩の間に隠れた。

その間にも魔物達は次々と襲って来る。

「くそー、ゴブリンキングはどこなんだよ!」

エミリーは思わずキレそうになった。

すると、シンシアは、無茶をしようとした。

シンシアは岩の上にゆっくりと立ち上がり、弓矢を構えた。

その時にゴブリンキングを庇って来たオーガが出て来たのだ。

「シンシア!無理するな。」

エミリーは落ち着けと言わんばかりに、シンシアを元の岩に隠れさせようとするがシンシアは、言うことを効かない。


(シンシアさん!マズイっすよ。いくらシンシアさんが弓の使い手でもこんな不安定な状態ではジリ貧になるっす!)

それでも、シンシアは頑なに話を聞かなくて、高い所からオーガに向かって弓を構えてそれがオーガの目を貫いた瞬間に、シンシアは岩の上から擦れ落ちてしまった。

その時の影響かは知らないけれども、頭からは血が溢れていた。

「シンシアー!」

エミリーは、魔物達が飛び交う戦場で絶叫した。

シンシアと何回も呼びかけても反応がない。

エミリーは、思わず大量の涙を殺した。

「シンシア……そんな事しなくても良かったのに……。」

エミリーは涙が止まらなかった。


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