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第二章4話 シンシアの能力

「おい!シンシア!反応してくれよ!」

エミリーは小雨の中、シンシアの頬を引っ叩いていた。

それでもシンシアは目が覚めない。

それでも、魔物達は攻撃の手を緩めなかった。

「クッソ……どうすりゃいいんだ!」

エミリーは、雨の中、魔物の返り血と泥にまみれたドレスの袖口で涙を拭い涙を必死に抑えていた。

(どうしよう……どうしたら……。)

エミリーは持っている短剣で応戦するしかないと、心に決めた。

その時、シンシアはゆっくりと目を開いた。

するとすっかり口調が変わってしまっていたのだ。

「あれ?兄貴ー?何をしてるんすか?」

あの可愛らしい女の子口調から、なぜか若い男性のような口調になっていた。

「シンシア……?」

エミリーがキョトンとしていると、シンシアはエミリーにニコニコしながら話し掛けた。

「あれー?栄二の兄貴ではないですか!竜雄さんまで!」

シンシアの可愛い顔から出てくる、若い男性の口調は、今までの、シンシアとは全く違っていた。

「どうしちゃったんだよ…シンシア?」

エミリーが、肩を両手で揺さぶった。

「なあ、頭を打ってしまっておかしくなったのか?」

エミリーはさらにシンシアを軽く揺さぶった。

「もしかして、栄二さんじゃないっすか!」

エミリーはシンシアからいきなり前世の名前が飛び出した事に吃驚した。

「なんで……俺の前世の名前を知っているだ?」

エミリーは呆れてしまった。前世の名前なんぞ誰にも伝えた事が無いのだ。

ましてやシンシアになんてとても話すらもしていない。

(どうしたんすか……シンシアさん……)

フレイがシンシアの変わり様に驚いて困り顔をしていた。

「あれ……?君は竜雄君だよねー!久しぶり〜!」

シンシアの今までの可愛い女の子っぽさが抜けて男みたいな口調になっていた。

「もしかして、忘れてしまったんっすか?オレっす真一っす。」

その名前を聞いた途端にエミリーの顔が青白くなった。

「もしかして、信一か!あの狙撃手の?」

エミリーもとい栄二は、思わず前世の口調に戻ってしまった。

すると、エミリーの背後ではグルルルと唸り声を上げているフェンリル達がいた。

すっかり信一の登場で忘れていたが、今までは、魔物達と戦っていたのである。

「うっかり、シンシアが信一になった事で忘れていたけど、ここはまだたかっていたんだった。」

エミリーもとい栄二は元のエミリーが話しそうな口調に戻した。

「さあ!あのゴブリンの群れ共を追っ払ってやる!」

シンシアは、人が変わったようにというか信一になったからから当然だかが、勢いよく弓を構えた。


すると、小雨の中、矢が筋を描きながら、次々に魔物達へと命中していく。

エミリーは泥まみれになりながらも短剣を使って、さっきまで唸っていたフェンリルの喉元を掻き切った。

ゴブリン達はの中には松明で焼かれた者、棍棒で殴られた者もいた。

街の人達だって、自分達の命が掛かっているのだ。

「ゴブリンって勇者じゃなくても倒せるんだな……。」

市政の人達の頑張りが目の前で見えていた。

しかもゴブリンの中には丸焦げになっている者も多くて、暖炉の火とがで焼かれたような焦げ跡も見えた。

「早く……シスター・ヴィヴィアン。来ないかなー……シンシアの頭に包帯巻いてやりてーよ。」

エミリーは、ぼやきながら、ゴブリンをメッタ刺しにしていく。

すると、丘の下から登ってくる影が見えた。一瞬魔物かと思って身構えると。

シスター・ヴィヴィアンとカルヴァン神父であった。

「ダンジョンは、どうだったのですか……?」

孤児院の女の子が鉱夫達の事を聞くとシスター・ヴィヴィアンは静かに首を横に振った。

それだけで、ダンジョン周りの様子は思い浮かんだ。

「私の家は?ロゼッタ家は大丈夫なのですか?」

エミリーはシスター・ヴィヴィアンに質問をすると。

「ロゼッタ家は魔物を通さないかなり強力な結界が張ってありました。」

ヴィヴィアンの話にエミリーはホッとした。

シスター・ヴィヴィアンが帰って来た事に安堵して、孤児院の小さい女の子の中には堰を斫ったように泣き出してしまう子もいた。

カルヴァン神父は無言でその様子を見つめながら子供達を見ていた。


「カルヴァン神父もご無事で、安心しました。」

シンシアはいつものシンシアに戻っていた。

信一ではなくて、女の子のシンシアだ。

「みんなに大変な思いをさせてしまって済まなかった。」

カルヴァン神父は、孤児院の子供達に対して謝った。

するとシスター・ヴィヴィアンがフォローするような感じで、カルヴァン神父の肩に手を乗せた。

「大丈夫ですよ。カルヴァン神父。子供達もドロドロになりながらも戦っていたのですから。」

カルヴァン神父が思っている以上に子供達はカルヴァン神父の事をとても心配していたのだ。シスター・ヴィヴィアンはニッコリと笑った。

「怪我をした子達は私達の方で預かります。」

シスター・ヴィヴィアンの一言で怪我していた小さな子達や、最前線でツルハシやスコップで戦ていたボロボロの一部の子達は教会に避難した。

「シンシアさんも、ゴブリンを倒したら後で治療をしましょう。」 

ヴィヴィアンは、そう言って、怪我をした子達を全員連れて、

教会へと戻っていった。

そして、獣人族の国でも、魔物第増殖が確認されていた。

「はぉぁ……!」

一人で戦っている猫のような獣人かいた。

その猫のような獣人は、己の爪でゴブリン達を引き裂き、オーガの目を潰し、フェンリルの牙をものともせずに叩き潰したのだ。

「栄二の兄貴が転生しているらしいがどこにいるんだ!」

その猫型の獣人は、エミリーの事を探しているらしいがそんな事をエミリーか考えているはずも無く、シンシアと、ゴブリンキングの頭についているモンスターテイマーを破壊する事を考えていた。

「シスター・ヴィヴィアンや、カルヴァン神父か帰って来てからホッとしたな」

エミリーはシンシアに話をしていた。するとカルヴァン神父が閃いたように、保管庫からボウガンを取り出してきた。


「これなら、君にも上手く撃てるはずだよ。シンシア。」

「ありがとうございます!」

シンシアは軽くカルヴァン神父へと会釈をした。

「良かったな!シンシア!」

エミリーはシンシアに向かって励ますと、シンシアはすつしりと重いボウガンをニコニコしながら、手に持った。

「帰ったら、シンシアさんの頭の傷を治療します。それまでは、あのゴブリンキングについている宝玉、モンスターテイマーを壊して下さい。」

シスター・ヴィヴィアンは、エミリー達にお願いをした。

「分かった。なんとかしてゴブリンキングについているモンスターテイマーを壊してやる。」

エミリーは、シスター・ヴィヴィアンにそう告げた。

そして、フレイというか竜雄との会議をすることにした。

「なあ、フレイ?モンスターテイマーってどんな色の宝玉なんだ?」

(そうっすね……、か分かりやすく例えるなら不透明なオレンジというか。前世で見た事ある色はポスカのオレンジ色みたいな感じっす。)

フレイは色の例えに困っていた。

「CDの裏のような色なら、例えるのに困るけど、そんなに不透明なオレンジって例え辛いのか?」

エミリーは、フレイの困惑している様子に、エミリーまた混乱した。

(ただのオレンジ色なら困らないっすが、何分前世の時とは例え辛い色だったっす……)

その話を聞いて、エミリーは緑がもっていたアクセサリーの話を思い出した。

(確か緑も宝石好きだったな。)

そう思い出したら、ふっと前世が恋しくなった。

「前世を知っている仲間が増えたのは嬉しいけども」とエミリーが呟くと、

(モンスターテイマークラスの宝玉は、もっとダンジョンの下層に行けば行く程ゴロゴロあるっすよ。)

フレイはエミリーに話した。

(その代わり、ミミックやらも増えますが)

フレイは、ふぅと小さな火を噴きながらエミリーに話した。

(人を襲う魔物達だけでなく、人を主食とするモンスターもいるっすよ。)

その話を聞いてエミリーは背筋が凍りついた。

「そのモンスターに知性はあるのか?」

エミリーはフレイに話を聞くとフレイは首を捻った。

(今、言えるのは、魔物大増殖で出て来たのは低級な魔物達って事っす。もっと知恵を持った、こちらを乗っ取りかねない魔物達はダンジョンの地下深くで今か今かと人間の来訪を待っているっすよ。)

エミリー達が苦戦しているゴブリン達は低級なモンスターなのだ。


「頭の良い奴程、地下で人間を待っているのか?」

エミリーは、フレイの話をよく聞いた。

(モンスターテイマーはある程度の魔物達しか、操れないっすから、モンスターテイマーの宝玉を粉々にしてしまえば、この魔物大増殖は収まるっす)

シンシアもとい信一も真面目に話を聞いていた。

「モンスターテイマーの硬さはどれ位なんだ?」

シンシアもとい信一がフレイに相談をしていた。


ボウガンで破壊できる位なのかと聞いていた。

(それは、距離にもよるっすね。出来る限り至近距離でゴブリンキングに、気づかれないようにガツンと撃つのがベストっす。)

フレイは シンシアに、小さな手でボウガンを弾く真似をしながら解説をした。

「出来る限り、近距離で、ゴブリンキングの気づかれないよう……だね。」

シンシアはフレイの話にコクンと頷き付いた。

雨も段々と小雨になってきている。

取り敢えず、ゴブリンキングの居場所を、見つけださなくてはならない。

エミリー達は、日が落ち始めて来ている、空を眺めながら、駆け足で向かった。もうすぐ日没が近づいている。前世では何とも思わなかった夕暮れも明かりもない状態では、致命傷なのだ。

「まさか、夕暮れ時がこんなに大変になるとは、夢にでも見なかったぞ。」

エミリーは栄二の口調に戻りながらぼやいた。

向こうにいた時には夕暮れがこんなに怖いとは思うまでも無かったのだ。

「ランプ……持ってくれば良かったな」

エミリーは栄二の口調で話した。

(そうっすね。)

フレイもとい竜雄も、少し、この異世界の慣れてくると同時に異世界の不便さも分かってしまうと前世が恋しくなる。


(なんとしても……夜が来る前にゴブリンキングの頭の横にあるモンスターテイマーを粉々にしないといけないんだな。)

エミリーは決意を固めた。

丘を下って行くうちに丁度良い大きさの岩があった。これなら、身を隠しつつ、ゴブリンキングの頭にあるモンスターテイマーというか王冠の頂点に飾ってあるのがモンスターテイマーらしい。

確かにポスカみたいな不透明なオレンジで、そこにニスみたいなテラテラした艶を追加したらあんな風になるんだろう。

否が応でも、あのオレンジは人間にとっては格好の目印だ。

シンシアも、その宝玉を目で捕らえたらしくて、ボウガンの方向を静かに定めていた。

「大丈夫か……シンシア?こんな至近距離で」

エミリーがシンシアに

小声で聞いていた。

「大丈夫だよ。」

それよりもゴブリンキングの動きをフレイと共に見ていて欲しいんだ。

シンシアは夕暮れの強い西日に照らされて、テラテラとぬめるような輝きを持っモンスターテイマーに目を付けていた。

(東の方向にモンスターテイマーがあるっすよ。)

フレイもとい竜雄は、小さな声で東の方向を指さししていた。

ゴブリンキングは仲間のゴブリン達に囲まれている。

まるで、護衛のようだった。

「一瞬だよな。」

エミリーはそう呟いた。

一瞬だけ、ゴブリンの護衛が少し緩くなるその隙にボウガンを撃ち込めばいい。

シンシアとエミリーは、息を凝らしながら、ゴブリン達の隙を伺う。

ゴブリンキングもゴブリン達もエミリー達には気がついていない。

「どうやら、ゴブリン達は私らには気がついてないらしい。」

シンシアはじっと周りを観察しながら、ボウガンを構えたゴブリンの護衛が緩んだ一瞬の隙だった。

シンシアの目にはモンスターテイマーが鋭く光り、矢が発射された。

1回目は護衛のゴブリンの目に突き刺さり、紫の血の海と化していたが、シンシアはそれにも怯まず、二発目のボウガンの矢を構えた。

シンシアは呼吸を整え始め、ゴブリン達が大暴れしている最中に、モンスターテイマーの宝玉の付いた王冠は見事に破壊された。

「やったな!シンシア!」

エミリーがとても喜んでいると、シンシアは、三発目のボウガンの矢をゴブリンキングに構えた。

シンシアがゴブリンキングが振り向いた瞬間に、ゴブリンキングの眉間にその矢が突き刺さった。

そして、ゴブリンキングも紫の血の海の中に沈んでいった。









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