表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/78

恐怖という名のマネジメント。無能な幹部を「有効活用」する方法。

「……我が騎士団が、管理もできずに石ころを掘り出していると。そう言いたいのか、貴様」


 ガルドスの喉から漏れる唸り声は、地響きのように部屋を震わせた。

 机を挟んで向き合うカガリの至近距離に、ガルドスの巨大な拳が置かれている。一振りで人間を挽肉に変える「暴力」の化身。

 だが、カガリはその拳の横に、平然とした手つきで一枚の図表を滑らせた。


「事実は、君の感情より冷酷だ、団長。この半年で騎士団が鉱山警備に投じた戦力は増大しているが、市場価値のある『一級魔石』の産出量は逆に15%低下している。なぜだか分かるか?」


「……魔物の活性化だ。奴らを退けるためにコストがかかるのは当然だろう」


「いいや違う。現場の騎士たちが『金にならない重労働』を嫌い、魔物の間引きを適当に済ませ、質の良い鉱脈の調査を怠っているからだ。

……つまり、マネジメントの不全。武勲にしか興味のない君が、経営をヴァイザー副団長のような『私欲の専門家』に丸投げした結果だよ」


「な……っ!」


 脇で控えていたヴァイザーが飛び上がる。カガリは彼を視界の端にも入れず、ガルドスの瞳だけをじっと見つめた。


「ガルドス団長。君が守るべきは、錆びた採掘権という紙切れか。

それとも、泥を啜りながら士気を失っていく部下たちの未来か。……マフィアの世界なら、無能な幹部にシマを任せたボスの責任は重いぞ」


「貴様……!」


 ガルドスが立ち上がった。殺気が部屋に充満し、空気の密度が変わる。

 刹那、ガルドスの背後で、ずっと石像のように佇んでいたマサムネが、僅かに鯉口を切った。


「――そこまでだ、団長殿。……拙者の『あるじ』は、少々口は悪いが、嘘は吐かぬ。これ以上動けば、貴殿の兜が二つに割れるぞ」


 静かな、だが逃れようのない死の宣告。ガルドスは背後を振り向き、初めてマサムネという「影」の真価を悟った。その肌を撫でるような殺気の質は、並の剣士のそれではない。


「……九条、マサムネか。……あの日、ヴァイザーが放った刺客。死んだと聞いていたが」


「カガリ殿が、拙者の村を買い取ってくれた。ゆえに拙者は、今はこの御仁を守る盾だ」


 ガルドスはしばし沈黙した後、力なく椅子に腰を下ろした。

 カガリの「正論(数字)」と、マサムネの「武力」。その両面で王手をかけられていることを、この猛牛はついに認めた。


「……五年。五年の間、採掘権を貴様に貸す。……その代わり、騎士団への配当が一度でも滞れば、貴様の首をこの手で捩じ切る。……いいな?」


「不渡りは出さない主義だ、団長。……賢明な判断だよ。これで君たちは、騎士としての『本職』に集中できる」


 カガリは契約書を差し出し、ガルドスの無骨な印章を押させた。

 採掘権の奪取。それは、カガリがこの大陸に「資源独占」という名の経済的要塞を築くための、最初の一歩であった。


 執務室を出る際、カガリは震えるヴァイザーの肩を、親しみ深く、そして蛇のように冷たく叩いた。


「ヴァイザー副団長。……君の不正の証拠は、私が預かっておく。君には、これから鉱山現場の『監督役』として、泥にまみれて働いてもらう。

……もちろん、私の監視下でね」


「ひ……っ、は、はい……」


 廊下に出ると、マサムネがふっと息を吐いた。


「……カガリ殿。綱渡りも良いところだ。あやつが契約書を破り捨てて暴れ出せば、拙者も無傷では済まなかった」


「リスクを取らない商売はないよ、マサムネ。……さて、次は現場だ。鉱山に溜まった『膿』を出し切り、九条の里の者たちを適正な賃金で投入する。

……これより、黒鉄連峰の『再開発』を開始するぞ」




 カガリの視界の中で、騎士団の赤いグラフが、徐々にアルカディアの青色へと上書きされていく。


 暴力の城塞が、資本の歯車へと組み込まれていく足音が、高く響いていた。

ここまでお読みいただき本当にありがとうございます!


魔石という話出てますが、現実世界でいうところの金銀銅、ゲームでいうところのマイクラの鉱石みたいなイメージを持って貰えたらOKです。

魔石の純度が高い=レア=良いものが作れる、というのはシンプルな話です。

バルカスの嬉しそうな顔が目に浮かびます、よね……?


少しでも「面白い」「続きが読みたい」と思っていただけましたら、画面下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆の最大の励みになります!

合わせて【ブックマークに追加】もぜひよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ