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第29話
同じ部屋に通った。
同じ顔ぶれだった。
同じ場所に座った。
それでよかった。
話すことが増えた。
短かった言葉が、
少しだけ長くなった。
それでよかった。
笑うこともあった。
理由は、
よくわからなかった。
でも、
そうなった。
それでよかった。
一人でいる時間は、
少しだけ減った。
それでよかった。
何もしていないときでも、
中で何かが言っていた。
前よりも、
はっきり聞こえた。
無視はしなかった。
聞いた。
「辛い」
「苦しい」
「正しくあれ」
「壊せ」
「壊れろ」
「終わらせろ」
ばらばらだった。
まとまっていなかった。
それでも、
止まらなかった。
他人みたいだった。
自分の中にいるのに、
自分じゃないみたいだった。
少しだけ考えた。
無理に消そうとは思わなかった。
消えないと思った。
だから、
そのままにした。
否定もしなかった。
肯定もしなかった。
少しだけ、
近くに置いた。
それでよかった。
そのまま、
過ごした。
それで、
困らなかった。
それでよかった。
それだけだった。




