第19話
それからしばらくして、
少しだけわかるようになった。
学校でのことだった。
近くに人はいた。
でも、
少しだけ距離があった。
前からあったのかもしれなかった。
でも、
そのときはっきりわかった。
あまり近づかれない。
話しかけられない。
隣に座るのを、
少しだけ避けられる。
席を決めるとき、
一瞬だけ間があいた。
そのあと、
少し離れたところに座られた。
理由も、
少しだけわかった。
自分のことだった。
服のことや、
体のことだった。
家では、
あまり気にしていなかった。
それが普通だと思っていた。
でも、
違った。
誰かが、
少しだけ顔をしかめることがあった。
近くを通ると、
ほんの少しだけ距離を取られた。
何も言われなかった。
でも、
それで十分だった。
少しだけ、
浮いていた。
それだけだった。
勉強は、
できた。
運動も、
できた。
言われたことは、
ちゃんとやった。
間違えないようにした。
それでも、
変わらなかった。
近づかれないままだった。
それでいいと思った。
その方が、
何も起きない気がした。
でも、
一つだけ、
わかることが増えた。
――自分は、
仲間じゃない。
そう思った。
家でも、
同じだった。
前から、
そうだったのかもしれなかった。
でも、
はっきりわかった。
いない方がいい存在みたいだった。
人として見られていない気がした。
それでいいと思った。
そういうものなんだと思った。
何かが変わる気はしなかった。
何も変えられない気がした。
だから、
そのままにした。
中にあったものも、
外には出さなかった。
出しても、
意味がない気がした。
全部、
そのまま飲み込んだ。
ある日、
鏡を見た。
少しだけ、
違って見えた。
気のせいだと思った。
でも、
よく見ると、
黒い髪の中に、
一本だけ、
違う色が混じっている気がした。
光のせいかもしれなかった。
そう思って、
そのままにした。
次に見たときも、
同じ場所にあった気がした。
その次は、
少しだけ増えた気がした。
はっきりとは、
わからなかった。
でも、
同じように見えた。
理由は、
考えなかった。
考えても、
わからない気がした。
それに、
どうでもよかった。
中にあるものの方が、
はっきりしていたから。
何もしていないときでも、
中で何かが叫んでいた。
言葉にはならなかった。
でも、
何かに急かされていた。
外には出さなかった。
出してはいけない気がした。
でも、
それは少しずつ大きくなった。
もう静かではなかった。
どうすることもできなかった。
それで、
小学生の時間は終わった。




