第18話
それから、
できるだけ目立たないようにした。
学校では、
静かにしていた。
言われたことだけをやった。
余計なことはしなかった。
忘れ物をしないようにした。
遅れないようにした。
怒られないようにした。
それで、
何も起きなくなった。
先生は何も言わなかった。
同級生も、
あまり近づいてこなかった。
それでよかった。
その方が、
楽だった。
家でも、
同じようにした。
できるだけ音を立てない。
話しかけない。
必要なことだけやる。
いないみたいにする。
それで、
何も起きなくなった。
完全じゃない日もあったけど、
前よりはずっと少なかった。
それでいいと思った。
そうしていれば、
これ以上、
増えない気がした。
その代わりに、
中に何かが残った。
小さくて、
でも消えないものだった。
静かだった。
前みたいな、
何もない静けさじゃなかった。
形があった。
ときどき、
それが少しだけ動いた。
理由は、
よくわからなかった。
ただ、
消えなかった。
あるとき、
少しだけ考えた。
どうすれば、
これがなくなるのか。
誰が悪いのか。
最初に思い浮かんだのは、
家のことだった。
父と母のことだった。
でも、
うまく考えられなかった。
二人は、
間違っていない気がした。
ちゃんと大人で、
ちゃんと生活していた。
少なくとも、
外から見れば、
普通だった。
だから、
違うと思った。
次に、
自分のことを考えた。
学校でのことを思い出した。
手が動いたこと。
止められなかったこと。
あとから、
間違っていたとわかったこと。
それを思い出した。
それで、
少しだけ納得した。
――自分が悪いんだ。
そう思った。
そう考えると、
少しだけ整った。
中にあったものも、
少しだけ静かになった。
完全には消えなかったけど、
形がはっきりした。
怒りみたいなものだった。
でも、
向ける場所がなかった。
外には出さない方がいいと、
わかっていた。
だから、
中に置いた。
そのままにした。
それでいいと思った。
そうしていれば、
これ以上、
何も壊れない気がした。
僕は、
そのまま、
子供でいるのをやめた。




