第17話
同じことを、
何度か繰り返したあとだった。
学校でのことが、
家に伝わった。
どうやって伝わったのかは、
よくわからなかった。
ある日、
知らない大人が家に来た。
玄関のところで、
大きな声が聞こえた。
何を言っているのか、
全部はわからなかった。
でも、
自分のことだとわかった。
少しだけ、
名前が聞こえた。
母が出ていた。
何度か、
頭を下げていた。
声の調子が、
いつもと違っていた。
そのあと、
その人は帰った。
ドアが閉まった。
家の中が、
少しだけ静かになった。
僕は、
何も言わなかった。
何を言えばいいのか、
わからなかった。
母がこっちを見た。
そのときの顔を、
よく覚えている。
前に見たことがある気がした。
でも、
思い出せなかった。
少しだけ、
冷たい顔だった。
それだけだった。
何も言われなかった。
でも、
それで十分だった。
その日から、
少しだけ変わった。
ご飯が、
前よりも少なくなった。
話しかけられることも、
ほとんどなくなった。
家の中で、
少しだけ邪魔になった気がした。
兄は、
前と同じだった。
変わらなかった。
僕は、
前よりも動かないようにした。
音を立てないようにした。
できるだけ、
いないみたいにした。
それでいいと思った。
それしか、
なかった。
学校では、
同じことはしなかった。
やる前に、
止まるようになった。
でも、
中の声は消えなかった。
――やめろ。
何もしていなくても、
聞こえる気がした。
静かにはならなかった。
前みたいな静けさは、
もうなかった。
ただ、
何も起きないようにしているだけだった。
それでいいと思った。
そうしていれば、
これ以上、
何も増えない気がした。




