第16話
学校でも、
同じようにすればいいと思っていた。
何も考えないようにして、
何も起きていないみたいにしていれば、
大丈夫だと思っていた。
でも、
うまくいかないことがあった。
同級生が近くにいた。
何もしていなかった。
ただ、
そこにいただけだった。
そのとき、
急に手が動いた。
肩を強く押した。
相手がよろけた。
そのまま、
もう一度押した。
倒れた。
音がした。
教室が少しだけ静かになって、
すぐにざわついた。
誰かが名前を呼んだ。
先生の声も聞こえた。
僕は、
何も言わなかった。
その場に立っていた。
何が起きたのか、
うまく考えられなかった。
その日から、
同じことが何度かあった。
ぶつかったり、
押したり、
強く引いたりした。
理由は、
やっぱりよくわからなかった。
やったあと、
胸の奥が動いた。
前みたいに、
静かにはならなかった。
何かが、
中で動いていた。
小さな声みたいだった。
言葉にはならなかった。
でも、
はっきりしていた。
――やめろ。
そう聞こえた気がした。
でも、
止め方がわからなかった。
次も、
同じことが起きた。
やる前に、
少しだけわかるようになった。
それでも、
止まらなかった。
やったあと、
また声がした。
さっきよりも、
少しだけ強かった。
――やめろ。
そのたびに、
少しずつ、
意味がわかっていった。
これは、
やってはいけないことなんだと、
あとからわかった。
でも、
そのときには、
もう終わっていた。
静かにはならなかった。
前みたいに、
楽にはならなかった。
その代わりに、
中の声だけが残った。
消えなかった。
でも、
どうすればいいのかは、
わからなかった。
やめることも、
元に戻すことも、
できなかった。
だから、
そのままにした。
中で声がしていても、
そのままにした。
それしか、
できなかった。




