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竜皇と魔王と獣王の話  作者: YY
地獄と三人と旅立ちの章
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11/71

第十一話

投稿します。

 





 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!!!!






 そして、ソレは来た。


 地面が叫ぶ。足元からの反響音にさえ鼓膜が揺れる、空からの鳴動。

 何かが来た、とだけ理解した。


「うるせえええええええ!!!」


 この轟音の中でも不良の鳴き(うるさい)声が分かる。逆に凄い。残響に囚われながらも、由華先生の誘導で街へ急いだ。


「早く街へ!!大丈夫だから!!」


 門をくぐり、二度目の轟音。震える大気の音が聞こえる。


「大人しくしてれば平気だから、落ち着いて!」


 慣れた対応は由華先生だけではなく、むしろ困惑しているのは空紀達だけだった。ある者は商品を倒れないように支え、ある者は耳を塞ぎながら買い物を続けている。

 珍しい事ではないのだろう。話を聞きたいが、この振動の中での会話は難しい。

 ()()()()()だと気付き、空を仰ぐ。確かめるなら、此処では低い。


「アキちゃん!?」


 建物に足を掛け、屋根に上がる。まだ足りない。細い取っ掛かりを掴み、街の外壁の上へ身を投げる。


 見えた。


 点が線に、線が形に、()()は飛んでいた。

 灰色の鱗に覆われた、爬虫類のような肌。トカゲに似た頭部、手足の爪は大きく恐ろしい。大気を乱しその巨体を浮かす翼は、全身を包んで余りある。


 まさに空想の世界でのみ許されていた、

 絶対の怪物。

 生物の限界。



「―――お伽話の、王―――」



 開いた顎門(あぎと)、覗く牙。広がる咆哮。











 ― ― ―


 見てこの神絵

 またベタなやつを……

 そっちもまた美少女イラスト?好きだねー

 うっせ、もっと女らしい二次画像探せ

 私は可愛いい系より格好いい系が良い。ほら、これなんかよくない?槍掲げた美少女が竜の背に


 ― ― ―











「竜……か。そうか竜、竜だ」


 真っ黒な記憶の片隅に色が着く。空紀は誰かとネット画像を見せ合い、話をしていた。

 女騎士を背に乗せて火を吐く竜の絵、花を背景に笑う少女の絵。空想を話の種に盛り上がり、互いの仲を深めていた。

 脳を刺激した灰色の竜は、影で街をなぞるように飛んで行く。鼓膜を直撃する咆哮に、空紀は胸元を抑え、笑った。

 これが『歓喜』か。

 元の世界では脳内かデータでしかあり得なかった生物。それが今現実に存在し、空紀はその世界にいるのだ。手を伸ばし求めれば叶う世界に。

 憧れを頭上に、忘れていた感情(もの)が動き出した。


「君!危ないから下がって!」

「兵士さんあっちには何があるの?」

「え?」

「竜が向かった方向、その先」

「あ、あぁ。おそらく首都だ、〝トゥラーク〟最大の人口都市、〝ヴァストラージ〟」

「首都……」


 外壁の上は見通しの良い足場があり、空紀が立つそこは兵士の巡回路でもあるのだろう。普段は立ち入りを規制している場所に人が居れば注意もされる。

 それでも疑問をぶつけ、ただ知りたい事を消化した。


「何しに行ったんだろう」

「……さぁ。俺達に人智を超えた存在の思いを聞く術は無い」

「人智を超えた存在……」

「もし聞けるものがいるとすれば、同じく人知を超えた存在か。その域にまで達した者だけだろう」


 あそこに手が届く存在は、同類か到達者のみ。実に良い知らせである。前者でない以上目指せるのは後者だけ、分かりやすい。

 生きていく目標ができた。


「面白い!」


 勢いを削がれた兵士が見ていることなど気にもせず、空紀は自分の指針の先を想像して笑みを浮かべた。取り戻した心の行き先は一つ。

 灰色の竜は空紀に、人に見向きもせず去って行く。その姿が完全に見えなくなるまで、空紀は動かなかった。

















「それは出来ません」


 屋敷へ戻り首都の行き方をルゥルに聞いた、その返答である。方法を聞いたのに何故出来る出来ないの話しになったのか。


「この国では『勇者』様の生活基盤と自衛力を万全にする為、勇者の街を半年間拠点にする事を推奨しております。行動範囲を把握する監視も御座いますが、個人の尊厳を損なうものではなく、情報の管理には十分な配慮を心掛けています。なおこの監視体制は、条件が満たされない限り解かれる事はありません」

「監視ってどんな?条件ってなに?」

「監視の詳細について私達“協会”は何も知らされておりません。条件は三つ。

 一つ、冒険者ランクを金にする。

 二つ、冒険者ランク金以上またはギルド長の推薦を三人分用意する。

 三つ、この条件に修正を加えられる立場の人間から許可を貰う。以上です。

 どれか一つに当てはまれば、監視と規制が撤廃されます」


 条件の二つを占めるギルドの冒険者ランク制度。

 どのギルドでも六段階あり、下から新人(ルーキー)(カッパー)(シルバー)(ゴールド)白金(プラチナ)金剛(オリハルコン)となっている。『勇者』として召喚された空紀達は、新人に課せられる研修期間を教育係の指導で相殺、銅へと即ランク上げされた。

 しかし銅から銀へ上がれる『勇者』特典はない。一定ランクの依頼を十以上達成し、昇格試験を通過してようやくランクが上げられる。

 しかもこの試験がかなり難しい、らしい。二回目以降は有料で、落ちた冒険者は再受験のたびに繰り返し低ランク依頼を受け貯蓄を作る。低ランクの依頼が溜まらないようにする為だろう。

 この苦悩を超え銀に昇格した大半の者は、そこで満足するか諦める。なので金から上のランク冒険者は数える程しかいない。


「条件厳しい」

「規則ですから」


 五年以上『勇者』の由華先生ですら銀。昇格に積極的ではなかったのだろうが、気休めにもならない。


「条件三つ目の立場ある人間は、外交官のような人?」

「いいえ、セチュアム様は一役人の立場であらせられます」


 力が有ると分かっている『勇者』の管理を任された人間が、ただの一役人。いや、今の目的とずれた疑問は置いておく。

 ひとまず正攻法を試すしかない。










 指導期間残り八日。

 午前中は装備の調整や魔法の確認をした。初依頼を終え、良かった所と悪かった所をまとめる。空紀は二つ依頼をこなしているので、それぞれで気づいた反省・改善点を考えた。

 鉈の汚れを落としながら、他二人の様子を伺う。


 矢背は杖を掲げ魔法を放っていた。用意された的へ、形状と放物線以外同じ魔法を楽しそうに。

 派手な見た目と音に、由華先生の視線を奪う時間が三人の中で最長だ。絶え間無く魔法を撃ち続ける魔力量は凄いが、、それだけである。特に驚くような光景ではない。ただの魔法力確認作業だ。


 こちらは逆に感心した。豪狼は取り敢えずの装備を決めると、筋トレを始めたのだ。

 全力で広い中庭を十周、一息がてら体を伸ばし腕立てや腹筋をする。疲れ切る前に装備の感触を確かめ、休憩。そしてまた始めからだ。

 一日二日で変わるかは保証出来ないが、体力作りは正しいと思う。ステータスを見る限り、ついでに性格も含めて豪狼は前衛型だ。冒険者になるなら体力は必須、さらに前衛なら平均を超えてほしいところ。空紀も勿論考えてはいた。

 しかし言ってしまうと、豪狼の普段の態度からその思考に至り実行する事が意外だった。

 豪狼の評価を上方修正しつつ、己の浅はかな考えを恥じる。数日行動を共にしただけで他人の全てが分かれば、人間関係で悩むことなどない。信頼の先に困ることも。


 汗を流しランチを食べれば、課外授業の時間だ。その時間ギルドは人が少なかった。

 ギルドでは一日一依頼を推奨している。どれだけ自信があり力が余っていても、時間を気にして雑なやり方では困るのだ。粗末な結果はギルドの看板に泥を塗る。

 なので依頼書が貼られる掲示板の更新時間、午前六時ごろが最も人の入りが激しい。自分に合った依頼を探し、外なら街の門が閉まる前に戻る。夕方には依頼をこなした報酬で酒場をうろつくのが、この世界の冒険者だ。

 ギルドには依頼の申請と達成報告、素材の換金くらいでしか訪れない。飲食スペースがあるにはあるが、専門ではないのでメニューは少なく値段も高めなのだ。

 空紀達のような個人的な理由で遅れた者が大半の時間帯。依頼板は見放題である。


「このイノシシの毛皮の依頼と肉の依頼、一緒にやりゃ得じゃね?」

「はいお馬鹿さん。解体出来る人が居ないと、ギルドに解体料取られるよ」

「昨日取ったやつは?てか由華解体出来ねぇの?」

「昨日の猪は牙以外貯蓄の為に売ったじゃない!後由華先生!は、解体出来ません」

「使えねー……」

「しみじみ言うな!」


 仲良いがうるさい、矢背は討伐依頼ばかり見ている。魔法を当てられないままなら選ぶ資格はない。

 空紀の希望は魔物との戦闘率が低そうな採取依頼、野宿が前提ならもっといい。報酬はついでで、目的は野宿や外での活動経験だ。聞けばここから首都までは馬車でも最短十日は掛かるらしい。経験者の知恵と手を借りられる内に学んで覚えたい。

 往復二、三日の距離なら短期に入るので、短期依頼板を丁寧に見ていく。気になる依頼があった、細かい部分を読む。


「えっと、『魔屈の森南西に群生する月光草三十個以上』ランクはD-期限は、げっ五日しかない。アキちゃんこれがいいの?」


 由華先生の朗読に、男二人が寄ってきた。


「こ、この街は森の、西にあるし……時間は、その、かからないんじゃ」

「魔屈の森がどれだけ大きいと思ってるの!?南西ってだけじゃ探すのに数日使うよ!」

「そうなりゃ野宿か、面白そうだぜ」


 賛成ニ反対一どっち付かず一。討論が続いている間に、手続きをする。


「月光草の採取希望数は三十強、期限は縁月二十五の陽ランクはD-。保険として二十銅貨頂きます」

「はい」

「たしかに、こちらが依頼書です。それでは、良い冒険を」


 依頼書には依頼主のことも書かれていた、午後の予定は決まりだ。


「話し合いは終わった?出発は明朝、これから必要な物買いに行こう」

「いつのまに!?」

「テントとか食いモン以外に何がいんだよ」

「由華先生に聞けばいいよ。打ち合わせしたいし、二手に分かれて早く終わらそ」


 仲良し組が互いを拒否したので、同性別になると思ったら由華先生が矢背を引っ張って行った。ステータス時の反応といい、お気に入りなのかもしれない。

 仕方なく豪狼と組めば、一人で喋りだした。元の世界の武勇伝を主軸に、異世界で思ったことを表現している。


「やっぱ男ならステゴロだろ、こっちにメリケンサック無いって知った時は絶望したね。けどあの、コテ?、あれは悪くねーよ。あれがありゃ拳の皮めくれたり潰れたりしねぇし、今度加工屋見つけたらアレにトゲ付けるぜ!異世界版メリケンサック!やべぇオレ新たな武器を作った男!歴史に乗るかも」


 十分も喋れば満足したのか、こちらに話しかけてきた。


「オレらが買うポーションって何だ?オロ◯ミンの仲間?」

「由華先生が言ってたでしょ、魔法薬。薬効のある草とかを調合して作る、冒険者の必序品」

「飲むキズ◯すりみたいなモンか」


 ポ◯ケモン派か。それに気付けた空紀ももしかしてポ◯ケモン派だったのか、覚えておこう。


 見えた看板には“ポネットの店”と書かれている、依頼主の店で間違いない。




閲覧有難う御座いました。

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