瓦礫の街で
牧野はとりあえずそのアンドロイドとやらを抱きかかえる。すろと肌とは明らかに違う感覚があった。
「ん?」
銀色でなにか文字が書かれている。シリアルナンバー的な?
「U001-000-U-2 U-I」
末尾のU-Iを思わず
「ゆい……」
と呼んだ。なぜか? そんなことはわからないが、とにかく「ゆい」と呼んでしまった。
その瞬間、アンドロイドとの距離感がつかめなくなる。おもわず目をつぶり、開けた時には……。
「ご主人様」
<彼>は、<彼女>へと変わっていた。褐色だった目がブルーになり、髪も淡い青に染まっている。服装も違う。
上半身は青いノースリーブのフリル付きメイド風服で、下半身は青いショート・パンツとタイツを履き、青い革靴を履いていた。人形のように美しく、ヨーロピアンの少女のような気品を纏っていた。
ちょっと待て、ご主人様? それになんでまた<メイド風>と連想したのだ?
「ご主人様? あなたのお名前を教えてくださいませ」
一瞬ためらったが、
「牧野。牧野隆」
「まきのたかしさん」
ああ、と答えると、
「私の名前は、唯です。あなたがつけてくださった」
「ああ、あれね?」
すると突如彼女が真剣な目になり、
「伏せて!」
と叫んだ。その通りにする。彼女が俺の体を飛び越える。
だん、と音がした後、殴った後の態勢から戻りながら彼女が振り向き、そのとなりではまた女性が倒れていた。
「大丈夫ですか!」
飛び出し、抱き起す。しかし、体温が感じられない。しかも、人間らしさ、というのか? が全く感じられなかった。生きていた気配がない。
「アンドロイド……人形!」
恐れおののくと、初めてあたりの惨状に気が付いた。燃え上がる校舎の跡。飛行する戦闘爆撃機、燃えながら落ちてくる自衛隊機。
「うああああああ」
状況が数刻の間に変化しすぎたせいで、パニックになった。ただただ怖かった。生気の感じられない人形、燃え、崩壊する校舎。叫び声とともに墜落してくる戦闘機。見たことのない戦闘爆撃機。そして、文豪や姫のいない日常。そんななかで、
「大丈夫ですよ」
抱きしめられる。振り払おうと思えば振り払えたが、そんな気にはなれなかった。代わりに、自分も抱き返す。あの時と同じように、涙がこぼれた。あの生気の感じられない人形と違い、温かく、優しい腕だった。




