第20話 断崖の像
しとしと、水音が淡く響く。ラカシュの朝は霧雨で始まった。
胸元に熱を感じる。桜お姉ちゃんが静かな寝息を立てていた。抱きしめたまま、眠ってしまったらしい。
髪を優しく撫でると、長い睫が繊細に震えて、微かに寝言を呟いた。さらりとした寝巻きの肌触りが心地よい。
室内を軽く見渡すが、桜お姉ちゃん以外の姿は見えない。三人とも別室か。リリアさんが乱入してくるんじゃないかと内心戦々恐々としていたが、気を利かせてくれたようだ。
薄暗がりの中、抱き合ったまま、じっと雨音に耳を傾ける。布団から出した顔は外気にさらされて、いささか寒い。桜お姉ちゃんの高い体温がありがたい。無意識に温もりを求めたか、桜お姉ちゃんの手に力がこもって、僕を強く抱きしめた。
どれくらいそうしていただろうか。不意に、「ん……」と声を漏らして、桜お姉ちゃんが目を開いた。
「お早うございます」
「ん……ん」
束の間瞬きをした後、僕に抱きしめられていることを悟って、桜お姉ちゃんはわずかに顔を赤らめた。
「む……そうか、昨日酔いつぶれて」
「はい。部屋まで運んできました」
僕は口元を弛ませた。
「昨日の桜お姉ちゃんは可愛かったですね」
「……ぬ、こ、こいつめ……」
桜お姉ちゃんがピクピクと頬を震わせる。
「今晩は覚悟しておれよ。ひいひい言わせてやるわ」
憎まれ口も、僕の胸に顔を埋めながらでは可愛らしさしか覚えない。
安らかな気持ちで、そうしてしばらく睦ごとを交わした。
**********
朝食を済ませた後は、街を散策してみることになった。多少、天気はぐずついているが、歩くに困るほどではない。
「霧雨も、悪くない。濡れて行くかの」
クク、と笑みを漏らし、桜お姉ちゃんが雨の中歩き出す。樹木由来の神だから、雨にもあまり抵抗がないのかも知れない。リリアさんは頭から体をすっぽり覆う外套をまとっている。フウとローザは、なんらかの術を使ったようだ。雨が二人の体を避けて行く。僕は唐傘を差した。
街を覆う崖に沿って歩いた。長い歳月を経たであろう、とてつもなく巨大な木々の幹が、崖の一部であるかのようにひっそりと雨を受けている。見上げた先には、無数の神々の像が掘り込まれていた。
「崖の像は、それぞれ時代も背景も種族も異なる、数多の職人たちによって彫られたと伝えられています。最も初期に彫られたのが、中央に位置する建築のへパイストスの像です」
リリアさんの言葉に従って見やると、一際巨大な像があった。筋肉質の裸体を薄布で包んだ髭面の男の像で、両の掌を上に向けている。右手には小人、左手には小さな塔のようなものが乗っていた。
「建築と彫刻の神へパイストスは、かつて荒くれ者として知られた巨人種族の神でした。彼はか弱く命短い人間種族を嫌っていたと言われます。しかしある時、人間種族のとある名工が彼を称えてその石像を作り、贈り物としたところ、彼はいたく感激して、それ以来人間種族を愛する守り神となったと伝えられます」
小人だと思ったが、手に乗っているのは人間か。
「彼の像は最も古く、風化も進んでいるのですが、最も頻繁に修繕が行われている像でもあります」
彼女の言うとおり、周りの像に比べると、巨人の像は確かに少し真新しさを感じさせた。
「強大な力を持ちながらも戦争を厭い、平和と建築を象徴する彼は、それだけ人間に愛される神ということですね」
他の像にも目を移す。建築のへパイストスから離れたところに、頬杖をついて邪悪な笑みを浮かべた女の像が彫られていた。猫耳と七本の尾が特徴的である。魔炎のイズラ・フロウの像だろうか。二つの像は、よく見ると睨み合うような配置になっている。
木陰で本を読んでいるのが法理のアルスス、巨大な魚を抱えているのが海神か。さえずりのラーツェは情報精霊を引き連れて談笑しているような意匠だ。周りの神が少し辟易としたような表情をしていて、中々芸が細かい。その隣に、翼を背負った神の像があったが、風化がひどく細部が見えない。ひょっとしたら、ローザの像かも知れない。
人間の姿をしたものが多いが、異形も数多い。何だかよく分からない触手の塊のような像に、形容しがたいスライム的な液状の姿をかたどった像。
「木のツタの神とサラダ油の神ですね」
「そんなのまでいるんですか……?」
……サラダ油て。いや需要はあるのかもしれないけれど、信仰している人なんているのか? 弱小の神を含めたら八百万ではすまなそうだ。
次に目を引いたのは、昆虫じみた姿の像だった。六本の脚はそれぞれ一本ずつ剣を掴み、四枚の羽で中空に浮かんだ姿をかたどっている。
「剣神イー・サン・アン・ナーですね。手に持った剣は六合剣。天地四方、即ち全世界を象徴します」
「えらく壮大ですね。やっぱり強大な神なんですか?」
『単純な剣術・体術だけなら間違いなく最強にゃ。ただ、魔力1だから、ファイアストーム一発で沈むけどにゃ。まさしく虫ケラにゃ』
……その情報は聞きたくなかった。と言うか、神としてそれはどうなんだ。
「け、剣の領域がありますから……。魔力とかいらないですから……」
言い訳がましく震え声で呟いて、リリアさんは顔を逸らせた。うん、この話題はあまり触れないようにしよう……。
歩きながら像を眺める。岸壁の周りには、膝をついたり、五体投地したりして神像を拝む人々の姿があった。神々の信者たちか。雨の中だというのに、熱心なことだ。信者。ふと気になって、呟く。
「そう言えば、さえずりのラーツェが言っていましたね。魔炎のイズラ・フロウの信者が僕を狙っていると」
『不安か?』
ローザがじっと僕の目を覗き込んでくる。
「少し。それと、ちょっと申し訳ない気持ちもありますね。フウを倒したときは、あまり信者のことを考えていませんでしたけど。彼らにとっては、魔炎のイズラ・フロウは大切な心のよりどころなんですよね」
僕にとっては邪神でしかなかったけれど、恵みを受けていた人もいたかもしれない。それを思うと、少し胸が痛む。
『あまり気にすることはないにゃ。ボクの信者なんて、半分は被虐趣味の変態で、もう半分は戦争狂か狂信者。どっちも碌なもんじゃないにゃ』
ひらひら手を振って、フウが呟く。そうは言っても、なあ。
「信者たちはみんな、魔炎のイズラ・フロウがいなくなったことを知っているんでしょうか?」
『うむ。我を信仰したとき、頭の中に声が響いたであろう? 信仰する神が不在になったときも同様に、さえずりのラーツェを介して信者に伝えられる』
「僕の命を狙っているということは、僕が魔炎のイズラ・フロウの名前を奪ったところを目撃されたということでしょうか?」
『……魔炎のイズラ・フロウを降臨させる際、神殿で祝福された炎を買ったからな。神官に顔を覚えられていたのかも知れん。失策だったな』
顎に手を当てて、ローザが言う。億劫そうにフウが鼻を鳴らした。
『そんなこといちいち気にしてられないにゃ。狂信者と言っても、今は神の祝福を受けていない一般人にゃ。蹴散らすのは簡単にゃ』
元信者相手に、フウの言は辛辣だ。ローザが微かに顔をしかめた。
『あまり、手荒な真似はするな。彼らとて汝を愛するゆえの行動であろう』
『はあ? 君、聞くけれどね、這い寄ってくる虫ケラを踏み潰して何が悪いのにゃ?』
『……そんな言い方はなかろう。元とはいえ、汝の信者だ。大事にせよ』
『心弱い蛆虫どもに興味はないにゃ。まとめて焼き払ってやった方がやつらのためにゃ』
二人は口を歪ませて睨み合った。僕はため息を一つついて、二人を引き剥がした。
「二人とも、喧嘩はほどほどにしてください」
『……』『……』
僕を挟んで、無言のまま二人は視線を交わす。ううむ。みんな仲良く、と言うつもりはないけれど、この二人は衝突が目立つな。何か仲直りさせる方法はないものか。
「3P……」
ぼそ、と耳元で桜お姉ちゃんが呟く。……。無視、無視。
「むしろ5Pでも……絶倫的に考えて……」
リリアさんがぶつぶつ何か言っている。ローザとフウが冷や汗を流して後ずさった。……この人たちの頭の中にはそれしかないのか?
僕が次行きますよ、と言うと、毒気を抜かれた顔でローザとフウが後に続いた。
森とは逆側にある石段は商店街も兼ねているようで、石段の両側にはみやげ物屋や屋台が店を構えていた。
「お、足湯があるぞ」
桜お姉ちゃんが目ざとく見つける。入ってみることにした。
五人並んで、靴を脱ぐ。屋根にぽつぽつと雨が当たっている。冷えた外気に晒された足がぶるりと震えた。はじめはそっと、湯に足をつける。ジン、と熱が伝わってきた。
「ふむ。初めて入りましたが、悪くないですね。冷えた足に心地よいです」
リリアさんがうっとりと目を閉じた。
『色々考えるものだな』
ローザが感心したように呟く。
そうして、しばらく足湯を楽しんだ。
程よく温まった後は、屋台で食べ物を買った。
マヌケリュウモドキの串焼きを中心に、その他よく分からない生き物の肉やら野菜やら。
「それは飛竜の肉ですね」
厚い肉と野菜を挟んだパンを指して、リリアさんが言う。飛竜の肉は柔らかく濃厚な味がした。ローザが物珍しげに見ていたので、「あーん」と言ってみる。若干戸惑いつつも、おずおずと口を開けたので、小さく千切ったパンを与えた。それでも彼女の小さな口にはやや余るようで、頬袋を作ってもきゅもきゅ咀嚼する。
『ふむ。悪くない』
満足げに呟く彼女は小動物じみて可愛い。頭を撫でると、くすぐったそうに身をよじった。
お次はみやげ物屋だ。
「地酒が売っておるな。試飲もできるらしいぞ」
「……一杯だけですからね?」
「分かっとるわ」
釘を刺しておかないと不安なんですよ。
「日本酒とはまた違った味わいじゃのう」
一杯飲んで満足げな顔になった桜お姉ちゃんは、地酒を買うことにしたようだった。ちらり、と見やると、フウも買ったのか、酒瓶を大事そうに抱えている。
「お。装飾品も売っとるようじゃぞ」
言葉につられて、店に入ってみる。指輪、ブローチ、耳飾。指輪に目を留めて、桜お姉ちゃんが一瞬だけちらり、と僕の方を見た。……ううむ。店はこの世界に来てから大分回ったので、数字くらいなら僕でも多少読める。銀貨二十枚分。大体四万から六万円くらいか。
金なら……あるんだよなあ。懐に手を入れて、歯型が薄くついた金貨を一枚、取り出す。金貨一枚で、銀貨五十枚分。うーん。まあ、死蔵しといてもなんだしな。
悩んだが、結局買うことにした。
「桜お姉ちゃん」
呼びかけると、彼女は「む」とゆっくり左手を突き出した。少しどきどきしながら、薬指にそっとはめ込む。
「給料三ヶ月分とはいきませんけれど。今の僕の精一杯ということで」
「ふむ。ま、勘弁してやろう」
言葉とは裏腹に、表情は結構嬉しそうだった。左手をかざして、ふふ、と笑う。
「昔、お前に指輪を貰ったことがあったのう。どこで買ったのか、玩具の指輪じゃ。樹木であった儂の前で、ちっちゃかったお前は結婚式ごっこをしておった。あの指輪はまだ地球で、儂の木の根元に眠っておるのかのう?」
「うぇ!?」
変な声が漏れた。羞恥で頬が熱くなる。
「や、あ、あれは……! こ、子供のときの話でしょう!」
「クク。お前はいつだって子供のままじゃよ。儂の可愛いいろは」
意地悪く笑って、僕の頬についばむようなキスをした。次いで、指輪にも口付けをする。
「中々出世したものじゃの? 次はもっとよいものを頼むぞ。儂は頑張っているお前が好きじゃからな」
……全くもう。顔から火が出そうだ。
他の三人は首を傾げて不思議そうに見ていた。ああ、こちらの世界にはない習慣なんだろうか。
「僕の故郷では、指輪を贈るというのは求愛行動の一つなんですよ」
『ほう』
『ふーん』
ローザは感心した様子で、フウはどうでもよさ気に呟いた。リリアさんの目がきらりと光る。チラッチラッと僕と店売りされている指輪を交互に眺めだした。……。ふむ。
「ローザには、このネックレスを」
『む』
戸惑うローザの首に、ネックレスをかける。上品な意匠が、ローザの穏やかな雰囲気と合っていていい感じだ。ネックレスを指でなぞって、ローザが淡く微笑する。
『ありがたく受け取っておこう』
「それから、フウには髪留めを」
『にゃ?』
白い花を模した髪留めを差す。
『装飾品なんて柄じゃないにゃ』
「よく似合っていますよ?」
舌打ちしながらも、外そうとはしなかった。
それぞれ銀貨数枚程度である。
そして……。ぴこぴこと長い耳を揺らしながら、リリアさんがあからさまに期待がこもった目で見てきていた。それに対し。僕は。
「さ、そろそろ宿に戻りましょうか」
「!?」
リリアさんが衝撃を受けていた。「え、いや……え?」と僕の方をガン見している。
「何ですか?」
「や、その……。だ、誰か忘れてないかなぁ、と……」
必死で取り縋る彼女に対し、プイ、とそっぽを向いた。
「リリアさんは体だけの関係なんでしょう? 僕の愛なんていらないんですよね?」
「ええ!?」
パクパク口を開閉させる彼女を無視して、さっさと引き上げる。桜お姉ちゃんは肩をすくめて僕に続き、ローザは首をかしげていた。フウはどうでもよさそうに髪留めをいじっている。
しばらく石化していたリリアさんだが、やがてとぼとぼ肩を落として付いてきた。
**********
宿の自室に着いた。荷物を置く。背後から異様に暗い気配を感じる。リリアさんのどんよりした空気にこちらまで圧迫されそうだ。
その様子をちらりと見やり、桜お姉ちゃんが僕の耳元で囁いた。
「……ちゃんとフォローしてやるのじゃぞ?」
言い置いて、部屋を出る。ううむ。やっぱり見抜かれていたか。ローザ、フウも彼女にならって部屋を出た。後には僕とリリアさんだけが残される。
体育座りになって落ち込む彼女に声を掛けた。
「リリアさん。左手、出してください」
「……え?」
驚く彼女の薬指に、指輪をはめる。
「……え、これ……」
「桜お姉ちゃんの指輪を買うときに、一緒に買っておいたんですよ」
呆然と指輪を眺めていた彼女の顔に、朱がさした。
「じゃあ、最初からそのつもりで……」
「勿論ですよ。リリアさん。……愛しています」
腕をとって、優しく口付けをした。舌を入れると、「ん……」と一瞬身を強張らせたあと、リリアさんは恐る恐る応じてきた。柔らかな舌を捉えて、なぞるように舌を絡めると、恥ずかしそうにみじろぎした。
長い接吻を終えて、口を離す。リリアさんは胸を押さえて、荒く息をついた。きゅ、ときつく目を閉じる。
「う、う。し、心臓破裂しそうです……」
普段の凛々しい姿とも、時折見せる残念な姿とも違った可愛らしい反応に、思わず笑みがこぼれた。
リリアさんは顔を伏せる。
抱き寄せて、白銀の髪を撫でると、甘えるように鼻を鳴らした。
「……あなたの言ったこと、少し分かったような気がします。心を通わせて愛し合うのは、とても素敵なことですね」
「ええ。そうですよ」
長い耳を撫でながら、囁く。リリアさんは恥ずかしがるよう微笑んで──。
「ふむ。心を重ねた上で体を重ねたら、もっと気持ちよくなりますよね?」
「……。えっ」
がし、と腕をつかまれた。リリアさんがにっこにこと満面の笑みを浮かべている。
「や、ちょ、んー!?」
強引に唇をふさがれ、押し倒される。しばらく僕の口腔を蹂躙した後、リリアさんの舌が引き抜かれた。熱情に駆られた紫の瞳が僕を映し出す。
「イロハ、イロハ、イロハぁ!」
「ちょ、待、まだ日が高いですから……!」
「それもまたよし! 明るいほうが恥ずかしがっている顔が見えていいですね!」
「最悪だ!」
リリアさんの右手が疾風のごとく走って、僕の着物の帯をしゅるりと抜く。胸が外気に晒された。リリアさんの朱唇が近づき、ついばむように胸にキスを降らせた。必死で逃れようとしていると──。
唐突に、部屋の戸がガラリと開けられた。立っていたのは、着物姿の少女。床で組み合っていた僕たちをじろりと見やり、つかつか歩み寄ってくる。
「桜お姉ちゃん! 助けに来て──」
「何二人だけで楽しんどるんじゃ! 儂も混ざるぞ!」
「ですよねぇ!」
ちょっとでも期待した一瞬前の自分を引っぱたいてやりたい。二対の燃える情熱を宿した瞳が僕を捉え、そして……。
……。
**********
冷たい空気が肌を撫でる。二つの熱い塊が僕の両腕にしがみついている。
言わずもがな、桜お姉ちゃんとリリアさんである。
「……クク。今日はいつもより積極的だったのう、いろは」
火照った顔を僕の胸に押し付けるようにして、桜お姉ちゃんが甘く囁く。細い指先が僕のわき腹をくすぐるように撫でた。
「……」
リリアさんは無言のまま、耳をぴこぴこ動かしつつ、満足げに息を吐いた。
僕は荒い息をつきながら、口を尖らせた。
「二人とも、せめて夜まで待ってくださいよ……」
「夜は夜、今は今じゃ」
湿った空気の中、甘く囁きあう。目を閉じて、陶酔感に浸る。……うん、正直今日の二人はとても可愛かった。指輪効果か。
静かな雨音を聞きながら、僕たちはしばらく余韻を噛み締めた。
……。
不意に、ピク、とリリアさんの耳が動く。がばりと跳ね起きた。
「何か、声がしませんか?」
「声?」
言われて、耳をすます。……確かに、何かが騒ぎ立てるような声がした。しかも、次第にこちらに近づいている。一体何だろうか。思っていると、
「サカーシツ! イッラサカーシ、アルドウ、イーロウ・ハー!」
「サカーシツ! ベルドウ、アフツ、アン、ザーリ・イズラ・フロウ!」
「アフツ、アン、ザーリ・イズラ・フロウ! イーロウ・ハー、ベクツ!」
「イフ、ベクツ!」
聞き慣れない荒々しい努声が聞こえた。ひどい巻き舌と咽頭摩擦音に不吉な印象を受ける。床を蹴る無数の足音が響いた。同時に、けたたましい悲鳴が上がる。
「何が……?」
慌てて服を身にまとう。リリアさんは既に剣をつかみ、臨戦態勢になっていた。彼女は顔をしかめて、
「この声。イロハを探せ、魔炎のイズラ・フロウを称えよ、イロハを殺せ、と言っています」
桜お姉ちゃんが片眉を跳ね上げた。僕は息を呑む。
「魔炎のイズラ・フロウの信者!」
「ええ。恐らくは。……数が多い。逃げます。荷物をまとめて」
短く指令を出して、リリアさんが部屋を飛び出す。ローザとフウを呼びに行ったのか。
「全くもう、せっかくいい雰囲気だったのに! なぜ人のロリババアライフを邪魔するのですか!」
「……言っとる場合か。来るぞ」
空気が緊迫を帯びる。足音が近づいてきた……。
元の性別が男のロリババアは扱いに困る。Hell○ingの吸血鬼の人とか、某わしかわいいの人とか。萌えればいいという考え方もありますが、定義3の精神的に女であること、に反してる気も……。いや可愛いんですけどね……。
1~2話程度シリアス展開が入ります。




