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日本新世界紀行  作者: 魔王
カレニア侵攻編
11/12

空爆

「ほんとなんです。信じてください」

アンヌは、敵に対して単独で偵察した事を、クロエ隊長にしかられた後、必死になって状況を説明した。

たがどんなに必死になって説明しても、余計隊長からはあきれはてた顔をされた。

仲が比較的良い、同僚のロロですら、困惑の顔をされた。

「お前の話はあまりに、とっぴしすぎて、とてもついていけない。鋼鉄で出来た城のような船が沢山あるなんて」

「わたしだって、今だにこの目に見たことが信じられないくらいなんです」

「いずれにせよ、明日見に行きましょう。そうすれば事の真偽が分かりますし」

ロロが面白そうに言った。

「そうだな。それまで、お前はしばらく謹慎しておれ」

クロエ隊長は、アンヌにそう言った。

だが、次の日の夕方には、血相を変えた隊長自ら、アンヌに謝罪をして、謹慎を解く事になるのである。


日本海軍、連合艦隊司令長官、山本大将は、作戦参謀の秋山大佐を自室に呼んだ。

「省内からの要望もあり、今後作戦プランを立てる際は、丸山女史も入れて行うように」

「分かりました」

あの丸山麗華女史と一緒に仕事が出来る。秋山にとっては願ったりかなったりだ。

努めて冷静に答えたつもりだが、山本から言わせれば、喜びに満ち溢れているのがバレバレだった。

ゆえに不安でならない。秋山が彼女の言いなりになってしまうのでは無いかと。

「大丈夫かね、彼女に押されっぱなしでは困るぞ」

「もちろんです。親密に協力し合って行きたいと思います」

おまえは何を言っているのか分かっているのか。山本は頭痛がする思いだった。

不安だが、しょうがない。それに後からあれこれと、丸山女史に言われる位なら、最初から関わってもらった方がましに思えたからだ。

「頼むぞ」

今はそれしか言えなかった。


アレドニア王国の王都バリスにある軍務局にて、アンヌは空竜騎士団長と共に、軍務大臣である、サボィ公ドルゲンに報告してきていた。

アンヌは緊張していた。こんな偉い人の前で、受け答えが出来るかどうかもあったし、話を信じてもらえるか不安でもあったからだ。

サボィ公ドルゲン40は過ぎている者の、頑丈のそうな体つきで、口ひげがよく似合う男であった。

頬や額には傷があり、歴戦の勇者の風格すら漂わせていた。

彼は、元々隣国のグラディウス朝帝国の王子であった。

先帝が、後継者争いが起きないよう、僧籍に出そうとした。

しかし、元々軍人に憧れていたドルゲンは、それに反発して王宮を出た。

以来、傭兵隊長として、各地を転戦。名声を得た。

そして、アレドニア王国の先王ジャン2世に乞われて、将軍となった。

ジャン2世は、凡庸な王太子だったアンリ4世に、内政はミゼラン枢機卿に、軍事はサボィ公ドルゲンに任す様に言ってこの世を去った。

そして、今や軍事部門のトップ、軍務大臣となり、名実共にアレドニア王国を支える二大柱の一人になっていた。

「君達の報告だけであれば、疑ってしまう所だが、実は同じような話しが、海軍と、間者から届いている」

報告書を読み、アンヌの体験談を聞いた後、ドルゲンは言った。

「ゆえに、とても認めたくないが、君達の話は真実であると思っている」

それを聞き、何て物分りの良い大臣さまだと関心した。さすがは、この国を支えている英雄だと、アンリは思った。

報告を終え、アンリ達が帰った後、ドルゲンは日本の事について考えた。

毛利大使を始めとする日本人達は諸氏全般、謙虚で礼儀正しいが、どうも腹に一物を抱えているように見えた。

特に、気になっていたのは、自分たちは使節団などを送ってくるのに、こちらからの送ろうとしている使節団は、今だに受け入れようとしなかった。

田舎者ゆえ、王都の洗練された人達を歓待出来ない。などの理由を付けては、延期を申し出ていたのだ。

実は彼らは、正体を知られたくなかったのでは無いか。

これはムー大陸の常識では考えられなかった。

普通は小国でも、いや小国ほど肩肘を張って、大きく、強く見せかけようとしていたからだ。

そして日本は、小国でアドレニアに比べれば、文化もまだまだですよ。と大使達は言っていたからだ。

しかし、実態は、巨大な船を何十隻も作れるほどの国力がある。

グラディウス朝帝国ですら、そう簡単に作れる代物では無い。

グラディウス朝帝国すらしのぐ国家が、アドレニア海の向こうにあるなどとは、今まで聞いた事も無い。伝説すら無い。

突如として、超国家が沸いてきたというのか。そんな馬鹿な。

カレドニアに送った2万の将兵は、果たして成果をあげてくれるのだろうか。

不安に掻き立てられたドルガンは、派遣軍大将のボーノに、くれぐれも慎重に対応するように手紙を出そうと決めた。


アレドニア王国の王都バリスの王宮にて、毛利大使は、翌朝日の出をもって、日本側はアレドニアと交戦状態に入る、事実上の宣戦布告を宣言した。

海軍の山本長官から、何度と無く、念を押されていた。

外務省としても、過去の失態があるので、ここはキチンと宣戦布告状を出したのだ。

「ほう、日本はわざわざ戦するのも、名乗りを上げるのですかな」

宰相であるミゼラン枢機卿は、面白がっていった。

ムー大陸では、こんなことは非常に珍しかったのである。

無論、お互い条件を出し合い、決裂したら戦というのは、当然のようにあった。

だが、宣言も何も無く、いきなり襲い掛かる事も普通に行われていた。

「日本は礼節を重んじます。卑怯者と後々まで言われたくありませんからね」

毛利大使は、両手を少し上げて、おどけるようにいった。

「所で、日本軍には空飛ぶ物体があるようだが、あれは生物なのか、それとも大きな魔法の道具なのか?」

軍務大臣である、サボィ公ドルゲンが言った。

毛利大使も、グラディウス朝帝国に大使を送る際、サボィ公ドルゲンに力添えをお願いし、世話になった経緯があった。

それゆえ、彼の言葉を無下に無視する訳にも行かず、だからと言って正確に答えるつもりも無かった。

そもそも正確に行った所で、この時代の人にどこまで本当に理解出来るか、分からないが。

「生物ではありません。ドルゲン閣下。精密な機械の集合体で出来上がった、わが国の乗り物です」

「ほう、機械の集合体で空を飛ぶ乗り物が出来るのか」

ドルゲンは、興味深く言った。

これ以降、日本軍の戦闘機や戦車の事を、動く機械獣という名称が付いた。



次の日の、日の出を待たずして、軽空母いずもから、完全武装したハリアー2の10機が、上空へと飛びたった。

王都にある、敵の空竜騎士団本拠地に対する爆撃の為だ。

当初は16機で出撃する予定であった。

それが減らされたのは、例のごとく、丸山女史から、横槍が入ったからだ。

「もっと数を減らして半分にできませんか。それとレーザー誘導爆弾は高価なので駄目です」

資料を見て、計算機を叩きながら丸山女史が鋭く言う。

「かんべんしてくださいよ。ハリアーでは爆弾搭載の能力が低いので、それでは、2回出撃ないと効果が望めませんよ」

秋山としても、そう簡単には引き下がれなかった。

「それと数少ない爆弾を正確に当てるためにも、通常弾では無く、レーザー誘導爆弾が余計に必要にとなります」

「なら、機数は10機まで、ヘブウェイ誘導爆弾は高価なので駄目ですが、LJDAM弾までなら許可しましょう」

JDAM弾とは、通常の爆弾にJDAMキットを取り付けるだけで、誘導爆弾に変身させる事が出来る。

基本誘導はGPSで、うまく受信出来なかった場合は、INSに切り替わって誘導される。

LJDAM弾は、さらにレーザー誘導を追加したタイプだ。

実は、GPS衛星はまだ不完全のままであった。

転移したために、今まで衛星が使えなくなった。

その為、又一から新しく打ち上げなけばならなかったのだが、時間も金もかかるので、頻繁に打ち上げられなかったのだ。

そして気象、通信、偵察衛星などが優先され、GPSは後回しにされてしまったのである。

それゆえ、GPSがある程度使える、2年後まで侵攻を待った方が良いとの意見も軍部にあったが、政府は2年間も軍を遊ばせておく気はさらさら無かった。

今回、地上からのレーザー誘導は、あまり当てに出来ないので、ハリアーにライトニング指示ポットを付けるのだが、そうすると爆弾搭載量がさらに減ってしまう。

しかし、今回の攻撃で、完全な壊滅には出来なかったとしても、ある程度損害を与え、行動不能に持って行くことは、おそらく出来るであろう。

ここら辺が、妥協点かもしれない。

正直言って、今後の事を考えれば、敵空軍基地だけでは無く、他の兵舎などにも爆撃しておきたい所だが、それが出来ない事にもどかしさが募る。

戦争経済を理解する事は、目の前の美女を理解する事なみに、無図解しい。その事だけは理解できる。

ただ、山本長官から、又手ぬるいと言われてしまうかもしれないが。。。。

秋山としては、これが精一杯の妥協点として、言った。

「分かりました。それで何とかしてみます」

そう秋山が言うと、丸山女史が微笑んで言った。

「今回の出撃で2億円かかります」

「そうですか。。。今度敵が迫ったときに出撃する機会は、まさか無いとは言いませんよね」

「ありません。そんな費用はもうありません」

丸山女史は、きっぱりと言った。

秋山は、軽いめまいを感じるとともに、悟ったことがあった。

栄光あるわが日本軍が負けるとしたら、それは敵と戦って敗れたという事では無く、美女と金に負けるのだと。

それは予感めいたものでは無かったが、後に金だけではなく、本当に美女にも苦しめられる事態になる事を、秋山はまだ知らない。


軽空母いずもから、発艦したハリアー2の10機の内、2機が制空タイプで、残り8機が爆撃タイプであった。

制空タイプの内容は、300ガロンの外部燃料タンクX2、短距離用対空ミサイルサイドワインダーX2、中距離用対空ミサイルアムラームX2。

爆撃タイプの内容は、300ガロンの外部燃料タンクX2、短距離用対空ミサイルサイドワインダーX2、227kgLJDAM爆弾X4。

胴体下には、構造上、燃料タンクは付けられず、小型爆弾なら付けられるが、今回、制空は偵察ポッド。爆撃は指示ポッドを取り付けた。

なお米軍は、胴体下にECMポッドを取り付けていたりする。

日本軍は任務に応じて、これら4種類の使い分けをしていた。


上空が明るくなり、王都上空に差し掛かった頃、先行した2機のレーダーに機影が移る。

「ナイトリーダーより各機へ、距離20キロ、1時の方向に敵5機発見。ナイト2と共に、これより排除する。それまで上空にて待機せよ」

「了解(ラジャー)」

「対空ミサイル(アムラーム)発射」


ドニ竜騎士達5機は、日本軍の宣戦布告の日に、王都に何か攻撃を仕掛けてくるかもしれないので、朝早くから、上空の警護を団長より命じられた。

隊長機を先頭に、逆V字型の編隊を組み、王都上空を飛んでいたが、突如として隊長機と2番機が爆発して落ちてった。

「何だ!何がおきたんだ!!」

残されたドニ達は混乱した。

その後、高速で側を通り過ぎていく物体があった。

当たっていたらタダでは済まされなかったであろう。

もしかして、隊長はあれにやられたのか?


「アムラームとサイドワインダーは、それぞれ1発づつ外れたか。次は格闘戦に移るぞ!」

「隊長には負けませんよ!」

ナイト2の浅井大尉が意気揚々に言った。

「よし賭けるか。どっちが落とせるか」

隊長こと、朝倉中佐が面白がって言った。

「のりますよ。ワイバーンを格闘戦(ドックファイト)で撃墜したと、皆に自慢するんだ!」

ミサイルで打ち落とす事など、当たり前すぎて、自慢にもならない。

やはり格闘戦で打ち落とさないと、撃墜とは言えない思いが双方にあった。

「よしいくぞ!」

朝倉中佐が叫ぶように言って、ワイバーンに突っ込んでいった。

ハリアーに積まれている機関砲は、25ミリガトリングである。

装弾数は300発。わずか5秒に打ち切ってしまう。

ゆえに、狙えて撃てる瞬間は少ししかない。

しかし相手はワイバーン。生物特有の動きに、狙えるのは至難の業であった。

おそらくこれが普通のジェット戦闘機なら、食らい付くのが難しく、一撃離脱の戦法しか使えなかったのだろうが、ハリアーはVTOL機だ。

相手の不規則な動きにも、何とか食らい付いていった。


あれがうわさの空飛ぶ機械獣か。ドニは、驚愕の思い出でつぶやいた。

持っている槍で突こうとしてもワイバーンより早く移動し、なおかつ操縦者は、透明なガラスの中に守られている。

しかも胴体は本当に鋼鉄のような堅い物で覆われているようだ。

実際やりを投げたが、敵の翼に突き刺さるどころか、簡単に跳ね返された。

「畜生!これじゃどうやって戦えと言うんだ」

ドニ達は、必死になって逃げ惑うしかなかった。


結局、勝敗は朝倉中佐の勝ちだった。一機撃ち落したのだ。

浅井大尉は、敵の不規則な動きに対応出来ず、撃ちもらしてしまった。

「ちくしょ~う」

「わっはっはっはっ。これも練度の差だよ」

「おめでとうございます。隊長にはかないませんわ」

「当然の結果だな」

朝倉中佐は上機嫌に答えた。

「残りの二機はどうします。距離を取ってミサイルで止めを刺しますか?」

「いやもういいだろう。逃げまわってるだけだしな」

「よし勝利の祝いだ」

朝倉は、搭載されている、対ミサイル用のフレアを思いっきり撒き散らした。

それは、生き残ったドニや地上に居る者達に取っては、まるで天使が降臨したかのような幻想的な風景をかもし出していた。

そして、上空に待機してた爆撃部隊に指令を出す。

「ナイトリーダーより、爆撃開始せよ」

「了解(ラジャー)」

上空で待機していた他のハリアーが次々に降下し、目標とされた竜騎士団駐屯地に爆弾を落としていく。

こうして、作戦が終了し、朝倉たちは帰等した。

このワイバーンとの戦いは、日本空軍初の空戦として認定され、浅井朝倉の両名は日本の軍事史に名を残した。

だが同時に、ミサイルが万能にならない、ワイバーンのステルス性の良さを現した戦いでもあった。


「何たる惨状だ」

サボィ公ドルゲンは、空竜騎士団訪れていた。と言っても、そこは瓦礫の山になっていたが。

団長以下70人以上が死亡。200人以上が負傷したとの報告を受け、実況見分の為来ていたのだ。

今朝何度も大きな音を聞き、飛び起きたくらいだ。

生き延びた空竜の報告で、敵日本軍の空飛ぶ機械獣が、基地に襲い掛かっていた事を知った。。

巷では、朝の轟音と共に、空に白い天使が舞い降りた。などと噂されているが、それは日本軍の仕業以外考えられなかった。

飼っていたワイバーンもほとんどが死傷した。

無事なのは、偵察に出していたりしていた、8匹しかいなかった。

しかも、たった2機の空飛ぶ機械獣より、5匹のうち3匹までもが撃ち落されるなど、空戦でも負けていた。

これでは、空の支配権も敵に落ちたも同然である。

今までに無い、戦慄を覚えたドルゲンは、すぐにでも2万の軍勢を引き返さないと危険だと。強く思ったのであった。

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