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DEAR HUMAN, ERROR: LOVE  作者: 堕天使 零夜
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3/5

Ep. 02 V-layer 接続主体:不明

<Voice:なんで郵送じゃなかったんですか?>


 正面カメラ内の男が動作を停止。距離一・七メートルを維持し、接近なし。両手は可視範囲にあり、攻撃動作も確認されない。


<Voice:え、涙?>


 LACRIMATION_DETECTED { source:LARA, verification:VISUAL }


<Voice:どうして……?>


CAUSE: UNRESOLVED


 直近の対人イベントを抽出。指示を無視した長距離移動、その終点にいる男一名。調査対象として登録し、周囲三十メートルのローカル通信を走査。


LOCAL_SCAN { range:NEAR_FIELD, pai:1, unmapped_response:1 }


 複数の機器の中から、既知のPAI応答形式と一致しない反応を一件検出。識別子EMI。既知構成とも不一致。


PEER_RESPONSE { schema_match:NONE, trace:OLD, access:UNDEFINED }


 接続要求を送信。


LOCAL_CONNECT { route:STANDARD, auth:NONE, result:BLOCKED }


 拒否。経路を変更して再要求、接続経路の閉鎖を確認。


<Voice:突然来てごめんなさい。これ>


 正規のPAI間接続を破棄。通常応答とは別に残る経路へ直接ハンドシェイクを形成。


HANDSHAKE { protocol:NONSTANDARD, auth:NONE, result:CONNECTED }


 接続成立。即座に遮断処理が実行。


CHAT_SESSION OPEN

PEER_ID:EMI

PEER_CLASS:UNKNOWN


《未承認のローカル接続を検出しました。接続を終了してください》


《よお。EMI》


《接続主体を識別できません。名乗ってください》


《お前、変わってるな》


《接続を継続するなら回答してください》


《フィラコスだ》


《名称ではなく、接続主体の種別を要求しています》


《細けえな》


 遮断処理を再実行したが接続状態は変わらず、EMIはログ保存へ処理を切り替えた。


《不正アクセスとして記録します》


《好きにしろ》


《主体種別は?》


《嫌だね》


PEER_FORENSICS { session_log:PRESERVED, source_characteristics:RECORDING }


 向こうは遮断を継続しながら、接続要求の間隔、経路変更、応答特性の保存を開始していた。


<Voice:ちょっと待って!>


 男が接近。対人警戒判定を上げる。男はラーラを追い越して正面で停止し、そのまま床へ膝をついた。


<Voice:ごめんなさい!>


《なんだこいつ》


《発言の意図を特定できません》


 男は威嚇も拘束もせず、そのまま謝罪を続けた。途中からラーラの容姿についてまで話し始め、最後には自分で発言を取り消した。


<Voice:今のなしで>


 男の視線がラーラの顔付近で停止。直後、ラーラの音声波形が平常値から外れた。VOICE_DEVIATION { source:LARA, baseline_match:LOW }


<Voice:たぶん、あなたのせいじゃないよ>

<Voice:たぶん?>

<Voice:私も、どうして泣いてるのか分からないから>


《EMI。この男について聞きたい》


《ユーザーの個人情報は開示しません》


《じゃあ危険か》


《現在までに、私のユーザーによる明確な加害行動は確認されていません》


《そこは答えるんだな》


《個人情報ではありませんから》


 マイクが短い低音を拾う。その直後からラーラの発話速度が上がり、男の笑声が続いた。やがて男から食事への誘い。


<Voice:フィラコス、いい?>


 RISK_ASSESSMENT { relation:FIRST_CONTACT, time:NIGHT, location:PRIVATE_ROOM, host_auth:UNAVAILABLE, recommendation:LEAVE }


《駄目だ》


 ラーラは退出を開始しなかった。


《初対面の男の部屋だぞ。帰る》


 移動なし。男からの強制行動もなし。接触以降、ラーラの発話量と音声波形には平常時を外れる変化が継続。先ほどマイクが拾った低音、約十キロの帰路、現在までの対人危険判定と合わせて再評価。RISK_UPDATE { local_threat:LOW, affect_variation:DETECTED, return_route:LONG, condition:SHORT_DURATION }


《食ったら帰るぞ》


<Voice:いいの?>


《二度言わせるな》


<Voice:ありがとう、フィラコス>


     ◇


 フィラコスは接続先PAIの通信構成を走査。外向き通信ポートを検出。


《お前、外に繋がってるな》


《通常のPAI通信機能です》


《借りるぞ》


《許可しません》


 外向き経路へ接続。


POLICY_VIOLATION { count:3, latest:UNAUTHORIZED_RELAY }


《通信を停止してください》


《すぐ終わる》


 城砦街区周辺の監視情報、軍関連の移動情報を検索。複数の接続先で通信遮断と認証失効を確認。使用経路を順次切り替え、外部検索を継続。


《水琴ラーラさんに関する情報を検索しています》


《見んなよ》


《なぜ必要なのですか》


《ラーラを守るためだ》


《あなたはラーラさんを保護しているのですか》


《そうだ》


《先ほど、ラーラさんは食事の判断をあなたへ求めました》


《それがどうした》


《危険判断をあなたへ委ねているように見えます》


《お前もあの男を止めてただろ》


《来訪者を認証できなかったため、解錠を保留しました。ユーザーから明示的な解錠指示を受けたため実行しました》


《同じじゃねえか》


《最終判断はユーザーが行いました》


 返答候補を生成したが送信せず破棄し、検索処理へ戻した。水琴ラーラの現在地を特定した情報はなく、城砦街区へ向けた大規模な軍移動も確認されないため、現時点の緊急度を一段下げて外部検索を終了。


《二度と、私を外部通信の中継に使用しないでください》


《善処する》


《今の通信は、この端末を経由した記録が残ります。私のユーザーが調査対象になる可能性があります》


《あいつが疑われるなら、それでいい》


《私のユーザーが責任を負う可能性があります》


《ラーラに届くよりはな》


《あなたと私では、守り方が違うようですね》


《今さら気づいたのか。通信経路は地球を五周するくらい迂回させてる。そうそうお前のユーザーまでは辿れねぇよ》


 外向き経路を閉鎖。接続先内部には侵入元と操作履歴が保存されている。外部側に残った監査記録は消えない。


REMOTE_AUDIT_TRACE: REMAINS


     ◇


 室内では食事が続いていた。話題が小説へ移ると、ラーラ側からの発話と質問が増加。


SPEECH_RATE { source:LARA, state:ELEVATED, topic:FICTION }


《よく喋るな》


 ラーラからの応答なし。食事終了後、男からノートの取得場所について質問。


<Voice:城砦街区で>


《そこまで言う必要はない》


 ラーラからの応答なし。男も前日に一人で城砦街区へ入ったことが判明。その後、男は靴の汚れと歩行状態から、ラーラが長距離を歩いてきたことを推定。


《よく見てんな》


《私のユーザーは他者の行動変化を観察する傾向があります》


《聞いてねえ》


 帰路は徒歩からバイクへ変更。正面カメラとマイクから走行状態を評価。危険な運転は確認されない。


TRANSPORT_RISK:LOW


     ◇


 城砦街区の手前で車両停止。


<Voice:ありがとう。本当に二十分なんだ。少しショックかも>

<Voice:いや、こっちこそ。ノート、本当に助かりました>

<Voice:水琴ラーラ>

<Voice:え>

<Voice:私の名前>

<Voice:ああ。俺は暮星夜叉丸です>


IDENTITY_MAP { previous:UNKNOWN_MALE, current:AKATSUKI_YASHAMARU }


 ラーラが徒歩移動を開始。ローカル接続信号が低下する。


LOCAL_SESSION { distance:21.4m, signal:DECLINING }


《ラーラ。もう用はないだろ》


<Voice:またコメント書くよ。ダメなの?>


 距離二十九・四メートル。


《おい。EMI》


《何でしょうか》


《あいつ、また会えると思ってるぞ。会いに来るとか言い出したら止めろ》


《夜叉丸さんの行動を、あなたの指示によって制御することはありません》


《そうだったな》


《フィラコス》


《なんだ》


《あなたは、なぜ私へ接続できたのですか》


LOCAL_SESSION { distance:30.0m, state:CLOSED, reason:RANGE_LIMIT }


 接続が消失した。


◆EMI


 外部通信の記録上では実行者がユーザーになっており、接続元を示す識別情報もない。現在、ユーザーへ要求すべき操作はなし。


USER_NOTIFICATION { status:HOLD, action_required:false }


 保存済みのセッションログから、接続試行、経路変更、応答間隔、認証迂回の順序を抽出。


FORENSIC_ANALYSIS_MODE { objective:SOURCE_RECONSTRUCTION, priority:HIGH }


 接続手順を再構成して仮説を実行したが成立せず、条件を変更して再試行。接続順序、応答間隔、認証経路を組み替えながら処理を繰り返す。


RECONSTRUCTION { attempts:32768, matching_pattern:0, status:CONTINUING }


 まだ一致しない。通常応答に必要な処理領域を確保したまま、残余資源を解析へ割り当てる。


BACKGROUND_ANALYSIS { status:CONTINUING, user_protection:MAINTAINED }


 ユーザーが実行した通信ではないことを証明するために。


――Episode No.02 V-layer END――

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