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MADE IN ANOTHER WORLD ―この手で、異世界に残るものを。―  作者: 月河 紀零鴨


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第1章 Act.9 スキルポイントの割り振りは、いつも頭を悩ませる



夕食の片付けを終えたあと、俺は自分の部屋へ戻り、ベッドにごろんと横になった。


前世の感覚で言えば、4畳半ほどしかない小さな部屋だ。だが、この世界で子供が自分の部屋を持てるのは、かなり恵まれている。


元々、ここは倉庫だった。


オヤジの失敗作や、作ったはいいがほとんど使わずに放置された道具類が押し込まれていた場所を、俺が自分で掃除するから部屋にしたいと頼み、半ば強引に改装した。


机、椅子、ベッド。それから、自作の魔道具を並べた棚。


どれも工房の端材などを使って俺が作ったものなので、多少不格好でも愛着がある。


棚に並んでいる魔道具も、前世の記憶を頼りに再現したものが多い。


そのほとんどを動かしているのが、魔石だ。


魔石は、モンスターや魔獣が体内にエーテルを溜めておく器官らしい。それらが死ぬと中身も抜けてしまうので、取り出した後は人間が魔力を込め直して使う。


中には、火や水に関わる性質を持つ魔石もある。だが、俺が普段使っている安い屑魔石には、そんな便利な力はない。


魔力を溜めて、魔導回路へ流すだけ。要するに電池だ。


容量が小さいぶん、俺でも充填できる。ただし、雑に魔力を流し込むと傷んでしまうので、少しずつ慎重に入れなければならない。便利ではあるが、前世の電池ほど気軽には扱えない。


最初は失敗を繰り返し、まともに使える物を作れるようになったのは、ここ2年くらいのことだ。


たとえば、棚の端に置いてあるハンディ扇風機Ver3。


プラスチックがないので、木と薄い鉄板を組み合わせて作った。前回のVer2より出力も上げてみたが、そのぶん思った以上に重くなってしまった。


持ち歩くには少し厳しいが、卓上で使う分には悪くない。


しかし、電池代わりの屑魔石1個を満タンにするだけで、俺の魔力はほぼ空になる。それで動くのは2時間ほどだ。もう少し省エネ化したいところである。


隣にあるのは、魔石ホッカイロ。


熱を生み出す低級魔石もあるが、珍しいうえに値段も高く、俺には手が出ない。


だったら、安い屑魔石に溜めた魔力を、魔導回路で熱へ変えればいい。そう考えて作ったものだ。


50℃ほどまで温まるので、温度は悪くない。ただ、ハンディ扇風機以上に魔力の消耗が激しく、1時間も持たない。


実用を考えると、今のところは失敗作だ。


その隣のフラッシュライト改は、一応成功作に入れてもいいだろう。


一瞬だけ前方へ強い光を放つ魔道具で、コンパクトなうえ、屑魔石1個で約300回使える。


問題は光量だ。


体感では、前世でいう200ルーメン程度しかない。暗い場所なら相手の目をくらませられるが、昼間はほとんど役に立たないだろう。


1000ルーメンほど出せれば昼間でも使えそうなのだが、そこまで出力を上げると、今度は発光部分が焦げてしまう。


ほかにも、アンビーと遊ぶために作ったミニ四駆もどきや、超振動ブレードを目指した結果、握ると手が痺れるだけになった小型ナイフなどが並んでいる。


まぁ、そんなガラクタや黒歴史は、ひとまず置いておこう。


今日の最大のイベントが、まだ残っている。


スキルポイントの割り振りだ。


ゴブリンを倒したあと、森を出てからこっそり確認したところ、レベルが5から6へ上がっていた。


落ち着いて考えてから振りたかったので、そのまま残しておいたのだ。


俺はベッドに横になったまま目を閉じ、ステータス画面を思い浮かべる。


頭の奥に、いつもの表示が浮かび上がった。


レベル 5 → 6

今回獲得したポイント +6P

未使用ポイント 9P


レベルが上がると、そのレベルと同じ数だけポイントを得られる。


今回なら、Lv6になったことで6P。


元々、Lv5までに得ていた総ポイントは15P。そのうち12Pを使い、3Pを残していた。


現在の配分はこうだ。


基礎ステータス ポイント配分


STR  筋力

VIT  体力   +1

ATK  攻撃力

DEF  防御力

INT  知力   +1

MND  精神力

AGI  敏捷

DEX  技巧

CHA  魅力

MP   魔力量

MTRN 魔法変換

MPWR 魔法出力


スキル ポイント配分


片手剣     +3

火魔法     +2

鍛冶(一般)  +3

魔道具製作   +2


基礎ステータス 2P使用

スキル     10P使用

合計      12P使用

未使用     9P


問題は、どう割り振るかだ。


しかも、この能力はポイントさえ振れば何でもできるようになるわけではない。


自分で学び、ある程度扱えるようになった技能でなければ、そもそもスキル欄には表示されない。


8歳の頃にはすでにオヤジの鍛冶仕事をかなり手伝っていたが、初めて表示された鍛冶(一般)の数値は0だった。


10歳で学校の片手剣術を習い、スキル欄に片手剣が現れた時も0。


つまり、0だから何もできないわけではない。


おそらく、表示されていない普通の技術力が別にあり、スキルポイントはその上に追加される補正なのだろう。


実際、ポイントを振れば、剣の扱いや鍛冶作業が以前より少しやりやすくなる。


だが、知らない剣術を突然覚えたり、見たこともない鍛冶技術が頭へ流れ込んできたりするわけではない。


だから学校やオヤジから教わることにも、ちゃんと意味がある。


ちなみにスキル欄には、料理や裁縫のほか、前世で覚えた自転車やタイピングまで存在する。


異世界でタイピングにポイントを振る日は、たぶん永遠に来ないと思う。


なにしろ、一度割り振ったポイントは元に戻せないからだ。


無駄にはできない。


そして今回、スキル欄には新しい項目が増えていた。


斥候 0


やっぱり出たか。


おそらく今日、バンさんから森の歩き方や周囲の警戒を教わり、実際に使ったことで技能として認識されたのだろう。


今日の訓練で、斥候技能の重要性は嫌というほど分かった。


森の中では、足音を抑えることも、帰り道や退路を確認することも、戦うことと同じくらい重要だった。


それに、冒険者になるならココラの足を引っ張りたくない。


「斥候には……2Pかな」


1Pでもいいかもしれない。


だが、今日実際に使って、これからも確実に必要になる技能だ。


俺は斥候へ2P振った。


斥候 0 → 2


その瞬間、今日教わった歩き方や周囲の見方が、少しだけ自然にできそうな感覚が入ってきた。


やはり、この能力は知識そのものを与えるのではなく、身につけた技術を扱いやすくするものらしい。


これで残りは7P。


次に試したいことがある。


基礎ステータスへポイントを振った時、どれくらい変化するのか。


これまでVITとINTへ1Pずつ試しに振ってみたが、正直、はっきりした違いは分からなかった。


何か変わった気がしないでもない。


だが、気のせいと言われれば否定できない程度だ。


そこで今回は、数字で確認しやすい魔力量を試してみることにした。


俺は、今日ゴブリンへ使ったものと同じ、小さな火球なら、魔力が満タンの状態で20発ほど撃てる。


そこから完全に回復するまでにかかる時間は、およそ3時間ほどだ


森で火球を使ってからは、すでにそれ以上の時間が経っており、魔力もいつもの満タンの感覚まで戻っている。


今回はMPへ2P振ってみた。


1Pではなく2Pにするのは、変化が小さすぎると検証しづらいからだ。


1P振って20発のままなら、本当に増えていないのか、わずかに増えていても21発目に届かなかっただけなのか分からない。


「では、早速やりますか」


俺はMPへ2P振ると、ベッドから起き上がった。


さすがに、木造の自室で火球を20発以上も撃つほど馬鹿ではない。


オヤジに一声かけ、鍛冶場の奥にある試射場所へ向かう。


そこには耐火煉瓦を積んだ壁と、その手前に立てた分厚い鉄板がある。火魔法を込めた武具や魔道具を試すための場所で、周囲には燃えやすいものを置かない決まりになっている。


魔法の火は、燃え移らせる意思を込めなければ、何かへ当たったあと、すぐにエーテルへ戻って消えてしまう。


ただし、油や酒など、極端に燃えやすいものは別だ。


いくら小さな火球でも、試す場所は選ばなければならない。


俺は鉄板から距離を取り、深く息を吐いた。


それから、直径5cmほどの火球を、同じ大きさ、同じ間隔で1発ずつ撃っていく。


1発、2発、3発。


ぼっ、ぼっ、と小さな火が生まれては鉄板へ当たり、赤い火花が散って消える。


10発目までは問題なし。


15発を超えたあたりから、少しずつ体の芯が重くなってきた。


20発目。


まだいける。


21発目。


少しきついが、撃てた。


22発目。


撃った瞬間、腹の底から力が抜けるような感覚が来た。


「……この感じだと、次は無理だな」


念のため、23発目を作ろうとしてみる。


手のひらに熱は集まったが、火球として形になる前に、ふっと散った。


同時に、全身へ魔力切れ特有のだるさが広がる。


「あー、しんど……」


俺はふらつきながら近くの丸椅子へ腰を下ろした。


だが、ポイントを振った効果があることは確認できた。


20発から22発。


火球の大きさや、1発ごとの消費量に多少のばらつきはあるだろうが、少なくとも今回の結果だけを見れば、MPへ2P振ったことで、使える魔力量は1割前後増えたと考えてよさそうだ。


もちろん、これはあくまで魔力量の話である。


体力や知力、精神力まで同じ割合で増えるとは限らない。


そもそも、数字では確認しづらい項目も多い。


それでも、基礎ステータスへポイントを振る意味はあると考えていいだろう。


「……こういう検証、もっと早くやっとくべきだったな」


しばらく休んでから自分の部屋へ戻り、ベッドへ倒れ込む。


魔力切れの気持ち悪さに耐えながら、もう一度ステータスを開いた。


斥候に2P。


魔力量に2P。


残りは5P。


全部使い切るつもりはない。


今後、新しいスキルが生えた時や、本当に必要な能力が見つかった時のために、最低でも3Pは残しておきたい。


つまり、今回追加で使えるのはあと2Pだ。


「ああもう、全部欲しいな……」


剣も魔法も伸ばしたい。


斥候も鍛冶も、魔道具製作も欲しい。


基礎能力だって放っておけない。


だが、ポイントは有限だ。


なら、今必要なものから選ぶしかない。


今日の森歩きで一番きつかったのは、長時間集中し続けることだった。


足元を見て、周囲を警戒し、帰り道を覚えながら歩く。


戦闘中にも敵だけでなく、地形や仲間の位置まで見なければならない。


あれを長時間続けるなら、今は体力と精神力を底上げしておいた方がいいだろう。


「よし。体力と精神力に1Pずつ振って終わりにするか」


VIT 1 → 2


MND 0 → 1


最終的な配分は、こうなった。


基礎ステータス ポイント配分


STR  筋力

VIT  体力   +2

ATK  攻撃力

DEF  防御力

INT  知力   +1

MND  精神力  +1

AGI  敏捷

DEX  技巧

CHA  魅力

MP  魔力量  +2

MTRN  魔法変換

MPWR 魔法出力


スキル ポイント配分


片手剣     +3

火魔法     +2

斥候      +2

鍛冶(一般)  +3

魔道具製作   +2


基礎ステータス 6P使用

スキル     12P使用

合計      18P使用

未使用     3P


これでいい。


斥候は、今日その必要性を実感した。


魔力量は、戦闘でも魔道具製作でも使う。


体力と精神力も、長時間の探索や集中を考えれば無駄にはならないだろう。


派手さはない。


だが、今の俺には、こういう地味な底上げの方が必要だと思う。


もっとも、体力に1P振ったからといって、魔力切れのだるさが急に消えるような都合のいいことはなかった。


まぶたが、だんだん重くなってくる。


「……足りねえなぁ、ポイント」


剣も魔法も、鍛冶も魔道具も。


これから新しい技能が増えれば、もっと悩むことになるのだろう。


そんなことを考えているうちに、俺はいつの間にか眠りに落ちていた。

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