第143話 定期公演#11 その7~話題のすり替えが下手になった?
ここから次のコーナーまで、MCをサクにゃんからハルルにスイッチ。サクにゃんはコーナー出演の準備もあるからね。
「みなさ〜ん、3曲目『朝起きたらすべてが夢でありますように~大好きなあなたが私じゃないあの人に夢中だなんて、たとえ夢が覚めても絶対に信じない~おやすみ大好きまた明日』でした〜。いかがでしたでしょうか〜!?」
会場は微妙な空気に包まれた、とまで言うとさすがに言い過ぎかもしれないけれど、変に緊張感のある雰囲気にはなっていると思う。もちろん拍手はしてくれているんだけどね。
まあ、ファンのみんなが気にしていることはよくわかるよ。「実話かどうか」だよね……。でも大丈夫。ちゃんとこの話には安心できるエピソードが添えられるからね!
「サクラ、新曲のメインボーカルどうだった?」
微妙にザワつく会場の雰囲気に気づかないかのように、ハルルが明るい声でサクにゃんに話しかけた。さらにどよめく会場のお客さんたち。
「はい、サクラです! 今回はいつにも増してすごく難しい曲でした!」
サクにゃんは直立不動、右手を真っ直ぐに挙げたままハキハキと答える。
「どんなところが難しかったのか、訊いても良い?」
「感情移入の仕方ですね! サクラは明るい子なので、メンヘラ属性はありませんから!」
はいウソー。
って会場のみんなが思いましたー。
ピンク色のペンライトが激しく揺れる中、あちこちで大袈裟な笑い声が沸き起こっている。
「ちょっと! みなさんのその反応はどういうことですか!? サクラは春さんと違って、嫉妬に狂ってコーチを殴ったりプロレス技をかけたりしませんし!」
「ちょっとちょっと、サクラ!? 急に台本にない話やめて! も、もう嫌だなあ。そんなおもしろ作り話をアドリブで思いつくなんて〜、サクラも腕を上げたわね〜」
ハルル……トーク下手になった……? アドリブ対応力のなさが際立っている……。どうすんのこれ? 今のサクにゃんの話を暗に肯定しちゃっているじゃんか。
(会場のみなさんも喜んでいらっしゃいますし、良い暴露だったのではないでしょうか)
「そうかな……」
なんだろう。緊張しているわけでもないし、ひさしぶりに観客が入るライブだからテンションがおかしい感じでもない。単純に慌てていて余裕がないのかもしれない?
「コーチといえばサクラたちがレッスンをしている間に、公式チャンネルでゲーム配信されてましたよね!」
コラー! ボクの話題でトークを広げるな!
「私、アーカイブ見た☆ なんか〜私にそっくりなヤマンバギャルが出てた☆」
「そうなんですか〜? 気になります~」
会話に入ってきたのはメイメイだ。
「私はアーカイブ見ていなくて〜、カエくんが絶対見ないでって泣いて頼むから〜」
泣いてはいないですけどね?
って、観客たち!「あ〜」じゃないんだわ! お前らはボクとメイメイの何を知っているんだよ!
(正確に言えば、アーカイブを見たら泣くからね、でしたね)
だからまだ泣いてはいないでしょ! でもホントに泣いちゃうかもしれないから、メイメイは見ないで!
「チィタマが出るなら私もナズナで出たかったわ!」
あれはチィタマ役ではなくて、チィタマのコスプレをしたボクなわけだけどね……。チィタマの公式(?)技を使ってはいたけれども……。しかし外伝って、言うほど公式設定なのかねえ?
「そういえば詩さんに似たキャラクターが登場したとお聞きしたのですが、アーカイブが残っていませんでしたわ。それはどこに行けば見られるのでしょうか?」
あ、ウーミーそれは!
「私が倒されて、宇宙戦艦に乗りこんだところで終わっちゃったよね〜。ヤマンバゾンビギャル悲しっ☆」
そこで時間軸の世界線が分岐して、今ここにいるボクはゲームを中断して帰ってきたってことになっているんだよね?
(そうです。そのまま宇宙を亜光速で航行し、惑星チテネティアに到着したかえでくんは、並行世界のかえでくんです)
ううーん、どこからどこまでが現実なのか……。ダンジョン探索している時の記憶もあるんだけどなあ。むしろその間にこっちでやっていたというマネージャー業のほうがしっくりきていない。誰かの記憶を無理やり埋め込まれたような……。
(睡眠時に並行世界の記憶も含めて同期処理が行われていますので、同じ時刻にまったく異なる環境で活動している記憶が手に入ることになります。慣れるまでは少し混乱するかもしれませんね)
この状態って、慣れることがあるの……?
どの自分がホントの自分なのか……だんだん曖昧に……。
(慣れます。すべて本物のかえでくんの記憶です。慣れてしまえば便利なものです)
なんか実感がこもっていますね……。
レイの人間離れした部分に触れてしまいそう。あまり詳しく訊くのはやめとこ……。




