第125話 マキカエレイ特別配信 その25~あー、たぶんあそこの穴が巣だわ
3階層にやってきてから、およそ2時間ほどが経過した。
けれどボクは、未だ下りてきてすぐの地点からほとんど動けずにいた。
「やっぱり1つ階層を下りるだけで、魔物の強さが段違い……」
ずっとここで銭投げをしている気がする。
あれだけあった銀貨も、半分くらいまで減ってしまっていた。
「2階層と比べて、魔物の数が違い過ぎるよね。1体倒している間に、どんどん集まってくるし」
コイツの名前、シャドウスパイダーだっけ?
小型で黒と白のシマシマ模様の蜘蛛なんだけど、動きがけっこう速い。それにどこからか集まってくるせいで、あっという間に10体くらいに囲まれちゃう……。
「最初にボクの両足に蜘蛛の糸を吐いて足止めしてきてからは、単調な体当たりを繰り返してきているからまだなんとかね。それにこんなにたくさん集まっているのに、なんで攻撃が1体ずつなんだろう。一斉に攻撃を仕掛けてこないから今のところ助かっているけれど、攻撃パターンが変わったりしたら一瞬で詰む気がする……」
半分くらいのシャドウスパイダーは攻撃すらして来ず、ボクの退路を断つように通路の両側を塞いでいるのが不気味で仕方ない。
(テレレッテッテッテ~。かえでくんはレベル37になりました)
「まあ、シャドウスパイダーのレベルが42ってことで、銭投げで無理やり倒せばどんどんレベルが上がるから、もうちょっとの辛抱かな……」
HPも低めだから、銀貨1枚で1体倒せるし、お財布的にはまだまだ余裕がある!
(テレレッテッテッテ~。かえでくんはレベル38になりました)
「と言ってもだ。ずっと戦いっぱなしなのはちょっと精神的に疲れるね。蜘蛛の糸のせいで足が動かないから逃げようにも逃げられないし、コイツらが全滅するまで戦い続けないといけないのかな……」
(テレレッテッテッテ~。かえでくんはレベル39になりました)
「巣でも近くにあるのかな……。倒しても倒しても数が減らない。追加の蜘蛛がどんどんやってくるなあ。あー、今見えた! たぶんあそこの穴が巣だわ」
壁の隙間に開いた割れ目から、シャドウスパイダーが顔を出したのがチラッと見えた。巣を叩かないといくらでも増殖しそう。
でもどうやって?
巣の中に銀貨を投げ込む? いやー、そんなのでは巣は潰せないよね。火炎放射器とかあれば良いのにな。汚物は消毒だーってやらないと無理そう。
(テレレッテッテッテ~。かえでくんはレベル40になりました)
「レベル40か。そろそろ『チィタマ・クロー・スラッシュ』が効いたりしないかな? スローリーピンクベアの時って、レベルいくつ差の時からダメージ与えられたっけ? 有識者ー誰かー、って人が少ない時間帯何だっけ」
“レベル29の時にレベル30のスローリーピンクベアを倒せている”
“レベル2差ならいけるんじゃないか?”
“ちょっと試してダメならすぐに銭投げに切り替えるヨロシ”
“ポーション飲んでおけよー。HP半分まで減っているぞ”
“油断するなよ~”
「おお、有識者たち! 助かるよ。ポーション了解」
2階層でドロップしたポーションのおかげでHPが9割まで戻った。
じゃあ行ってみますか。
「チィタマーーークローーーーーースラァァァァァァァァッシュ!」
おお! 余裕で3体一気に屠れたぞ!
「いけるじゃん! わりと楽勝⁉」
チィタマの爪のほうが動きが速いから、『チィタマ・クロー・スラッシュ』で連撃を繰り出せば、余裕でシャドウスパイダーを複数体巻き込める。これで一気に形勢逆転だ!
「チィタマーーークローーーーーースラァァァァァァァァッシュ!」
(テレレッテッテッテ~。かえでくんはレベル41になりました。アイテム品のドロップを確認しました)
とりあえずアイテム拾うのはあとにしよう!
誰かに横取りして拾われるわけでもないし。
今は殲滅を優先させてーと。
* * *
「よし、囲んできていたシャドウスパイダーは全部倒したね。まだ両サイドの通路を塞いでいるヤツはいるけれど……」
やっぱり範囲攻撃というか、複数体を一気に攻撃するスキルがないと押し込まれやすいね。『チィタマ・クロー・スラッシュ』は攻撃範囲が狭いけれど、一応連撃だから複数体倒せて良かった。
「って、ゆっくりしている間に、また穴からゾロゾロと……。アイテムを回収してどうにかここから抜け出す作戦を……足が動かない!」
蜘蛛の糸で固められているんだったわ。
だるいなー。
チィタマの爪で……一応取れるね。物理的に蜘蛛の糸で固められていただけで、単純な足止めだったっぽい。よし、これで足は自由だ。
「アイテムアイテム♪ ほとんどコインだけど……これはなんだろう? ランタン? ここは比較的明るいダンジョンだけど、もっと暗い場所では使えるかも」
とりあえず収納しておこうかな。
さて、シャドウスパイダーの巣を叩かないと。




