第112話 マキカエレイ特別配信 その12~艦長、いけます。発進の合図をおねがいします
「まあ……ミミックに溶かされて、っていう表現を聞いた時に予想はしていたんですが……着替えをください」
虎猫柄のビキニがまあまあ溶けて……でも見えそうで見えないあれな感じになっていますからね。でも知ってますよ。どうせ見えちゃいけないところが見えることはないんでしょ。
(緊張感を持たせるために、セルフレイティングをはずしましょうか?)
いや、やめて……。
すみませんでした。恥ずかしがります。
「きゃー、ボクのビキニが溶けてしまっているニャン。とっても恥ずかしいニャン。誰か助けてー」
“棒”
“棒助かる”
“カンペ出てた?”
“俺らにはお構いなく”
“どうせ下は全身タイツだろ”
“もっと全力でやれよ!!!”
“棒女優”
“まるで成長していない……”
「うるさいなー。わざとだって言ってるでしょ。お、とりあえずこれで良いか」
壁にかかっていた紺色のジャケットを羽織る。
このジャケット、なんか装飾がすごいな……。もしかして軍服をイメージしているのかな。まあ何でも良いか。
ジャケットのボタンを全部止め終わった瞬間、引き戸が閉まり、上からシャッターが下りてきた。出入り口を含む四方すべてがシャッターでふさがれ……閉じ込められた?
【カエデ~再び罠にかかってしまったか~⁉】
「今度は何よ……」
ウーウーウーウー!
鼓膜が破れるかと思うほどの大音量でサイレンの音が鳴り続ける。
「ちょっとカンベンして……」
これ、視聴者の方には影響ないんだよね?
この音をそのまま流していたらめっちゃ迷惑だよ?
(もちろん配信用の音声のボリュームは調整していますのでご安心ください)
もうサイレンだなってことはわかったから、ボクのほうの音量も調整して……。
お、小さくなった。サンキュー。
「それで今度は何なの? 閉じ込められたってことはわかったんだけど」
(メインエンジン出力安定。続けてワープエンジン起動開始。出力上昇。50%。60……70……80%。出力安定。その他システム異常なし。オールグリーンです)
急に何?
(艦長、いけます。発進の合図をおねがいします)
「え? 何……?」
(発進の合図をおねがいします)
「発進……?」
(ワープエンジン点火。機動戦艦メープル、発進)
レイが発進の合図を行った瞬間、体が床に叩きつけられた。
「ちょちょちょちょちょ!」
何事⁉
起き上がれないんですけど⁉
(発進、異常なし。続けてワープ航行に入ります。艦長、ご命令をおねがいします)
「あばばばばばばばばばばばば! かかかからだががががががが」
(そこの無重力シールドに守られた席に座ってベルトを締めないと危険です)
「無重力シールド……?」
こ、これか……。
さっきミミックが爆散した時にはこんな席はなかった気が……。
うわー、すっごいフカフカなイスだー。
(艦長、ご命令をおねがいします)
「えーと……ワープ開始?」
(ワープエンジン出力最大。2、1、0。亜光速ワープ開始しました。航行システム異常なし。バリア正常に作動。このまま速度を光速の99.9999%に固定します)
「一体何なの? 急にSFっぽい感じになったけど?」
【カエデ、宇宙戦艦に乗ってワープをしてしまったぞ~? 地球は遥か彼方。どうする~?】
「いや、どうするって言われてもね……。何、これも罠だったの?」
(罠です)
「そうですか……」
ボクにどうしろって言うのさ……。
“わろたwww”
“宇宙船に乗ってワープとかw”
“俺たちは何を見せられているんだい?”
“亜光速で移動したらもう地球に帰って来られないぞ?”
“カエデ艦長!”
“メープルちゃんw”
“新しいマンガの宣伝か”
これって新しいメープルちゃんのシリーズの宣伝だったりするの? ゲームもオリジナルっぽいのにめちゃくちゃ作りがしっかりしているし、悪ふざけで作ったにしては手が込み過ぎている……。
ところでプログラマーのルーナちゃんはどこへ行ったのかな?
さっきから会話にも参加してこないし。
『わたしならここにいるよ~』
うわっ、ボクの脳内に潜伏していたわ……。
『リアルタイムでゲーム作っているし、ちょっと忙しいんだ~』
マジですか……。
まあ、ちょっとおかしいとは思ったんだよね。
用意していたシナリオをプレイしているわりには、NPCの受け答えが自然すぎたし……。ナギチのキャラとか、あれは全部ルーナちゃんが動かしていたんでしょ?
『渚ちゃんのデータはまだちゃんと取り切れていないから、最近のデータから作ったプログラムだけど自然に感じた? それなら良かった♡』
一瞬触れ合っただけでは気づけないほど自然でしたよ。
『わ~い♡ じゃあ、宇宙編も楽しんでいってね~♡』
いや、これってまだ続くの⁉




