第111話 マキカエレイ特別配信 その11~『セクシー・チィタマ・ビーム』を使ってください
山小屋に入ると、想像していたような日本家屋の内装ではなかった。
「なんていうか……近未来感がすごい……」
正面の壁が巨大なスクリーンになっていて、そこに映し出されているのは、なぜか宇宙空間だった。あ、流れ星。
(そちらの艦長席にお座りください)
「この豪華なリクライニングシートみたいなやつ? すごいな……」
恐る恐る腰を下ろすと、沈み込むような柔らかさ。そのまま背中を預けると、まるで体全体が包み込まれるような一体感……一体感……⁉
「ちょっ! さすがにこれは柔らかすぎ! 身動きが取れないんだけど!」
リクライニングシートに全身を抱かれるような格好で、もがいてみても体が自由に動かせなくなっていた。
【あ~、カエデ選手! これはいけない。ミミックにつかまってしまったようだ!】
「ミミック⁉ 宝箱に擬態したモンスターのやつ⁉ えっ、これミミックなの⁉」
だってレイが、「そこにお座りください」って⁉
(サポートキャラの言うことをうのみにするとこういうこともあるのです。ゲームは遊びではありません。もっと緊張感をもって行動してください。死にますよ)
理不尽過ぎない⁉
サポートキャラが罠にかけてくるゲームとか、聞いたことないんですけど⁉
“ぽつんと1つだけイスがあったら見るからに怪しいだろw”
“そもそもこの部屋を見た時点でダッシュで逃げろw”
“部屋自体が罠だなw”
“ナギサの待機部屋と考えればギャラクシーで自然なのでは”
“それはあるwww”
“気づかなかったwお前天才かw”
“ほな罠とは違うか~”
“ミミックにつかまっている時点で罠だからw”
【カエデ絶体絶命の大ピンチ! このままミミックに食われてドロドロに溶かされてしまうのか~⁉】
そう言われましても……底なし沼にはまったみたいに何もなす術なしなんですよ⁉
(かえでくん、今です)
今度は何よ……。
(『セクシー・チィタマ・ビーム』を使ってください)
なにそれ? そんな技があるの?
(あります。とびっきりセクシーなスキルですので、取り扱いには注意してください)
じゃあやめておこうかな……。
今すでにビキニ着せられているし、これ以上セクシーなのは困る……。
(そうなると、このままゲームオーバーになりますがよろしいですか?)
よろしくはない……。
(では『セクシー・チィタマ・ビーム』を使ってください)
ううーん。
マキが突然立ち上がり、実況用のカメラに接近。
【セクシ~~~~~~~! マキマキ~~ビ~~~~~~~~~ム!】
大絶叫し、激しく胸を揺らしながらカメラの前で回り始めた。
「そういうのやめなさいって……。清純派女優がそういうことするとファンいなくなるよ?」
“ファンになりました!”
“姐さん一生ついていきます!”
“さすが姐さん!”
“元からファンだが?”
“女優にNGはないのだよ”
“よ!大女優!”
“グラビアまだ?”
“楓もこれくらいあればなw”
“さすがだぜ”
“マキちゃんかわいい”
“ファンです!”
「おかしいでしょ……。誰か1人くらいはがっかりしろよ……」
バラエティータレントじゃなくて、若手女優だよ?
【マキちゃんにNGはないのだ! 事務所に止められているから、まだ脱いだりはしないけどね~】
まだ。
いずれ脱ぐ気があるのか……。女優って怖い……。
(そろそろHPが半分になりましたが、まきさんと遊んでいて大丈夫ですか?)
「ぜんぜん大丈夫じゃない! うわうわ、ホントにこのままだと死ぬ! やるしかないのか⁉」
ちなみに、その『セクシー・チィタマ・ビーム』を使うとどんな感じになるのか教えて?
(あまりのセクシーさに周囲が爆発します。セクシーなかえでくん大勝利です)
よし、まったく意味がわからない!
でもそれを使えばボクが死ぬことはない……?
(はい、間違いなくミミックを破壊できます)
わかった。
じゃあ、行くしかないな……。
「セクシーーーーーーーーーチィタマァァァァビーーーーーーム!」
……ふむ? 何も起きないね。これはいったいどういうことなのかな……?
【これはどういうことだぁ? カエデの『セクシー・チィタマ・ビーム』がまさかの不発! この間にもどんどん体が溶かされて、HPが減って行っているぞ~! カエデ大大大大ピ~~~~~~ンチ!】
「ちょっとレイ⁉ どういうことなの⁉ ぜんぜん爆発しないじゃん!」
(おそらくですが、感情がこもっていないのが問題なのではないでしょうか?)
感情……?
(セクシーな気持ちがたりていないのだと思います)
セクシーな気持ちって何……?
(それはまさるさんにきいてください)
まさるさんって誰……?
(とにかく気持ちです。心をさらけ出し、心を全裸にして叫ばないと『セクシー・チィタマ・ビーム』を体得することはできないでしょう)
心を全裸? 何なのその比喩表現……。
(あの時に気持ちを思い出してください)
あの時の気持ち……?
(いつもお風呂でわたしの胸をす――)
「セクシィィィィィィィィィィィィチィタマァァァァビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィムッッッッ!」
ミミックは爆散した。
危なかった……。
あと少しでボクのすべてが終わるところだった……。




