第108話 マキカエレイ特別配信 その8~激烈に滑っているカエデをみんなでスクショしよう!
やっと草原フィールドを抜けられた……。
どれだけゴブリン出てくるんだよ……。
【またもや『チィタマ・クロー・スラッシュ』が決まった~! カエデ、ゴブリンだけを倒し続けて最強になるのか~⁉】
なれるかー!
もうゴブリン100体くらい倒したけれど、レベルが10からぜんぜん上がらなくなったわ! たぶんボクのレベル的にゴブリンが弱すぎて、経験値的にまずいんでしょ。知らんけど。
(かえでくん、見てください。あちらに山小屋が見えます。あそこに向かって最初のセーブをしましょう)
「おお、セーブポイントがあるんだ? 助かる助かる」
ここまでがんばってゴブリンを倒したわけだし、やり直しはしたくないもんね。
【水車が回っていて、風情ある日本家屋ですな~。まるで山姥でも住んでいそうな気配が!】
「マキ……めったなことを言うもんじゃないよ……。そういうのってフラグになるんだからね」
ゴブリン100体の次は、山姥と戦闘なんて嫌すぎる……。
(かえでくん、山小屋に入る前にセーブをしましょう。セーブのポーズをおねがいします)
セーブのポーズ……?
(好きなポージングをして、そのまま10秒間静止してください)
セーブってそういうのだっけ?
ああ、『セーブ中は電源を抜かないでください』みたいなこと?
OK、わかりました。
んー、でもセーブのポーズって何?
何も思いつかない……。
適当で良いや。
「セーーーーーーーブ!」
【お~っと? カエデ、セーブのポーズだ! でもそれは、野球の審判が『セーフ』の時にやるポーズ……まさかのダジャレか~⁉ これ以上ないほどに滑っているぞ~! 激烈に滑っているカエデをみんなでスクショしよう!】
うっせ!
ほかに思いつかなかったんだから良いでしょ!……でもセーブ中だから動けない。
“めっちゃウケるw”
“全力でセーフw”
“だんだん顔から首筋まで赤くなってくるの最高じゃんw”
“効いてる効いてるwww”
“羞恥のポーズ?”
“セーーーーーーーフ!”
“本域でワロタwww”
“100000000枚スクショしましたw”
(かえでくん、ファンサービスおつかれさまでした。もうそのはずかしいポーズを解いても大丈夫です)
「恥ずかしいポーズって言わないで! それで、ここまでの冒険はちゃんとセーブできたの?」
まさかのセーブポーズやり損になったら困る。
(冒険のセーブ……とは?)
「いや、だから……セーブ……でしょ?」
(人生は死んだら終わりのデスゲームです。何をセーブするんですか? 常に全力で行きましょう)
「そういう名言っぽいのは……ゲームのセーブを……」
(わたしの心の中には、かえでくんの活躍の様子をしっかりとセーブしました)
これは……セーブとかないパターンだな……。ポーズを取らされただけか……。
(さあ、山小屋に入りましょう。サポートキャラとしてのアドバイスですが、他人の家に入る時には、きちんとノックして家主の了解を得たほうが良いですよ)
はい……家主……。
これ、やっぱり山姥的な何かと対決する流れなんですね……。
緊張するなあ。
「うわっ、戦闘BGMっぽいのに切り替わった⁉ ゴブリンの時にもこんなのなかったのに!」
ボスなの⁉ ボス戦なの⁉
【あ、ごめ~ん。スマホの着信音鳴っちゃった♡】
「マキ……わざとでしょ」
知っているからね。
マキの着信音って、レイから買い取ったボクのボイスが設定されているでしょ。着信の時に、そんな恐ろし気な戦闘BGMっぽいのが流れるわけないんだよね。
【あ~もしもし? しもしも~? そう、わたし。大女優の十文字真紀ちゃん。その株買いね。1兆円ほど追加でしくよろ~。バイチャ♪ 配信中に商談の電話が来ちゃった~。ごめんごめんご~めんごろにゃん♪】
うざー。
今時、電話で株の買い付けって……。
“さすがマキ姉さん、ぱないっす!”
“また儲かってしまったか”
“そろそろ会社を買い取れるな”
“カエデに特大のダイヤの指輪でプロポーズ”
“大女優はすごい!”
“その株買いだ!”
“人生で一度は言ってみたいセリフトップ10入りw”
“俺も買いたい”
“株式会社楓”
“ありそうwww”
「おまえら……なんでマキには甘いんだよ……」
マキにしては相当に出来の悪い三文芝居じゃん……。
(かえでくん、早く山小屋を訪問してください。中の人が待ちくたびれています)
あー、はいはい。戦闘ね……。
めっちゃ日本家屋なのに、呼び鈴がデジタルっぽいインターフォンなの冷める……。訪問客を確認できるようにカメラがついているしなあ。
ピンポーン。
「ごめんくださーい。誰かいますかー?」
声を掛けつつ距離を取って、戦闘態勢へ!
負けないぞ、山姥!
と、勢いよく引き戸が開く。
現れたのは――。
「チョリ~ッス♪ マ? 客? こんな田舎にあざまる水産営業中~♪」
山姥……ヤマンバギャルナギチ……。
もう帰って良いですか?




