第102話 マキカエレイ特別配信 その2~恋は盲目ってやつよ、ね?
「そうそう~、今ってさ~、この辺りにすっごい台風来ているんだよね~。関東上陸中? 南のほうに住んでいる人はもう晴れていたりするのかにゃ? はい、台風情報報告タイム! 住んでいる地域と今どんな天気か報告して~。チャットに書いて良いのは市と区までだにゃ。住所の詳細はダメ~」
セクハラだなんだと抗議をするタイミングを失うほど、マキがあっさりと配信の主導権を握って行く。配信歴で言えばベテランもベテラン。ボクたちが叶う相手ではないから仕方ない、か……。
「そっかそっか。まだ中部の辺りは台風圏内だよね~。四国は晴れている? でも海は荒れていると思うからまだ気をつけるにゃ。北のほうはこれからだぞ~。日本縦断コースだから、青森のほうまで震えて待て! 北海道勢は逸れるように祈れ!」
マキはすごいな。
ここに集まっているのは、いつものマキのファンってわけでもないだろうに、普通にコメント欄の人たちと会話している。今はなんだろう。ラジオパーソナリティーか何かのペルソナをかぶっているのかな?
「そうそう、台風と言えばさ~。わたしが小学生くらいの時だったかな。おじいちゃんがまだ元気で、今日みたいに台風が上陸した時に『マキ、公園を見に行くぞ』って、雨合羽を渡されてね~。近所のちょっと大きめの公園に2人で手を繋いで出かけていったんだよ。傘もささずにね~」
急に台風の思い出話が始まった!
「その公園には小さめの池があるんだけど、釣りは禁止だけどザリガニがとれるくらいの小っちゃくて浅い池ね。めっちゃくちゃ氾濫していてすっごいの。こ~んなおっきなコイがさ、陸に打ちあがってピチピチしちゃっていて『やばいやばいやばい!』ってなって、おじいちゃんと一緒に池に戻してあげたんだけど、すっごい暴れるからさ、足がずるっと行っちゃって、池の中にドボン、よ。せっかく合羽着たのにビチョビチョだし、長靴の中まで完全に濡れちゃって。台風って最高だよね~」
言うほど最高かな……?
「その時助けていただいたコイです。こちらの麩菓子をどうぞ」
レイが乗っかって行った⁉
「おーおー。あの時のお前か~。そういえばどことなく目の色に面影がある気がするな~。台風が収まった後もなんとなく池を見に行ったら元気にしていたもんね。麩菓子をあげると口をパクパクさせて……って麩菓子は砂糖がついているから池に撒いたらダメだからね! 環境汚染はいけないぞ!」
ノリツッコミ……なのか微妙だけど、環境に配慮した常識的なツッコミだ。
ちゃんと管理している公園だったりすると、あげて良いエサが決まっていたりするもんね。
「失礼しました。一斤1000円の高級食パンをどうぞ」
「高い高い。どうせコイなんだから味なんてわからないし98円ので良いよ」
いや、もう何の話?
このコントのオチはどこに着地させるつもりなの?
「恋は盲目ってやつよ、ね?」
こっち見てくるな。
何を急に助けを求めてきているのさ。レイと謎のコントをしていれば良いじゃない。
「ね、じゃないが……。魚の鯉と恋愛の恋をかけているつもり? ぜんぜんうまくないんだけど……」
味と目でなにもかかっていないし。
“ええやん”
“ドラマのセリフみたい”
“女優が言うとなんでもかっこいい”
“美人過ぎる”
“恋に落ちました”
“池だけに”
“それは違うw”
“恋と鯉”
“マキちゃんかわいい”
“画面映える~”
「いや……コメント欄の流れ、ずるくない? 美人だったら何をしても許されるわけじゃないんだぞ……」
入りは良かったのに、レイが引っ掻き回したせいで着地で大事故を起こしているじゃんか! みんな甘やかしすぎ! マキなんて甘やかすとロクなことないよ!
「どうしよ~。マキちゃんって美人なのかな? え~、ぜんぜん気づかなかった~♡ もしかして、みんなのことを虜にしちゃった? ダメよ。わたしには心に決めたカエデっていう人がいるんだから~♡」
「大事故にボクを巻き込まないでください……」
“カエデ、またお前かw”
“ハーレム属性発動”
“前々から怪しいとは思っていたんだ”
“50回目くらいのプロポーズだけどなw”
“101回目までがんばれ”
“レイちゃんが一瞬真顔になった瞬間がたまらなく愛おしい”
“楓、そこ代われ”
盛り上がるな、コメント欄。
レイ……真顔になったくらいで止まってくれて助かるよ……。今日はレイが自重してくれないと、わりと底冷えするような展開にもなりかねないからね……。
「さて、それではそろそろゲーム配信のコーナーに参りましょう。セッティングが完了しました。テレビの画面を配信場にも共有します」
恋の件は完全無視で強引にゲームコーナーに……。
またその流れがコメント欄の燃料になって……お前ら、何でも楽しめて良い性格しているな……。




