第101話 マキカエレイ特別配信 その1~まだ昼間の配信なので、もうちょっとアクセル緩めで……
配信スタート。
「はいどうもー、≪初夏≫のマネージャーの七瀬楓です。みなさんお久しぶりです」
固定の配信カメラに映っているのは、ボク1人だけ。
ガチで会社の寮のリビングで配信をしております。今は3人掛けのソファの真ん中に浅く座っていますよ。
「というわけでね、急に30分ほど前に告知しただけで、いきなり≪初夏≫公式チャンネルの生配信を始めたわけですけど、おーおー、なんか徐々に人が集まってきてくれているね。ありがとうありがとう」
“おっす?”
“あれ?ゲリラ雷雨?”
“楓だけ?”
“何か緊急告知か?”
“台風配信?”
“台風で暇なのか”
“そのわりには衣装着ちゃって気合入ってるじゃんw”
“メイクしていると別人だなw”
“今日はのっぺりしていない。陰影がある”
うるせー。
メイクをしたってのっぺり顔だわ!
「ああ、今日はね、≪初夏≫のメンバーはいないんですよ。みんなレッスン中ですからね。それは告知にも書いたよね。ボクとレイが配信をするんだけど、今回はスペシャルなシークレットゲストをお招きして、緩い雑談配信をしようってことになりまして……」
チラチラ。
そろそろレイさん入ってきてくれませんかね? ボク1人だと絵が映えないと言いますか、地味すぎてみんな接続を切ってしまうと思うんですよ……。
「こんにちは、仙川零です」
レイが横にスライドするように配信に入ってきて、ボクの隣に座った。
「今日はこの通り、わたしとかえでくんの愛の巣からお届けしていきます」
“レイちゃんだ”
“今日もかわいい”
“愛の巣⁉”
“スタジオじゃない、だと……”
“ここがかえでの部屋……特定しました”
“おそろいの衣装じゃん”
“2nd懐かしい”
“もう10年くらい前だな”
“さりげなく腕組んでいるの推せる”
“やっぱレイカエが優勝だな”
“レイちゃん定期公演良かったよ~”
「さすがだわー。レイの人気はすごいね。そうだよ、ここはボクたちの部屋です。ボクとレイは会社の寮の同部屋だからね。住所もそりゃ特定はできるでしょうよ。普通にホームページに出ているから」
本社ビルだし。まあ私有地だから部外者は近づけないと思いますけどね。
ん、マキがめっちゃ混ざりたそうにして……何ですか、そのポーズは? 早く紹介しろって? はいはい、今その流れに乗せますから待ってくださいよ、と。
「というわけでね、みなさんなんで突然生配信なんて始めたのか気になっていると思うんですが、今日はホントに大して何にもないんですよね。しいていえばね、今日のシークレットゲストがですね、どうしても配信をしたいと駄々をこねまして……」
「今朝、台風の中、突然ずぶ濡れの状態で来訪されました」
「ホント迷惑な話だよね。常識的に考えて、朝の4時に遊びに来る? いや、4時とか、まだ朝でもないし。夜中?」
“4時笑うw”
“非常識すぎてwww”
“そんなことするゲスト1人しか知らんわw”
“もはや準レギュラーじゃね”
“乱入と言えばこの人、みたいなw”
“なんでわざわざ台風の日にきたしw”
“世の中には4時に寝る人もいるんですよ!”
“それは生活サイクル直せ”
“夜勤だよ”
“それはサーセン”
「ま、察しの良い人はすでにゲストに心当たりがありそうだね。たぶん想像している人だとは思うよ。シークレットなんて大層なことを言いましたが、いつものあの人です。今日のゲストに登場してもらいましょう!」
場は温めたよ!
さあ、入ってきて!
「みなさま、おはようございます。こんにちは。トリニティプロモーションの十文字真紀でございます。みなさまにおかれましては、ご機嫌いかがでしょうか?」
マキはフレームインしてから優雅な所作で頭を下げると、レイとは反対側――ボクを挟み込むようにしてソファに座った。
いや……入り方がおかしい。
“やっぱりマキちゃんw”
“ひさしぶり~”
“この間の舞台最高でした!”
“テレビ出てたね”
“人気シリーズの犯人役で出てたね”
“今日は番宣?”
“まてまて、初夏の衣装着ているのにツッコめw”
“女優モード”
“本物は違うな~”
「みんな困惑してるじゃん。女優モードとか言われてるよ? そのテンションはなんなの?」
「あらやだ。わたしはいつもと同じですわ」
「まきさんはいつもおきれいですし、おしとやかです」
「いや……いつもではない……」
きれいだし、おしとやかな一面があるのは認めよう。
でも、それもマキの演技の1つであると。家でノーメイクの時は髪ボサボサだし、喪女感すごいからさ。
「そのおしとやかな役でこの後ずっと配信をするの? ゲーム配信するのにそのキャラで盛り上がるかな?」
“ゲーム配信?”
“雑談じゃないのか”
“何のゲーム?FPS?”
“そりゃ部屋の中でリアルサバゲーだろ”
“ペイント弾で壁を塗ろうずw”
「ではどんなキャラクターがお好みですか?」
まつげをバサバサするんじゃない。
マキのこのモードの時って、ウーミーとはまた違うセクシー路線なんだよねえ。やっぱり大人の色気がにじみ出ている、みたいな?
「まきさんらしさといえば、お酒を飲んで軟体動物のように絡んでくる時のキャラクターなどいかがでしょうか?」
「それはちょっと……まだ昼間の配信なので、もうちょっとアクセル緩めで……バラエティー番組くらいのノリが良いんじゃないかな? ていうか、ついさっきまでのテンション?」
素のマキって言って良いのかはわからない。
あれが素なのかはボクにはわからないけれど、等身大のマキって感じはするあの状態が好きかな。
「OK~。2人がそれで良いなら、お酒を飲んでいない時のバラエティー番組モードでいっちゃいましょ~」
と、マキの姿勢が一気に崩れる。
足を開いてソファの背もたれに寄りかかり……堂々とボクの太ももを撫で回して――。
「それはやりすぎ。もうちょっとおしとやか寄りで!」
「注文が多いにゃ~。ケチケチしないでちょっとくらい触らせるにゃ」
口を尖らせて抗議してくる。
いや、わかっていますか?
今生配信中で、すでに5万人くらいの人が見ていらっしゃるんですよね。他社のマネージャーにセクハラする図が絶賛拡散中なんですが、大人気女優さん的には平気ですかね?




