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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第十四章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 -25~ #11編

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第90話 ホラーが苦手なほうが良い演技ができるんだよ?

「ちょっとさ、マキに折り入って相談があるんだけど……」


 寝室の床に正座してマキの顔をじっと見る。

 まじめな話、明日から海外に行ってしばらく会えなくなっちゃうなら、今日訊いておかないと後悔するかもしれない。


「カエデがマキちゃんのことを頼るってことは~、ずばり、メイメイちゃんのことだね?」


 マキは腕を組み、眉間にしわを寄せて、うんうんと頷く。

 当たっているけれど、なぜ難しい顔を……?


「さすがの洞察力だね。まあ、そうだよ。大女優十文字真紀様に、メイメイのことでアドバイスがほしいなって思っています!」


「よし、話を聴こうじゃないか!」


 マキはベッドの上にお尻からダイブ。そのまま胡坐をかいてから太ももをパチンと叩いた。

 えーと、ここからだと丸見えなので、下に何か穿いてくださいます……?


「どうしたのかにゃ? 真面目な話をするのかと思ったんだけど……気になっちゃう感じ? ん~、視線が……エッチ♡」


 いや、自分でちょっとずつ捲っていっているでしょ!


「アイドルはそんないやらしい下着はつけませんからね! 下にアンスコかスパッツを穿いて!」


 見たいわけじゃないけれど、そんなにわざと捲ったり戻したりされたら目が追っちゃうでしょ! 反射反応だよ!


「でもな~、マキちゃんはみんなのアイドルじゃなくて、カエデだけのアイドルだしな~。カエデが喜ぶ格好をするべきだと思うんだよね~? チラチラ♡」


「普通に気になるからミニスカで胡坐をかくのもやめてください!」


「そうだね。せっかくの衣装にしわがついたら困るから、スカートは脱いでおこうかな~」


 解決方法が斜め上!

 ほぼ紐のやつが丸見えになっちゃうからもっとダメッ!


「わかりました。マキさんの熟女な色気が、かえでくんの目に毒のようですね。いったんかえでくんの目をつぶしておきましょう」


 そのエグイ形のナイフ、どこから取り出したの⁉


「待って待って! 暫定処置みたいに目を潰されたら困るから!」


 レイさん猟奇的過ぎます!

 絶対なんかのアニメか映画の影響でしょ! 誰だ、レイにホラー作品を見せたのは!


「さつきさんからおすすめされたので読みました。『キミのシンゾウをタベタイ』という作品です。少しずつ好きな人の一部を体内に取り込んでいく愛の物語でした。爪や髪の毛を剥いで食べるところから始まって、最後に心臓を――」


「怖い怖い怖い! ボクがホラー苦手なの知っているでしょ! そういう話はやめてよね!」


 想像しただけでもう鳥肌が!

 今日は眠れないかも……。まだ朝で良かった……。


「カエデはまだホラーが怖いのかにゃ?」


「そりゃ怖いよ……。そんなの急に大丈夫になるわけないでしょ……」


 あんまり克服する気もないし。

 見なくて良いなら一生見たくないし、近寄りたくないよ!


「そうやって自分の可能性に蓋をしちゃうと、女優として大成できないぞ?」


「いや、ボクはマネージャーで……なんでもないです。はい、すみません……」


 これを言うとマキが怒るんだった……。

 舞台に上がれば、カメラの前に立てば、自分がマネージャーか役者かなんて関係ない。演技のために観客の前に立ったなら、ただ1人の人間なんだ。


 マネージャーだから適当に演技して良い。

 そんなことあるわけはないんだよね。


「でもホラーはやっぱり……」


「カエデ。ホラーは苦手なほうが良い演技ができるんだよ?」


「恐怖の演技にリアリティが増すってこと?」


「というか、演技全般かな~」


「演技全般? ホラー作品に出演する時の演技ってことではなくて?」


 もっと広い話なのかな?


「恐怖っていうのはね、喜怒哀楽を超えた表現だと思うんだ~」


 喜怒哀楽を超えた?

 どういう意味なんだろう。


「恐怖と喜び、恐怖と怒り、恐怖と哀れみ、恐怖と楽しみ。恐怖は感情を超えた心の叫びなのかなってね」


 マキの言いたいことがわかるような……わからないような……。


「たとえばさ、お化け屋敷に行った時って驚かされるじゃない?」


「そうだね。いろんなお化けや音なんかで怖がらせてくる……」


 苦手。

 メイメイのロケの事前チェックじゃなかったら、お化け屋敷なんて入りたくない……。


「『怖い!』って思った後に、理不尽に驚かされたことに対して怒りを覚えたり、次はどんなギミックで驚かされるのかワクワクしたりするじゃない?」


「怒りは……まあわかる。ワクワクはしないかな……。もう帰りたい、しか思わない……」


 目をつぶって走り抜けたい。


「まあね、最初はそれで良いと思うよ。自分と重ねて自分の感情を増幅させて演技するのがわかりやすいし、伝わりやすいからね~。でも、次は別のペルソナを被った時にどうなるかを考えてみるとまた新たな世界が広がるかもよ?」


 別の人格ペルソナか。

 役者って本来そういうものだもんね。与えられた役によっては、男にだって女にだってならないといけない。それこそ恐怖を喜びに感じるキャラクターになることもある、か。


「待って……。ボクの話は良いんだよ! メイメイのことを相談したいんだってば!」


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