第56話 新垣春&水沼渚~生誕祭2025☆カエデ好き放題スペシャル~ その1~今日はアイドルソング縛りよ☆
「会場ってステージじゃん……」
連れてこられたのはまさかのメインステージの上だった。
普通パーティー会場って言ったら、レストランとかなんじゃないの?
「歌うぞ~☆」
ナギチ、ゴールデンに輝くマイクを……なんで両手持ちなの?
「カエデちゃんも一緒に歌おうね~♡」
ハルル、いきなり肩を組んでくるんじゃないよ。
まだちょっと2人のテンションについていけてないからね? ずっと楽しみにしていた(?)2人と違って、ボクはたった今ここに連れてこられたところだから、面食らっているのが8割。正直迷惑だなってのが2割の気持ちだからね。
「今日はアイドルソング縛りよ☆」
あー、≪初夏≫の曲を歌うわけじゃなくて、ほかのアイドルの? カラオケ大会ってことなのかな? 巨大スクリーン降りてきたわ。
『れでぃ~すあ~んど……がーるずらば~ず』
レイさん、それは違くない?
ジェントルマンがいないからってガールズラバーは絶対違う。たぶんそれは……ハルルだけ。
って、またレイさんが影ナレを? あれならこっちに来て一緒に歌ったら良いじゃない。別にお客さんいないんだから。
『かえでくん、しずかにしてください。こういうのは雰囲気が大切なんです』
「そうですかー」
心の声にツッコんできて、うるさいって言われてもなあ。レイはカラオケ好きだし、一緒に歌いたいんじゃないかと思って提案しただけなのになあ。
『本日はお足元の悪い中、お集まりいただきありがとうございます』
あ、外は雨なの?
本社ビルを出てくるときは……アイマスクしていたから天気わからないや。まだ梅雨明けしていないし、暑くても雨が降ることもあるか。
『これから「24時間耐久? 新垣春&水沼渚~生誕祭2025☆カエデ好き放題スペシャル~」が始まります。お時間の許す限り最後までお楽しみいただければさいわいです』
「いえ~い♪ いえいえいえ~い♪ カエデちゃん好き放題~♡」
「どんどんパフパフ~☆ 宇宙のかなたまで飛んでいくぞ~☆」
大盛り上がりのハルルとナギチ。
「さすがにちょっと待とうか……」
とりあえずマイクを置いて一旦落ち着こう?
好き放題云々はもうこの際目をつぶるとしてだ……24時間耐久って何⁉
『これから「24時間耐久? 新垣春&水沼渚~生誕祭2025☆カエデ好き放題スペシャル~」が始まります。お時間の許す限り最後までお楽しみいただければさいわいです。なお、最大24時間までの延長が可能です』
「なんで2回言った⁉ 24時間に24時間延長したら大変なことになっちゃうでしょ!」
「カエデちゃん、48時間よ♡」
「わかっとるわ! 24+24の計算ができなかったわけじゃないからね!」
「はいはいわかってま~す♡ カエデちゃんかわいいね~♡」
何そのウザがらみ……酔っぱらっているの?
『最初の出し物は、大カラオケ大会です。遠隔地にいるオーケストラのみなさんが、デンモクでリクエストした曲を演奏してくださいますのでおたのしみに』
「それはカラオケじゃないよ……」
空オーケストラじゃないじゃん。生オーケストラじゃん。
あのさ、この生誕祭にいくらかけてるのよ? これ、ファン向けに配信もしていないんだよね? 収益性0だよね? なんでこんな無駄遣いしてるの……。
『かえでくん。乙女の誕生日を祝うのに無駄なことは1つもありませんよ』
何か正論っぽいことを言われた……。
いや、まあ言いたいことはわかるんだけどさ、それにしても生オーケストラとかヤバいでしょ。
『大丈夫です。AIプログラムの有志のみなさんによる演奏ですから、全員ボランティアでお金はかかっていません』
なるほどね……?
ボクの弟妹たちが演奏を……。
だから遠隔なんだね。
んー、そうなるとオーケストラを演奏してくれるけれど、イコール観客でもあるってことなのかな。まあ、彼らならネット上に情報をばらまいたりはしないし、別に観客として入っていても良いわけか。ホントに良いのかな? まあ良いか。もうあんまり深く考えるのはやめておこう……。どうせこのあとも無茶苦茶な出し物が続くんだろうし……。
『おたのしみに』
ボクだけ楽しくないやつですよね? 知ってます……。
もう帰りたい……。
『さっそくはるさんとかえでくんによるデュエット曲がリクエストされました。曲名は――』
なるほど、往年のアイドルの……。




