第33話 1番わからないのはボクの存在だ
「ボクたちマネージャー陣――≪ペンタグラム≫の中に【狼】がいるか。ボクはイエスだと思っている」
誰なのか見当がついているかって?
まあ、それはさすがにね……。
「簡単すぎるよね。うん……ボクを除く4人全員が【狼】だよ」
都も、シオも、ウタも、レイも、まあ、全員わかりやすすぎて、逆に違う意味で騙されているのかと思うくらいだよね。さすがに、これ以上何を騙されることがあるのかとは思うけれど。
「でも、あくまで主犯の【狼】がいて、みんなはその手足のように動いているだけだから、それはまあ、そういうものなんじゃないかなって思う」
主犯の【狼】が何らかの目的のために≪The Beginning of Summer≫プロジェクトを立ち上げたわけだけど、それをスムーズに動かすためにはたくさんの手足が必要だった。そのほうが効率が良かったからなのか、それともアイドル5人に対してマネージャー5人が必須だったのかはわからない。でももしそうなら、ボクも【狼】側だってことになるね。まあボクはその活動目的について何も聞かされていないけれどね。
「まあ、一旦ボクがどんな役割なのかは置いておくとして、だ。ほかのメンバーの役割がわかったところで、ボクに何かができるわけでもないよね」
ボクには【狼】たちを吊る力もなければ、そうするメリットもない。
それぞれが、主犯の【狼】から指示を受けて行動しているってだけで、表の目的として見れば、向いている方向は一緒だからね。≪初夏≫を盛り上げようとしていることに違いはないんだもの。
「わからないのは主犯の【狼】の真の目的だよ。最近でこそ、少しずつ≪初夏≫のCDやグッズが売れ始まっているから、多少収益が上がるようにはなってきているものの、素人目に見ても、≪初夏≫に対して初期から投資し続けている巨額の資金回収に目途が立っているとはとても思えないからね」
アイドルといったら、本来主な収益源となるはずのライブはチケット販売せず、無料配信を繰り返すばかり。たまにやる公式チャンネルの配信で投げられるギフトなんてタカが知れているからね。
CDにもオンライン個別トーク会の参加券がつくくらいで、ファンの財布から根こそぎ回収してやろう、みたいな気概は感じられない。
メンバー個別の仕事だって、それぞれの給料分を稼げているのかと言われると……ギリギリ、外部で固定の仕事を持っているウーミーとナギチくらいはいけているのかな?
「≪The Beginning of Summer≫プロジェクトはずっと赤字続きで、この後どでかいTVCMの仕事なんかが入ってこない限りは、たぶんこれからもずっと赤字なんだよね。専用ドームまで作っちゃったりしているし、この先の黒字化は限りなく不可能に近い。おそらくこのプロジェクトは収益回収が目的ではないってことは推測できるね」
じゃあ目的は何なんだろうね?
慈善事業?
それとも、メイメイやハルルの育ての親として、親バカ振りを発揮しているだけ?
いやいや、さすがにそれにしてはやりすぎだと思う。
もしホントにそうなのだとしても、それならそれで、それぞれ個人名義で活動させるなり、2人でユニットを組ませるなりすれば、もっと小回りが効くやり方があるだろうね。
5人グループで活動する必要はないし、そこに5人もマネージャーをつける必要も感じられない。この5人という人数に意味があるのかないのか、何もわかっていないけれど、最も気になるのはそこではないかな。
「何もわからないんだけど、1番わからないのはボクの存在だ」
主犯の【狼】がメイメイのことを特別視しているのはわかる。
それはもう確実だろう。
だけど、じゃあなぜ、そのマネージャーがボクなんだ?
七瀬マネージャーが有能な人だったから、その記憶を受け継いだAIプログラムを調教して、さらに有能なマネージャーを作ろうって? もしそうなら、考え方がぶっ飛びすぎている。ダブルウェーブ事務所はアイドルを扱って長い事務所だし、普通に花さんみたいにベテランで有能なマネージャーはたくさんいるわけだし。記憶も不完全で経験もないボクのような人物を、特別視しているアイドルの傍に置く合理性がない。
「ボクがなぜ生まれたのか。その答えがわかれば、このプロジェクトの謎や真の目的はすべてわかる気がしているんだ」
でも今は、まだそこに辿り着くために必要な鍵がそろっていない気がする。
だけど、そこに至るためには最初から順を追って情報を集めていく必要があると思うんだ。
まず1つ目の重要な要素として知っておきたいこと――。
「伝説のアイドル・秋月美月はなぜ人気絶頂の時にその姿を消したのか。そして、その娘・夏目早月はどのような経緯で産まれたのか」
ボクという人物はこの2人に深くかかわり過ぎている。
この2人の素性を知ることこそが、ボクを知ることにつながるはずなんだ。




