第30話 楓、真実に近づく?
後日、ボクと≪BiAG≫のみなさんのデートの様子がダイジェスト版の動画になり、≪初夏≫の公式チャンネルから配信された。
笑いあり、涙ありの良い感じで編集されていたり……捏造されていたりして、けっこうな再生数になったりしたわけですが……。
いや、なんていうかさ、半分くらい捏造だよね? ボクのセリフとか、ほとんどあとから差し込んでるよね? 絶対こんなこと言ってないし。誰だよ、このイケメン風のヤツ……。
と、シオにクレームを入れたら「うちは編集に関わってへんで?」とのお返事。≪初夏≫の動画ではないから、担当ではないんだってさ。
じゃあ「誰が編集したの?」って確認したら、なんとプロデューサーの麻里さんが自ら手を動かして編集したっていうんだから驚きですよね。こんなキラキラな映像を作っている時間があるほど、教授って暇なの?
映像がそのまま使われていたのは、ノノ&イッキの『高級焼肉デート編』とリミリミ&ササチカの『三角関係ケーキ屋デート編』くらいで。でも、三角関係になんてなってないからね?
トモちゃん&サキちゃんの『朋月神社デート編』は、サキちゃんの神楽がメインになっていて、トモちゃんのガチ恋製造機話は全面カットされていたしなあ。あの話は事務所的にはNGなのかな。
ユエユエとの『ダンス対決デート編』は、もう音声どころか、会話のシーンは全面カット。『Only God knows.~その運命は誰が決めたのか』のプロモーションビデオみたいになっていたなあ。
ラストシーン、ビル前でお別れのシーンも、ほぼほぼセリフは捏造だった。
なんでそんなふうに当たり障りのない感じにしたのかは……麻里さんに訊かないとわからないけれど、なんとなく教えてくれなそうな気がする。
『でもいつか……私に気づいて……』
ユエユエが残した言葉が気になって仕方がない。
ずっとその意味を考えている。
ユエユエは何に気づいてほしかったんだろう。
『私の歌で、すべての人を笑顔にする』
ユエユエは最後に自分のことも笑顔にすることができた……と思う。
つまり目的を達成したわけだから、きっともう……。
でもそうか、まだ七瀬マネージャーとの話題が残っていたか。
あからさまに心残りがありそうだったね。
『抱いて』なんて直接的な言葉を使っていたけれど、それはやっぱりそういうことを求めるような――愛しているってことなんだろうなあ。でも裏を返せば、ユエユエと七瀬マネージャーはそういう男女の関係ではなかったってことなんだろうね。雰囲気的にはユエユエが一方的にアプローチしている感じだったし?
≪BiAG≫のほかのメンバーに訊ければ良かったんだけど……ああ、でも、最初にボクとメイメイが恋人関係なんじゃないかーって話題の時に、マネージャーとの恋愛について、含みのある言い方をしている人はいなかったように思えるから、ユエユエと七瀬マネージャーが裏でこっそり付き合っている、なんてこともなさそうかな。となるとやっぱりユエユエの片想いか。
なんかすごいな……。
同じグループのメンバーからも別格だと思われているユエユエが好きな相手がボク……の元となった人物。彼はそんなに魅力的な男性だったのだろうか。
でもほかの6人からは、そんな雰囲気は感じなかった。
めっちゃイケメンでみんなが色めき立って、グループ内で取り合いが、みたいなことはなかったんだろうね。それならもうちょっとギスギスしていそうだもん。
そういえば≪BiAG≫のみなさんのベースとなっている記憶は、最後の武道館ライブの直前の状態だったよね。
つまりこの時にはもう、七瀬マネージャーはナイフで刺されて療養中のはず。実質的にはマネージャーの立場から降りている状態なんだよね。定期公演#9の時には、≪初夏≫の中からマネージャーを引き抜こうとしていたし、おそらく七瀬マネージャーが抜けた後の穴は埋まっていないんだろうな。
正式なマネージャーがいない状態で武道館ライブかあ。
『たとえすべてを投げ打ってでも、あなたがほしい。他にはもう何もいらないの』
ユエユエがアイドルを続けられなかった理由は、七瀬マネージャーが不在だったからなんだろうね。
七瀬マネージャーは、ステージ上で暴漢に襲われたユエユエをかばってナイフで刺された。その予後が良くなかったんだろうなあ。しばらく療養してもマネージャーとして復帰することが叶いそうもなかった。そのことを知ったユエユエは、おそらくその後も長期間にわたり療養を続けるであろう七瀬マネージャーの傍にいたかった。
アイドルという立場を捨ててでも。
ちょっと待って。
計算上だと、ユエユエがメイメイのことを身ごもったのは、武道館ライブの前後……。
あれ……。
まさかメイメイの父親って……。
そう、なのか……!?




