第20話 【非公式】七瀬楓誕生祭2025 その4~ところでシャンパンはどこかしら?
しかし、口に出したら問題になる研究って何なのさ……。
やっぱり非合法なのかな。
そもそもボクの存在って合法なの?
AIに人権……は認められていないだろうから、合法も非合法もないのかな。そもそもそういう範疇の外にいるというか。
いや……でも、実際に人間の脳データをコピーして移植しているんだから一部は人だよね。とすると非合法か……。
『かえでくんはとてもかわいいので正義です。正義とは合法のことなので問題ないです』
何その理論……。
あれ? 今なんかとんでもないことに気づいたかもしれない。
ボクってさ、お給料もらっているじゃない?
『無駄遣いしてしまうと困るので、かえでくんの通帳は師匠が預かっています』
うん……。
麻里さんから渡されているのは、現金のお小遣い1万円と電子マネーのお小遣い1万円。 計2万円が1カ月に自由になるお金……。
そうじゃなくてさ。
給与明細も発行されているじゃない?
『法律で義務付けられていますから』
そう、その法律ってやつ!
ボクってさ、健康保険とか厚生年金とかいろいろ税金が引かれているんだよね。
日本戸籍……ないんだよね?
『かえでくんはかわいいので、かわいい税が取られているだけです』
明細に所得税とか住民税とかってのも書かれていますけど?
『次のなぎささんがいらっしゃったようですよ』
あ、ちょっとごまかさないで!
ボクの払っている税金はいったいどこに⁉
「カ~エ~ちゃん♡」
ちょっとレイー!
教えてくれないと困るよー!
「カ~エ~ちゃん? 難しい顔してどうしたの~?」
「あ、ナギチ? おはよう?」
なんかいつもと雰囲気違うね?
「え~、カエちゃんのエッチ~♡ そんなにこのドレスが気になるの~?」
「いや別に……なんかすっごい大胆な服だなって……」
ナギチが身につけているのは、カクテルドレスというヤツだろうか。
メンカラーの水色のワンピースドレス。すっごい薄い生地で作られているようで体のシルエットが浮き出るような……ちょっと背伸びしすぎでは?
「カエちゃんの誕生日パーティーにお呼ばれしちゃったから、ドレスできめてみました~♡」
そういえば、昨年もドレス着ていたっけ? もしかしてボクの誕生日にだけドレスを着る習慣が?
「お呼ばれね。誰が呼んだんだろうね? ボクも呼び出されたほうなんだけど」
仕掛け人はルーナのようなそうじゃないような。
まあ5人が順番に出てくるのをここで待っていれば良いって形式は、去年と同じなのかな。
「ところでシャンパンはどこかしら?」
「オレンジジュースしかないよ。紙コップで良い?」
「よろしくてよ」
ナギチのそれ、何キャラ?
「おいしいわ。ビンテージもの? 何年のオレンジかしら」
「フレッシュジュースって書いてあるから、たぶん2024年かな……」
「もう1杯いただけます?」
「はいはい、どうぞ……」
え、これ何?
ナギチの思う誕生日パーティーってこういう感じなのかな?
「ところでカエちゃん……カエデさんはご趣味などあるのかしら?」
「そのキャラ苦しくない? あと、趣味を訊くのはお見合いか合コンだと思うから、たぶん誕生日パーティーとは違う……」
「私の趣味はお菓子作りですのよ」
「ぜんぜんボクの話を聞いてないな……。しかしナギチのお菓子作りは趣味の域を超えてるでしょ。資格あるし」
「資格があっても就業していなければ趣味と言っても良いと思うのですわのよ?」
「ですわのよって……。就業ねえ。お役所の定義みたい」
「ところで私の趣味であるところのお菓子作りの一環として、バースデーケーキを焼いてきましたの。お食べになりますことなのですわよ?」
おおー。ナギチのケーキ!
「食べたいですわのよ? でもどこにあるの?」
見た感じ手ぶらですよね。
ドレスだし、荷物を持っているようには見えない。
「お願いしますですわのよ」
パンパンと手を2回鳴らす。
すると――。
「かしこまりました~♡」
ルーナの声、ですね。
「しゃららら~ん♪」
巨大なケーキの箱……の上に乗って飛んでくるルーナ。
それはもういろいろダメだよ。
物理法則とか、そういうのは順守しようよ?
ルーナもケーキも空飛んじゃダメ。
それやっちゃうと、「あれ? これは夢かな?」って頬っぺたつねりたくなっちゃうし。……痛い。よし、現実だね。なおのこと悪い!
「おまたせしました~。ケーキ一丁!」
「ルーナちゃん、それは豆腐の数え方だからね」
「さっき味見してみたらとってもおいしかったから期待して♡」
味見しただけのヤツがドヤ顔で肩をポンポンすな。
「ホールケーキを味見したらダメだと思うよ……」
せっかくナギチが作ってくれたのに、すでに食べかけになってしまったのか……。端っこあたりが削られているのかな。
「いざ、オープン! カエちゃんお誕生日おめでとう♡」
箱から出てきたのは、真っ白真ん丸なショートケーキだ。イチゴがいっぱい乗っていておいしそう! 真ん丸だしどこも欠けているところはないね。味見だなんて、またからかわれたかあ。
「あれ? ない!」
ケーキを見たナギチが急に挙動不審になる。
「何が? お皿とフォークなら、一応こっちにお菓子用があるから大丈夫だよ」
紙皿だけど良いよね?
「違うの! チョコレートのプレートが!『カエちゃんお誕生日おめでとう』ってホワイチョコで文字を書いたのに!」
確かにそんなプレートは見当たらな……まさか……。
「ごちそうさまでした♡」
「鬼か! まだイチゴをつまみ食いのほうがかわいげがあるわ!」
名前入りのプレートをガッツリ食べるってどういうことよ。
今にも泣きそうなナギチに謝って。
「うっそ~♡ 食べるわけじゃな~い」
笑いながら取り出したのは――。
「これ~! チョコのプレート! ルーナちゃん、脅かさないでよ~。これでよし、と。あ~良かった~」
ルーナから無事取り返したチョコレートプレートを1番上に乗せて、無事バースデーケーキが完成した、のかな?
「会議室だからロウソク禁止なの。電気を消して歌だけで許してね」
そうだね。煙を出したら火災報知器がなっちゃうからね。
「ハッピバースデートゥーユー♪」
ナギチの伸びやかな歌声が会議室に響き渡る。
「ハッピバースデートゥーユー♡」
えっ、ルーナちゃんも一緒に歌うの⁉ 今はナギチのターンじゃ?
「「ハッピバースデーディア・カエデ~」」
何その手招き……いや、ボクも一緒に歌えって? さすがに自分のバースデーソングを歌う人はいな……わかったってば……。
「「「ハッピバースデートゥーユゥゥ~♪」」」
まさかの3人でバースデーソングをハモるとは……。
まあこれはこれでおもしろいからいっか!
ケーキうまっ!




