第17話 【非公式】七瀬楓誕生祭2025 その1~おかしいな。今日が1月7日のはずはない……
「かえでくん。かえでくん」
もう食べられないよ……。
「かえでくん、起きてください」
んむにゃ……お餅は18個までって……レイ?
「かえでくん。お誕生日おめでとうございます」
んみゅ……たんじょうび?
「今日はかえでくんの誕生日ですよ」
んん……誕生日……ん? もうとっくに過ぎたような……?
枕元にある目覚まし時計を叩いて、ライトをつける……。
「0時……」
レイさん……真夜中じゃないですか。なんならさっき寝たばかりで……。
「日付が変わりましたから、すぐにお祝いをしたくて」
「ありがとう。でも、もうちょっと寝かせて……。それとお腹の上に乗られるとちょっと苦しい……」
お祝いしてくれるのはうれしいんだけど、深夜に馬乗りになって……あれ? どこかでこんなやり取りをしたことがあるような……?
「明日は盛大に誕生パーティーしましょうね」
「そういうのははずかしいし普通でいいよ……」
でもボクの誕生日は何日か前にもう過ぎた気がしていて……。
* * *
朝起きると隣にレイの姿はなく、枕元には一通の封筒が置かれていた。
「レイ? おーい? レイさーん?」
中を確認すると、2つ折りのカードが入っていた。
リボンやビーズのデコレーションがキラキラしていてかわいい。
装飾を傷つけないように、カードの端っこから開いてみる。
オルゴールのバースデーソングが流れてきた。
『Happy Birthday! 会場はこちら』
どうやら誕生日会の招待状になっていて……なんだか既視感が?
でも今日って何日だっけ?
1月12日? 13日?
ボクの誕生日は1月7日なんだけどな……。
枕元にあった端末の画面で日付を確認する。
「あれ……1月7日だ……。どういうこと?」
おかしいな。
今日が1月7日のはずはない……。
数日前にレイに誕生日は祝ってもらったはずなのに……。
みんな仕事で出払っていて2人きりの誕生日会。
ちょっと淋しかったけれど、ショートケーキとコーヒーで祝ってもらった誕生日会……あれは夢……?
「とにかく会場に行ってみようか」
その前に、一応テレビをつけて日付を確認。
やっぱり1月7日か……。
誕生日を祝ってほしすぎて、ボクの脳がバグったのかな?
不思議だ……。
* * *
恐る恐る誕生日会の会場に指定されていた会議室のドアを開ける。
「楓さん、お誕生日おめでとうございますですわ!」
ウーミーによる熱烈歓迎が待ち構えていた。
ハルルのベアハッグばりに背中までがっちりホールドされる。力は1/1000くらいだけどね。まあウーミーの力で背骨が折れることはなくて……胸の弾力がめっちゃ伝わってくる! いや、これわざと押しつけてきてるでしょ⁉
「あああありがとう⁉ ウーミーさん? ちょっと1回離れようか!」
まだ状況が飲み込めないでいるのに、バインバインに飲み込まれるわけにはいかない!
「イヤですわ!」
まさかの拒否。
「ちょっとちょっと⁉ あひぃ⁉」
耳たぶ噛まないで!
それ弱いんだってば!
「楓さん……好き……」
耳元で囁かないで!
ガチのマジの本域のやつじゃん!
「わかった! わかったから! どうどう! 落ち着いて⁉」
この間の初詣の時に告白されて以来、まともに顔を合わせるのは今日が初めて……。
あの時はナギチ、ハルル、ウタもいたから抑え気味だったということなのか。
つまりこれがウーミーの本気?
「今なら誰も見ていませんわ! さあ!」
何が「さあ!」なのか……。
いや、ナチュラルに服を脱がそうとしてこないで……。
レイがいなかったから、適当にTシャツ・ショートパンツにカーディガンを羽織っただけのラフなスタイルだし、これ脱いだらすぐ裸になっちゃうからやめて?
「わたくしが先に脱げばよろしいですの?」
「……よろしくはないと思うんですの……」
どうしよう。
このバーサーカー(ウーミー)には言葉が通じない。
「誰か助けてー」
レイー!
なんかバーサーカーに襲われてまーす。
うれしいけれど、このまま流されちゃいけないような気がしているので、何とか助けてもらえませんかー?
ダメだ。
無反応。
レイってたまにこういう時あるよね。
頼んでない時はガッツリ監視しているのに、助けてほしい時にはスルー。
んー、あんまり頼みたくないけど……。
ルーナちゃーん!
どこかで見ているんだったらこっちに出てきてよー。
今出てくれば、バーサクモードのウーミーにいたずらし放題だよー!
こっちもダメか。
え、この空間、何か特殊な結界でも張られてるの?
そんなわけないか。
「楓さん!」
「は、はい!」
「キス……よろしいですか?」
目が血走っている……。
いよいよ万事休すか……。
ピピピピピピ。
会議室の角のほうからタイマーの音が聞こえてくる。
「はい、海ちゃんの番終了ね~! 審査結果は後ほど発表しま~す」
ウーミーの背後からぬるりと現れたのはルーナだ。
「ルーナちゃん……。やっぱりいたんじゃん……。審査結果って何?」
絶対何か良からぬことを企んでいるよね。
またボクに内緒で良からぬことを……。
「いいのいいの~♡ 楓ちゃんは主役なんだから楽しんでね♡」
主役……。
今日はボクの誕生日(?)らしい?
そしてここは誕生日会の会場……。
これはボクの誕生日会の出し物的な何かってことなのかな。




