第4話 パジャマパーティー in スイートルーム(1)
「ええー、この部屋だけめっちゃ豪華じゃないですか⁉」
食事を終え、ボク、レイ、シオはパジャマ姿で麻里さんの部屋に集合していた。花子はボクの部屋ですでに就寝中だ。
「ボクたちの部屋はビジネスホテルの1室みたいな感じなのに、ここだけホテルのスイートルームみたい……」
まず部屋全体の広さがボクたちの部屋の10倍くらいはありそう。
そもそも何部屋あるの? あ、ここってもしかして、部屋に温泉引いている? ボクたちの部屋にはユニットバスしかないのに……。
うわー、寝室にはベッドがいっぱいだ。キングサイズが1つ。それを丸く囲むようにダブルのベッドが1、2、3個も並んでいるし。
「何目的の部屋なんですかここ……」
純粋な寝室として作られたなら、設計者の頭がおかしいと思う。
どう考えても寝室じゃないな。
寝転がりながら会議でもする用なの?
「こんなこともあろうかと、だろ。パジャマパーティーをするならそれぞれベッドが必要じゃないか」
「パジャマパーティー用の部屋ですか……。まさにピンポイントで今日のためにあるような……でも次に使うのはいつなんですかね……」
「何を言っているんだ? さっき風呂と食事をしている間に、ロボたちにベッドを運び込ませただけだよ」
「さすが師匠です」
なんだ、わざわざ用意してくれたんですね。
頭がおかしいとか思ってすみませんでした。
「うち、このベッドいただきや~」
シオが扉から一番遠いダブルベッドに向かってダイブする。
「あ、ずるい。こういうのはジャンケンで決めるんじゃ」
「わたしとかえでくんは、そちらのキングサイズのベッドをいただきます」
「零ならそう言うと思っていたよ」
いや、それだとベッドの数がね。
それぞれ1個ずつのベッドにしましょうよ。
「ありがとうございます」
「もちろんダメだぞ。この中で1番偉いのは私だ。つまり私がもっとも高いベッドを使う権利がある」
「師匠のケチ」
まあ、麻里さんは普通に当たり前のことをおっしゃっているんですけど、それをあえて主張するのって……ちょっとかっこ悪いですね。麻里さんってば、シングルサイズでも十分な体のサイズをしているのに。
「師匠がケチなので、ここのダブルベッドに一緒に寝ましょうか」
「いや、せっかく人数分用意してくれているんだから、それぞれ1つずつベッドを使おうよ……」
シオがずっとニヤニヤしてこっち見てくるのが気持ち悪いし……。
と、ボクは寝室の入り口に一番近いベッドに腰を下ろした。
「じゃあさっそく話を聞きましょうかね」
「そうだな、どこまで話したか……」
麻里さんがベッドの上で胡坐をかく。
シオはゴロンと横になり、レイは正座をして麻里さんの話に耳を傾けている。
ボクは立ち上がって飲み物を飲んだりしているよ。
ピンポーン。
部屋の呼び鈴が鳴る。
「え、誰か来た? ルームサービスか何かですか?」
「そのようなものだ。すまないが楓、出てくれないか」
寝室のドアのすぐそばに立っていたボクが指名される。
「はいはい、いってきます」
ルームサービスなんて別にいらないのに……。もうお腹いっぱいだしなあ。
部屋の入り口のロックを外して、ドアを開ける。
≪ご注文の品をお持ちしました≫
自動走行のロボットが部屋の外で待機していた。レストランや朝食ビュッフェのところで見かけるのと同タイプのロボットだ。
ロボットの顔の部分が液晶画面になっていて、今は笑顔の絵文字が映し出されていた。ちょっとかわいいな。
「ど、どうもー?」
ロボットが運んできたのはわりと大きめのカート?
こんなにいっぱい何を注文したんですか?
≪こちらに受け取りの認証をお願いいたします≫
ロボットの顔(液晶画面)に指紋認証用のパネルが表示される。
ああ、ここを押せってことね。
「はい、これで大丈夫ですか?」
≪認証しました。またのご利用をお待ちしております≫
「ありがとうございました……」
ロボットの顔(液晶画面)が目を閉じた笑顔に変わると、ゆっくりとどこかに走り去ってしまった。
残されたのは大きなカートだ。中には長方形の箱が鎮座していた。なんでサイドの壁がメッシュ構造になの?
えっと、このカートごと部屋に運べってことだよね。
こういうのって中身だけ置いていってくれるんじゃないんだ。
部屋のドアのサイズギリギリ……何とか通った。壁紙をガリッとやらないように気をつけないと……。
「麻里さーん! なんか大きいのが届きましたけどー、これどうすればいいんですかー?」
部屋の中央までカートを運び、寝室に向かって呼びかける。
「そっちで開けてくれ。あとあまり大声を出すな」
理不尽な……。
わかりましたよ。開けますよ。
「あ、花子だ」
カートの中に入っていたのはベビーカーだった。
そのベビーカーの中で、花子が大の字になって寝ていた。
「荷物って花子だったんですね」
ベビーカーを押して寝室に入る。
「1人で寝かせておくのはかわいそうだろう。お前たちがこっちにいるんだ。一緒にここで寝たほうが良いと思ってな」
「まあたしかにそうですね。朝1人で目覚めたら淋しくて泣くでしょうからね。ありがとうございます」
麻里さんがこういうところまで気を回せるタイプの人だとは思わなかったよ。ちょっと意外だ。。
「礼には及ばんさ。世話を頼んでいるのは私だしな」
まあそれはそうなんですけど、ボクは花子のことを家族だと思って接していますから、別に押しつけられたとは思っていませんよ。
「はなこさんが起きてしまわないように、静かにお話しましょう。今日は枕投げは禁止ですよぅ」
レイが人差し指を口に当てて「シー」というポーズを作る。
「いや、このメンバーではさすがに……。枕投げとかはハルルがいないとやらなそう……」
なんとなくイメージで。
実際、前に洋酒入りのケーキで酔っぱらったハルルが大暴れした記憶が……
あの時は枕投げはしていないんだっけ? どうだったっけなあ。
「では全員揃ったところで話を始めようか」
お、いよいよか。
麻里さんがいったい何を隠しているのか話してもらいましょうか。




