第34話 定期公演#7 その7~海と詩のドキドキ♡ファッションショー(4)
『次のテーマは「混雑しているテーマパークでのデート中、気づいたら彼とはぐれちゃった⁉~人がいっぱいいても関係ないの。私だけを見て! 誰よりもかわいい私のことを真っ先に探し出してほしいコーデ~」です』
ハルルたちが舞台袖に戻ってスタンバイを始める中、最後のファッションショーがスタートする。
『再びうたさんの登場です。メンカラーの緑をベースにしたロングのサマーコートを翻し、軽やかにステップを踏みます。ですがこれはいったいどういうことでしょうか? 頭に巻き付けられているのは……豆電球でしょうか?』
うん、まぎれもなく豆電球だね。
なんでそんなものを頭に巻きつけているの? もし光をつけたら髪が燃えるんじゃない? 危ないよ?
『豆電球がいくつも連なって……さながらイルミネーションライトのようです。カメラさん、もっとアップで、配信をご覧の方にもよく見えるようにお願いします』
“豆電球ワロタ”
“さっきとのギャップw”
“急に仮想大賞始まったw”
“電気つけるの?”
“つける以外あるのか?”
“投げる?”
“投げてどうするw”
“コードを絡ませて彼とやらを捕まえる”
“それなら電球コードじゃなくてもいいだろw”
いやキミたちなんの話してるのさ。
割れたら危ないから豆電球のコードは投げちゃいけませんよ?
『この豆電球に光を灯して、彼に見つけてもらう作戦なのでしょうか? ですが周りのアトラクションは強い光を放つものばかり。豆電球程度の光量では太刀打ちできそうもありませんが……光りました! みなさん見てください! うたさんの頭に巻かれた豆電球たちが色とりどりに光っています!』
うわー、チカチカしている。
でもこれ何かどこかで見たことがあるような……?
『うたさんが両腕を広げました。なんとサマーコートの下にもたくさんの電飾が隠されていました! これはすごい。全身がチカチカと光っています。まるでクリスマスツリーです。ここに季節外れのクリスマスツリーが出現しました』
そうだ、これってクリスマスツリーだわ!
緑のコートがモミの木を表しているんだ。……なにこれ。ウタさんホントにふざけて仮想大賞を?
『あ~っと、今度はコートの下から2本のバトンが出てきました。こちらも電飾付きです。照明さん、会場のライトを落としてください。美しく光るバトンを器用にくるくると回して、まるで新体操の演目のようです。うたさん、美しいです。うたさん、輝いています。これなら彼とはぐれても一発で見つけてもらえるでしょう。むしろ、うたさんを待ち合わせ場所にするカップルも出てくるかもしれません。これでもう安心です。迷子からの卒業です』
最後にバトンを高々と投げ上げると、ロンダートからの側方宙返り、そして見事にキャッチ。完全に新体操だよ。うたさんってそういう特技もあったんですか?
すごいけど……いろいろとやりすぎでは……?
ああ、LEDライトだから熱くはないのね。それだけは良かった。
『続いてうみ先輩の登場です。うたさんとおそろいの緑のサマーコートを着ての登場です……が、頭に豆電球……は巻いていませんね』
そりゃそうでしょ。
レイは何を確認しているのさ。
『ですが頭に乗っているのは……ベレー帽でしょうか? 何か少し違う気がします。なんでしょうか。カメラさん、もう少しアップでお願いします』
なんだろう。
ドローンカメラがウーミーの頭に接近する。
あっ!
『これはターバンです。白いタオル地のターバンを頭に巻いています。インド人のコスプレでしょうか?』
“くお〜!ぶつかる〜!ここでアクセル全開!”
“インド人を右に!”
“インド人を右にw”
”あ、負けたw”
“ハッピーアイスクリーム!”
“お前らそれ好きだなw”
“すぐインド人を右に曲げるんだからw”
“ウーミーを右に”
”お、今ちょっと傾いたぞw”
それは気のせいだ。
配信には30秒のタイムラグがあるからね。
しかし何でターバン?
『おや? うみ先輩がサマーコートの下から何かを取り出しました。これは……ほら貝です。大きなほら貝を取り出しました』
ほら貝⁉ そのコートの下のどこに入ってたの⁉
「ぷぉ~~~ぷぉぷぉぷぉぷぉ~~~~~~」
『うみ先輩がモデルウォークをしながら、大きなほら貝を吹き始めました。見事です。見事な音色。合戦の合図でしょうか。これだけ見事な音色を奏でてほら貝を吹きながらウォーキングしているのに、体感がまったくブレません。これはすばらしい。恋の合戦でも負けなしでしょう』
すばらしい……のかな?
きれいな姿勢なのは認めるけど、ウーミーも完全に悪ふざけ……。さっきの天使コーデのウーミーはどこ行った⁉
『頭の上にご注目ください!……ターバンが持ち上がって……頭の上には大きなコブラが現れました。蛇使いです。ほら貝の音色でコブラを操っています。これはとても目立ちます。彼がほら貝の音色を聞きつけて近くまで来た時、頭の上に大きく立ち上がったコブラを見て、すぐにうみ先輩の姿を見つけることができるでしょう』
えー。ボクがその『彼』なら、すぐにその場を後にするね。
それでメッセを即ブロックするね。
ほら貝吹いてコブラを操っている人とはちょっとお付き合いする自信がない……。
「かえでくん」
ん、レイ?
今舞台上でDJをやっているんじゃ?
「早く舞台袖へお願いします」
「がぅ?」
なんでよ? ボクはこの控室を守るという大事な責務が。
「サプライズゲストの時間です」
え……MINAさんは?
「それは第1テーマの時のゲストですから」
2回目も頼みなよ……。ボクは嫌だって。最悪ウォーキングするのは良いとしても、あのコブラの後に出て行くのは絶対に嫌だって……。完全にインパクト負けするじゃん。
「ですが出演は決まっていることなので」
だったら先にオファーしておいてよ……。登場10秒前に知らされる身にもなってよ。着替えてもいないし。
「大丈夫です。かえでくんはその4thシングルの制服で登場するだけで世界の誰よりも輝いて見えますから」
それはレイの主観……。
まあもうほかに出る人がいないなら……ボクがまたオチをつければいいんでしょう? 絶対滑るからやだなあ。いっつもこんな役ばかりだよ……。でも、コメント欄も今度こそボクが出ると思って期待しているし、まあしかないかなあ。
って、あれ⁉ レイ、モニター見て!
誰かが舞台袖から出てきたよ⁉




