第33話 定期公演#7 その6~海と詩のドキドキ♡ファッションショー(3)
天使コーデのウーミーが舞台袖に捌けてからも、BGMがかかったままだった。
このコーナーはまだ続く?
ああ、その前に次のテーマ発表かな?
『続いてはサプライズゲストの登場です』
「がぅ?」
おお? サプライズゲスト?
会場がざわつく。
“カエデ?”
“カエデだなw”
“なんだカエデかw”
“カエデかー驚いたなーw”
“カエデ、カエデ!”
“カエデ早くー”
違うわ!
ボクはちゃんと控室にいるわ!
と、会場もコメント欄もざわつく中、舞台袖から姿を現したのは――。
『大人気モデルのMINAさんです。シンプルな紺のワンピースで登場です』
「MINAちゃんだ~! なんでいるの~? うれしい~!」
メイメイが驚き、そして喜びの声を上げる。
いや、MINAさん……ホントなんでいるの? みんなと一緒の車では来てないよね? わざわざ別便で? いつもながらに疑問なんだけど、なんでメンバーやマネージャーに対してまでサプライズするのさ。
『少し裏話をしますと、わたしのクラスメイトでもある大人気モデルのMINAさんですが、個人的にこっそりと出演のオファーをしてみたところ、2つ返事で受けてくださったという経緯があります。報酬はかえでくんの非売品ブロマイド10枚セットです。どうもありがとうございます』
会場からチラホラと笑い声が沸き起こる。
レイさん、何してくれてんの……。
“わかってるじゃんw”
“雑誌でよく見る人だ”
“朝西にも出てたな”
“同じ事務所か”
“バーター”
“報酬受け取ってるからバーターじゃないw”
“その報酬で良いのかw(良い)”
“歩き方が本物だわ”
“スタイル良すぎる”
“モデルウォークかっけ~”
“すげぇ。3人順番に出てくるとさすがに違いがはっきりわかる”
“プロってすごいのな……”
「いやちょっと……サプライズゲストは良いんだけど、勝手にそんなボクの写真を使われても……」
なんか一声相談してよ。
ボクだってMINAさんのクラスメイトなんだよ? クラスメイトのブロマイドを受け取ってアイドルのライブに出演しちゃうモデルもどうかと思うんですけどね……。
「がぅがぅ!」
花子はまだMINAさんとは会ったことないよね?
美人だけど気さくで良い人だから、きっとかわいがってもらえるよ。
って、そんなことよりすごい……。
MINAさんのウォーキングはやっぱりすごいよ……。
「また腕を上げましたね~。もう私じゃかなわないかもしれないです~」
メイメイさん、それは最初からですよ。
だってあなた、MINAさんにウォーキング教わってましたよね? 外仕事が制限されているせいかはわかりませんけど、残念ながらあんまりモデルの仕事はきませんね……。メイメイは写真だけじゃなくて動きもいけると思うんだけどなあ。
『シンプルだからこそ違いがわかります。頭から手足の先まですべて美しい。ただそこに存在するだけで良いのです。美しさとは正義。ほかに何もいらない。すべてを引き算したあとに残ったもの、それがモデルのMINA』
と、ここでステージ中央に差し掛かり、MINAさんのアピールタイム。
しっかりと立ち止まり、腰に手を当ててポーズ。BGMもそれに合わせてストップする。会場が静寂に包まれる中、MINAさんがその場で1回転ターンし、頬に手を当ててポーズ。
思わず息を飲む。
「すごい……」控室内の誰かからため息交じりの声が漏れ聞こえてくる。
再びBGMが再開され、MINAさんは舞台袖へ向かってウォーキングする。
『もはや言葉はいりません。今日この場に立ち会えたことにわたしは感謝をしたいと思います。MINAさん、ありがとうございます。存在してくださってありがとうございます』
レイの言葉からどれだけ興奮しているのが伝わってくる。
歩くだけで人を感動させられる。
ここまで来るのにどれだけの練習を重ねたのだろう。
プロだから当たり前。
そんなことはない。
努力は美しい。結果を出すのは美しい。仕事に誇りをもつのは美しい。
ありがとう。
最近あまり話ができていなかったけど、また甘いものでも一緒に食べに行きたいね。
『続いてのテーマ……なんともうMCコーナーの終了のお時間が近づいてきてしまったようです。次のテーマが最後になります』
えー、今来たばっかりー(定番)
まあこの演出も予定通りなんだろうけどね。本職のモデルじゃないから、ウーミーもウタもそんなにたくさん早着替えなんてできないだろうし。
『次のテーマは「混雑しているテーマパークでのデート。気づいたら彼とはぐれちゃった⁉~人がいっぱいいても関係ないの。私だけを見て! 誰よりもかわいい私のことを真っ先に見つけてほしいコーデ~」です』
ふむ?
目立つ服装ってことかな? さっきの天使と堕天使のままでも見つけてもらえそうな気はするけど。
「私たち、そろそろコーナー終わりに備えて舞台袖に戻るわね」
と、ハルル。
すでに次の衣装に着替え済みだ。
「うん、みんな後半戦もがんばって!」
「ギャラクシーばびゅーん☆」
「みっちゃん、がんばってください!」
サクにゃん、モニターを拝まないの。
よーし、少しの休憩時間だったけれど、みんな元気いっぱいだね。
残りのパートも最高の定期公演にしよう!




