第19話 恐怖! 巨大ウォータースライダーに挑む!
「そろそろウォータースライダーにいきましょうか」
足元以外まったく濡れていないレイが、涼しげな表情で言う。
一方ボクと花子は、見事に全身びしょ濡れ状態。本気で逃げ回り、放水のパワーで吹き飛ばされ、体力もけっこう消耗している……。
「ウォータースライダーかあ。このプールってそんなものまであるの? いったいどこに?」
見た感じ、それっぽい遊具は存在していない。
深いオリンピック用の50mプールと、その脇に今ボクたちがいる幼児用の浅いプール、そして25mの普通の人用(?)のプールだけだ。
「この階は競泳用のプール施設です。ウォータースライダーは上の階にあります」
まさかのプール2階建て!
一般公開していないっていうのにその豪華さはどうなの? 維持費とかどうなってるのさ……。
「水着のまま上に行ける通路がありますから、ついてきてください」
なんかすごいなあ。
花子、上の階にウォータースライダーがあるんだってさ! じゃあ一緒に滑るか!
* * *
「えー、これ、ホントにプライベートプールなの? 大規模な商業施設じゃなくて?」
上の階にあったのはウォータースライダーだけではなかった。
ウォータースライダーのほかに、巨大な流れるプール、水上アスレチックもある!
「なんか普通に遊園地っぽい……」
うぉ、流れるプールに突然大きな波が!
すごい仕掛けがあるなあ。
「こちらの浮き輪をお持ちください。はなこさんには念のためライフジャケットを装着してもらいます」
そうだね。花子は背が低いから、溺れたりしたら絶対足がつかないし、ライフジャケットをつけたほうがいい!
「がぅ?」
突然着せられたライフジャケットを不思議そうに見つめている。
「窮屈かな? でもそれがあれば絶対水に浮かぶから安心だよ。ちょっと水に入ってみな」
流れるプールの入り口のところに花子を下ろしてやる。
「がぅがぅがぅ!……がぅ?」
手を離した瞬間、パニックになり暴れる花子。
でも、自分の体が水に浮いていることに気づき、不思議そうにキョロキョロと視線を彷徨わせ始めた。
「かわいいな、もうー。そうだよ、それのおかげ。ライフジャケットのおかげで浮いてるの。便利でしょ」
「がぅ!」
ようやくライフジャケットの意味がわかったらしい。
足をバタバタさせて泳ぎ出した。
「最初は流れるプールで遊びましょうか」
「そうだね。ボクたちも浮き輪をつけて……あれ? レイは浮き輪使わないの?」
レイだけ手に何も持っていない。
「その浮き輪は2人用ですよ」
「えっ? この浮き輪、穴は1つしか開いてないけど?」
確かにサイズは大きいけど、大人1人用じゃない?
「かえでくんは子どもサイズですから、こうして2人で入れば……ちょうどいいです」
「お、おぅ……」
水着のレイに後ろから抱えられるかっこうに。
「お風呂と同じです。力を抜いて体を預けてください」
でもここはプールだし……。水着だし……。
「誰も見ていませんから大丈夫ですよぅ」
……そう?
レイのささやきに誘われて、背中に当たるふくらみを感じながら、遠慮がちに体を預けていく。
あとはプールの流れに身を任せ、レイの柔らかさと温かさに心奪われ、なんかもう夢見心地……。
うーん、しあわせだなあ。
「がぅ!」
「うぉ、花子!」
花子がボクたちの浮き輪に飛び乗ってきた。
「おっと、3人は狭いぞ⁉ なんだよー。プールの中でもボクの頭の上なの?」
「がぅがぅ!」
「はなこさんは甘えん坊ですね。誰に似たのでしょうか」
「だからボクが産んだわけじゃないからね⁉」
そしてボクが育てたわけでもないのに……。
「波がきます。気をつけてください」
「えっ?」
ゲホゲホ。
まともに正面から波を……。水飲んじゃったじゃん……。って、レイさん! 今ちょっとボクを盾にしましたね⁉
* * *
「そろそろそこの通路から上がって、ウォータースライダーにいきましょう」
「はーい」
やたらとウォータースライダーを推してくるな。
レイ自身がやりたいのかな?
「小学生以下の方は、保護者同伴でないと滑れませんから、一緒に行きましょう」
まあ、そうなるよね。
花子も一緒に3人で大丈夫かな?
あ、注意書きの絵的には大人1人子ども2人までなら良いみたい。
「この専用のゴムボートみたいなのに乗るの?」
「はい。シートベルトを締めて、左右の取っ手をしっかり握っていてください。わたしが後ろから抱えるように乗ります。はなこさんは一番小さいので真ん中に座ってくださいです」
なんかすごいな……。
ただの滑り台じゃないんだ?
「このプールで1番大きいウォータースライダーは、全長200mです。回転あり、約90度の急勾配ありと、迫力満点だそうです。楽しみですね」
「90度⁉ 直角じゃん! ボクたちゴムボートから投げ出されたりしない⁉ 花子、そんなシートベルトで大丈夫か⁉ しっかり締めないと!」
「がぅ……がぅ⁉」
このウォータースライダーって、マジで子どもが乗って良いやつ⁉
「さあ、出発します」
レイがゴムボートを蹴りだして……ウォータースライダーの旅が始まってしまった!
まだ覚悟が決まってないのにー!
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「が、がぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
はっ。
道がない!
崖から落ちて、内臓が浮く感覚。
ボクの意識はそこで途絶えた。




