第18話 プライベートプール銃撃戦
「え、深い! このプール深くない⁉ 足がぜんぜん届かないし怖い……」
小学生サイズ(たぶん130cmくらい?)に縮んだ身長を舐めていたよ。いや、別に17歳の時だって146cmしかないんだけどさ……。いや、それにしてもだよ……大人用のプールってこんなに深かったっけ?
「かえでくん、そこはオリンピック用のプールで水深3mあります」
「3m! ぜんぜん足がつかないし、おかしいと思ったんだよね。いやいや、オリンピック用って何さ……。ここ、プライベートプールでしょ……」
バカらしい! もっと浅いプールに行こう。
もう割り切って子ども用のプールでいいや……。
「これはさすがに浅いな……。今のボクでも膝までしかない」
「がぅがぅがぅ!」
花子はめっちゃ楽しそうだけど。
いや、レイさんもね。
え、ちょっと待って。その機関銃みたいな水鉄砲はどこから持ってきたの?
「かえでくん、はなこさん、かくご!」
レイ狙撃手による放水だ!
「きゃー、やめてー、殺されるー」
「がぅ!」
ボクと花子はプールの中を逃げ回る。
レイの容赦ない攻撃がボクたちに降り注ぐ。
「冷たくて気持ちいい! やっぱり夏はプールだなあ」
山も良いけど、プールも楽しい!
「とどめです」
そう言って、レイが機関銃を変形させて……ボクに向かって必殺の一撃を放つ。
「ぐぇー。ちょちょちょっと、痛いっ! マジで痛いって! タイムタイム!」
何その威力!
水圧がエグイ!
攻撃が長いし、めっちゃ痛いって!
「『誰でも消防士体験~ホントの火事も消化できちゃう優れもの~』です」
水鉄砲じゃないじゃん!
消火栓じゃん!
そんなの人に向けて撃っちゃいけませんって!
「レイだけ一方的に攻撃するのはずるいって! ボクと花子にも武器をちょうだいよ!」
必死の懇願に、レイが手を止めて、後ろのカバンをゴソゴソと漁り始めた。
少ししてから、レイが何かをこちらに向けて放り投げてくる。
「武器をどうぞ」
「いや、小っちゃ! 1mも飛ばない子ども用の水鉄砲じゃん!」
100均クオリティのハンドガンだ。
穴から水をくむタイプの。レイのは自動給水がついているのに⁉
「今のかえでくんは子どもサイズですからちょうどいいです。はなこさんもそれなら扱えるでしょう」
「戦力差がえぐいんですけど……」
「2対1なので、戦略でカバーしてください」
「無茶言わないでよ……」
「がぅ……」
10歳児と子グマでどう戦略的に戦えと……。
「第2回戦。スタートします」
レイがそう宣言して、ボクたちに向かって放水を始める。
「ヤバい! 花子、まずは2手に分かれてリスク分散だ!」
「がぅ!」
ボクが右、花子が左に分かれてレイを狙っていく。
「2人とも甘いです。トランスフォーム! 全方位殲滅モード!」
いやいやいや、おかしいおかしい!
消防要素一切なくなってるじゃん!
ミサイルみたいな水の塊が乱射されてくるんですけど⁉
「花子! 一時撤退!」
「がぅがぅ!」
これはレイに近づくのは簡単なことじゃないぞ……。
ボクたちの射程は最大で1mくらい。確実に当てるなら20cmくらいまで接近しないといけないのに……。
「どうする……。何か良い手はないか……」
どうにかして片方がレイの気を引いて、その隙にもう片方が接近するしかないよねえ。でも、2手に分かれたところで、さっきの全方位殲滅モードとやらの餌食になってしまう……。
「くっ、ボクがステルスモードとか、そういう気の利いた機能を備えていれば……」
役立たずだ。すまない……。
「がぅがぅ! がぅがぅ!」
突然、花子が大きな声で吠えながら立ち上がる。
どうした? 狩人という名の野性に目覚めたのか⁉
「がぅ!」
花子が大きく一歩前へ足を踏み出す。
――両手を上に高く掲げ……水鉄砲を放り投げた。
「がぅ……」
チラリとボクのほうに視線を送ってから、両手を上げたまま、花子がゆっくりとレイのほうに向かって歩き出す。
「花子……投降する、のか……」
でもさっきのあの目は、戦意喪失なんてしていなかった。
だったらなぜ、ここで投降という選択を?
はっ、まさか!
自分を囮にして、レイが捕虜を受け入れている間にボクに攻撃をしろってことか⁉
「がぅ……」
そうなんだな⁉
花子……体を張りやがって……なんて大胆な作戦を……。
わかった!
お前の気持ちは受け取ったぞ!
待ってろ、レイ!
「はなこさん、それは何のまねですか? 負けを認めたということですか?」
「がぅ……」
花子は歩みを止めない。
ゆっくりと一歩ずつレイに近づいていく。
もう少しだ……。もう少しでレイの目の前に……。レイが機関銃を下ろして受け入れ態勢に入ったら、全力ダッシュするぞ!
「はなこさん、止まりなさい。それ以上近づいたら撃ちます」
「がぅ……」
大丈夫。
あと少しだ。
「警告はしました。残念です」
機関銃を構え直したレイによる集中砲水。
全弾花子に命中。
「が……ぅ……」
花子(0)、凶弾に倒れる――。
「花子ーーーーーーー! 捕虜に向かって発砲するなんて! ジュネーブ条約はどうしたーーーーー!」
「はなこさんは人間ではないので、ジュネーブ条約は適用されません」
鬼! 悪魔!
花子ー! くそぅー! お前の死は無駄にしないぞー!
ボクは花子の形見のハンドガンも装備。二丁拳銃でレイに向かって猛ダッシュする。
バンザイ特攻じゃー!
七瀬楓(10)、幼児用プールにて散る。




