第15話 合宿終了~ボクの貞操の番人って何だよ……
「これで強化合宿全日程を終了する。全員お疲れ様」
「「「ありがとうございました!」」」
やっと終わった……。
肉体的な疲労はもちろんだけど、とくに精神的な疲労が激しい……。
「どうだ、楓。何かは掴めたか?」
麻里さんが声をかけてくれる。
今は鬼教官ではなく、やさしい保護者の顔だ。
「わかったようなわからないような……。でも、何が足りなくて何をがんばらなきゃいけないかはわかった気がします!」
まだ完璧には程遠いけど、実際の収録までにはもうちょっとレベルアップできる気がする。台本を読み込んで自分のものにするぞー!
「それなら良かった。とくに今日の中での成長ぶりは1番だったぞ。さすがわたしの楓だ」
そう言って麻里さんは背中を叩いてきた。
1番か。へへ……ちょっとうれしい。
「ひわっ⁉ ちょっ、なんで急にお尻を揉んだんですか⁉」
「我が子の成長ぶりを確かめてはダメか?」
「モニター計測してるんだから十分でしょ! 急にマキみたいなセクハラしないでください!」
「数値ではわからないこともある。たまには実測せんとな」
無茶苦茶な理論だ。
それを言ったら何をしても正当化されてしまう……。
「マキちゃんがなんだって~?」
「別になんでもないです……」
今は来なくていいです。
そっちで麗しの師弟愛を楽しんでいてくださいよ。
「カエデの成長ぶりを計測しているのかにゃ? マキちゃんも測っちゃうぞ~♡」
全部聞いてたんじゃん……。
いや、揉ませないよ⁉
いやらしい手つきで迫ってくるマキをかわして、ハルルの後ろに隠れる。
「マキがボクにセクハラしようとしてくるー。ハルルのゴリラパンチであいつをやっちゃって!」
「なるほど、そういうことですか……。マキさん……」
ハルルが大きく頷く。首の動きに合わせてポニーテールが激しく揺れ、真後ろにいたボクの顔に直撃。わぷっ。……シャンプーの香り。
「お、おお?」
にらみ合う2人。
いつぞやのプロレス対決再びか⁉
「順番ですよ?」
「もちろんにゃ♡」
えっ、どういう……ああっ⁉
ハルルが体を入れ替えて、するりとボクの背後に回る。そのまま羽交い絞めにされて――。
「ハルル! 裏切ったな⁉」
「カエデちゃん、ごめんね……。マキ師匠! お先にどうぞ!」
「感心感心♪ それではお先に失礼するにゃ♡」
マキの魔の手がボクの体に伸びてくる。
「ちょっと、ウソでしょ! ハルル放して! アッー!」
ダメだ! いくら抵抗しても、ハルルに手も足もがっちりとホールドされていて身動きが取れない! なんなのこの技⁉ プロレスなの⁉
「ひっ!」
首筋をひと舐め……。耳のニオイを嗅ぎながら、胸を揉むのはやめて!
「ほぅほぅ……。ちょっと目を離した隙にずいぶんと大人になりましたにゃ♡ これはもう収穫の時期が近いかにゃ?」
なんの収穫よ……。
服の下から手を入れるんじゃない! 手、冷たっ!
ハルルも見ているだけで興奮してるんじゃないよ! 鼻息がうるさいし、くすぐったいから!
「お前たちは本当に仲が良いな。これからも楓と仲良くしてやってくれ」
「かっしこまりました~! このマキちゃん、カエデと一生添い遂げることを誓います!」
誓うな誓うな。
「あ、ずるい! わたしも誓います!」
ハルルまでどさくさに紛れて何を言ってるのか。
「それなら安心だな。しかし、それは私の大切な楓だ。くれぐれも傷物にはしないでくれよ」
麻里さんまで……。
「カエデの貞操の番人とまで呼ばれたこのマキちゃんにお任せください! 悪い虫が寄ってこないように気をつけつつ、カエデの清き体を一生守り抜きます!」
ボクの貞操の番人って何だよ……。
初めて聞いた番人だわ。いや、一生守られても困……るのか、困らないのか……。ちょっとわからないけど、マキが1番危ない存在なのだけはわかるよ! おい、番人! ズボンの中に手を入れようとするな! お腹を撫でるんじゃない!
「よろしい。では撤収作業だ。機材を片づけ、食事をした後、下界に帰ろう」
「は~い!」
麻里さんの号令を受けて、マキがエロモードを瞬時に終了させる。
た、助かった……。
「あれ⁉ 私の番は⁉」
「一杯食わされたね……。さあ、撤収作業だから早く放してよ」
いつまでボクの手足をホールドしてるのさ。早く放して!
「私のカエデちゃん計測タイム……」
「そんなものはないっ!」
* * *
麻里さんの運転(全自動運転)でドームを後にする。
帰りの車の中では、マキだけ目隠し状態だ。これはまあ、かわいそうだけど、事務所が違うから仕方ないってことで。
目の見えないマキに、飲み物を飲ませたり、お菓子を食べさせたりするのはわりと楽しかったかな。
気づいたら、ボクたち3人とも寝ちゃっていて、麻里さんに起こされた時にはマキのマンションの前だったわけで。
「合宿に呼んでいただきありがとうございました!」
「こちらこそこの2人の相手をしてくれてありがとう。また頼む」
「じゃあまたね」
「マキ師匠、ありがとうございました!」
「がぅがぅ!」
別れを惜しみつつ、ボクたちは本社ビルへと帰るのだった。
花子の新生活も始まるね!
(かえでくん。合宿中はずいぶんとお楽しみだったようですね)
ひっ! レイさん⁉




