表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第十章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #7編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

444/730

第14話 ……愛するマキ様、ボクに台本の読み方を教えてください

「カット。カット10、チィタマのセリフ。もう一度。水道を見つけた時の喜びを表現してくれ」


「はい」


 難しい。

 超難しいよ……。


 だって絵がないんだもん。ぜんぜん動いてないんだもん。

 猫の落書きみたいなのに、吹き出しで「チィタマ セリフ」って書いてあるだけなんだよ?

 どうしたらいいの……。


「暑いニャン! そこの水道で水浴びするニャン」


「カット。それは怒りだ。暑さで怒りを覚える演技は抑えめに。喜びへの切り替えを誇張して」


「はい……」


「暑いニャン! そこの水道で……水浴びするニャン!」


「カット。喜びの気持ちをもうワントーンあげて」


「……はい」


「暑いニャン……。そこの! 水道で! 水浴びするニャン!」


「カット。秒数収まっていないぞ。溜めを作りすぎるな」


「暑いニャン! そこの水道で! 水浴びするニャン!」


「カット。雑になるな。砂漠でオアシスを見つけた。それくらいの感動を表してくれ」


「暑いニャン……。そこの水道で! 水浴びするニャン!」


「カット。ん~、まあいいだろう。一応もらっておく」


 一応って……。

 なんでマキもハルルもぜんぜんNGを出さないんだ……。ボクだけついていけていない……。


「少し休憩にしよう。水分補給を忘れるな」


 疲れた……。喉がカラカラ……。

 お水お水。


「はい、これ。カエデちゃんのお水」


「ありがと。あー、生き返る……」


 100回くらい同じセリフを言った気がする……。


「ぜんぜんうまく行かないよ……。どうしよう……」


「アフレコって難しいのね。演劇みたいにアドリブも入れづらいし」


 というわりには、ハルルはわりと余裕の表情だ。ひさしぶりにナズナを演じるはずなのになんでこんなにスムーズに入れているんだろう。


「ちょっと台本見せて。……うわ、何これ! 書き込みがすごい!」


 ナズナの気持ちを詳細に書き込んでいたり、原作の何話のシーンと同じと書いてあったり、ナズナの全部のセリフの付近にはびっしりと手書きのコメントが入っていた。


「前にマキさんに台本の読み方を教えてもらったの」


「ん、わたし? ああ、台本ね」


 少し離れて座っていたマキが近寄ってくる。

 マキの手元にある台本にも、ハルルに負けず劣らずびっしりと書き込みがされているのが見える。

 一方ボクの台本はきれいなまま……。


「ボクにも教えて……」


「ん~? なに?」


「……ボクにも台本の読み方教えて」


「んん~? チィタマちゃんの声が小さくて聞こえないぞ~?」


 マキがニヤニヤしながら、耳に手をかざして顔を近づけてくる。

 くっ……人が下手に出たら調子に……でもここは頭を下げて教わるしか……。


「台本の読み方を教えてください……」


「チィタマちゃんは~、誰に~、教わりたいのかにゃ~?」


「マキさんに……教わりたいです……」


「マキちゃんのこと愛してる?」


 ほっぺたをツンツン。

 期待に満ちた熱い視線が……。


「……愛するマキ様、ボクに台本の読み方を教えてください」


「いやん♡ 告白されちゃった♡ ハルちゃん、式場の予約をお願い!」


「絶対嫌です!」


「あ~、逆らうんだ? 師匠のマキ様に逆らっちゃうんだ?」


「それとこれとは別です! カエデちゃんはぜ~~~ったいに渡しません!」


「破門? 弟子破門になっちゃう?」


「ぐぬぬぬ……」


 にらみ合う2人。

 低レベルすぎてついていけない……でも、台本の読み方は教えてもらわないと……。


「今は台本の読み方を教えてください……」


 ボクにできることは頭を下げることしかない。


「まあ~、マキちゃん意地悪じゃないし~、カエデが将来を誓い合ってくれるって約束したし~、ここは特別に無料で教えて進ぜよう♡」


 将来は誓い合っていないけど……。


「おし! じゃあカエデはさ、セリフは台本の通りに読み上げればいいわけじゃないのはわかるよね?」


 おふざけモードから一転、声のトーンが変わる。


「それはわかるよ。映画の時にも……あっ」


「思い出した? そういうこと~。シーン全体の雰囲気、展開を頭に入れたうえで、各登場人物がどう立ち振る舞うのか、そのセリフを言う時に何を思っているのか。それらをしっかりとシミュレートすること。そしてそれを忘れないようにメモしておくってことが大事~」


 それでハルルのあの書き込みになるのかあ。

 

「なるほどね……。なんとなく頭に入れているつもりだったけど、ちゃんと文字にはしてなかった」


「本読みの段階――今はアニメのアフレコだけど、完璧に役を掴んでいない状態の時には、とくに文字にしておかないと、忘れちゃうこともあるからね。監督たちの指示によって演技の方向性の修正も必要だし」


「それを見ながら冷静にってことね……。あれ、そうなると、ハルルの台本に書いてある『マンガ1巻のなんとか』みたいなのはなんなの?」


 あれには何の意味があるの?

 と、ハルルが台本を開いてボクに見せてくる。


「これは私のオリジナルよ。原作からキャラクターが離れすぎないようにしたいの。スピンオフで崩れ過ぎないように、原作のあのシーンを思い出して~みたいな感じで」


「原作愛! わたしはそういうのすごく良いと思うにゃ!」


「マキ師匠! ありがとうございます!」


 美しい師弟愛だ……。

 まずい、ボクだけ置いていかれないようにがんばらなきゃ。さっき麻里さんに指摘されたところも含めて、早速台本に書き込もう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ