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vs御影第一(1回裏~)

そして攻守が交代し、扇原が素振りをしていると、ピッチャーが出てきた。そのピッチャーは……


満『久しぶりの先発だなぁ……何年ぶりだろう…』


飯島「…あの時の、魔のカーブの使い手か……!」


そう、満だ。満はとても楽しそうに投球練習を始めた。すると……


スパァン


ズバァン


飯島「っ……! あの時よりも、速い…?! 多分、あのストレートは143前後は出てそうだな……」


十五夜「あぁ……しかも色々球種を持ってるな…そういや、彼はオーバースローの選手じゃなかったのかい?」


飯島が満の投球を見てそのストレートの球速が以前TVで見てた時とは段違いに速くなってる事に気付き驚いていると、十五夜が近付いて問い掛けた。飯島は分からないと首を振って続けて答えた。


飯島「あのときは確かにオーバースローだったけど……今はサイドスローだな…まさか、両方の投げ方が出来るのか……?!」


満月「変わってるね」


飯島「あぁ……あの和泉ってのは下手したらとんでもない怪物投手に化けるかも知れないな…」


飯島が満月の言葉に頷いて答えると、満月は首を振って返した。


満月「……いや、この紅葉まんじゅうのレモン餡って変わってるね…って事」


満月の返しに飯島と十五夜はずっこけてしまった。


飯島「お前なぁ……!」


十五夜「飯島、そろそろ準備しとけ……;」


飯島「あ、あぁ……行ってくる」


飯島は満月の返しに呆れていると、十五夜が扇原がバッターボックスに向かったのを見て、飯島を促した。




和泉『さぁてと……初球はどうしようかなぁ…………?』


泉野『満の球は勇気の球と比べると重くないから飛びやすい。けど……』


満『了解!』


泉野の指示を見て、満は楽しげに頷いた。そして第1球……


ビシュッ


カキィン……


轟「オーライ!」


二塁審「アウト!」


泉野『満の本気の球は余程の事じゃ無いと…意図も容易く力なく上がるんだぜ……?』


扇原は初球の内角へのスライダーを打ったが……打った球はセカンドの轟の方へと力なく上がって……難なく捕球された。


飯島「っ?! ……今の、捉えてた筈じゃ……」


飯島は驚きを隠せずに居たが、両手で己の頬を軽く叩くとバッターボックスへと向かった。


満『二番はあのピッチャーかぁ……』



一方、雷鳴轟のベンチでは…監督と三吉が和泉の投球について話していた。


三吉「今の、打たれたと思ったのに……!」


等々力「流石は和泉やな……泉野のリードも的確やけど…何より凄いんは和泉のピッチングセンスや」


三吉「……そういや…アイツって、オーバースローの投手じゃないんですか?」


スパァン


等々力「確かに、アイツはオーバースローを得意としている。でもな……それはストレートやナックルカーブを投げる時や」


三吉「……と、言うと?」


スパァン!


等々力「アイツの本当の持ち味はオーバー、サイド、アンダー……どの構えからでも最適な投球が出来る所や。特にオーバーはストレートや落ちる球を投げる時。アンダーはブレ球や無回転を投げる時…ナックルはアンダーの時も投げるな。そんで……」


ギュウン!


カァァン……


満「オーライ……よっと!」


パスッ……


主審「……アウト!」


飯島「くっ……『今、尋常じゃない回転がかかってたぞ……!』」


満「いよおうっし!」


等々力「サイドスローは横に回転をかける時や、今みたいに超強力な回転をかける時に良くやるんや」


三吉「……すげぇ」


等々力「……アイツは、その特異的な投球を持ち味としてリトルリーグの頃はエースピッチャーとして泉野や友岡達を引っ張って行っていた。けど、その特異的な投球を妬む人や恐れる(もん)が和泉の投球を批判した」


スパァン


等々力「和泉からしてみりゃ、自分の投球を貫いてるだけや。でも、小学生の小さな心に嫉妬や妬み、批判の言葉の数々はキツく突き刺さった。それでアイツはピッチャーを辞めた」


三吉「そんな……!」


等々力「それから、アイツはファーストだった友岡とポジションを変え、バッティングに磨きを掛けた。そして、中学3年の時、儂は彼を雷鳴轟学園に呼んだ。その時、儂は雷鳴轟野球部のコーチをしていたんや。その時はピッチャーとしてではなく豪快さと精密さを兼ね備える打法を武器とするファーストとして、な」


シュウン……


等々力「最も、龍厳さんが監督になった時……龍厳さんは和泉を主砲に育て上げてたんやけどな。精密さを捨てさせて……ま、今回の練習試合でその精密打法がまだ使えるみたいってんが分かった訳し…うちのチームはまだまだ伸びるで」


三吉「……でも、監督は…なんでそんなことまで知ってるんですか?」


三吉の問い掛けに監督は少し黙った後、マウンドで楽しそうに微笑みながら投げている和泉の方を見ながら答えた。


等々力「……儂は、和泉とは少し遠いながらも親戚なんだよ」


三吉「……え?!」



スパァン!


十五夜「くうっ……今のスライダーは…高速スライダーか……?」


主審「ストライッ、バッターアウト! チェンジ!!」


満「うっし……ちょっと粘られたけど、何とか三振!」


泉野「それにしても…相変わらずのピッチングで安心したよ」


満「ヘヘッ…まぁ、これから完封して見せるさ。相手は火力は控えめなチームな様だし……ね」


満は笑顔のまま、十五夜を三振に打ち取った。満と泉野はベンチへと戻る際に互いに近付いてグローブで軽くハイタッチした。




しかし、飯島も負けていない。2回表に俊二をファーストゴロ、泉野を三振に抑え、満にツーベースヒットを打たれるも、続く片岡をライトフライに打ち取った。

その裏、満も満月をセンターフライに打ち取ると、続く橋枝と立石を三振に取った。

その後、6回まで互いに得点無いまま7回の表になった……その間、満は被安打2、四球1に押さえ、合計7奪三振と好投していた。



俊二「さて、そろそろ点が欲しいかな…僕らの安打が上手く点に噛み合ってないし……まぁ、和泉が今のところ完封してくれてるし…なんとかなるかな!」


7回の表……俊二がそう呟きつつも軽く微笑んでバッターボックスに立った。




カァァン!


飯島「ぐっ……」


俊二「よしっ!」


俊二はフルカウントから更に16球粘った後、若干甘く入ったストレートを打ち抜き、ライト前ヒットとなった。強肩である柘植の方まで飛んでいったためか、俊二は二塁へ進むことをあきらめた。


飯島「ふぅ……『それにしても、かなり打たれるな…火力と言うよりも……安打を狙われてる感じだが……しかも、打線が完封されてる……キツい、な…』」


飯島は少し腕で額の汗を拭って次なるバッターを見据え、次の投げる球を模索していた。泉野はそんな飯島を見て何やら考えていた。


泉野『あのピッチャー……少し疲れが出始めてる…この回での降板か次の回で後続が送られるかな……?』


泉野はキャッチャーであるが故か分からないが、大体のピッチャーの引き際を感じ取る事が出来る。しかし、それは突然ではなく、リトルの頃から……それも、少しずつより明確に感じ取れてきているのだ。


シュッ……


主審「……ボール」


飯島「っ……『くそ……ちょっと制球が乱れてきた…か』」


泉野『……今のはスライダーが若干内角側に出た…恐らく次は変化球がすっぽぬけるかそれを危惧してストレートを投げるか……どちらにせよ、次の球を打とう!』


泉野は一球見て次に来るであろう球を予想し打とうと考えていた。


飯島『……よし、分かった』


飯島は満月のサインを見て頷き、投げる…………が、しかし



カキィィィィン


飯島「なっ……?!『確かに敵の苦手なコースを突いたと思ったのに…!』」


泉野「悪いけど、そのストレートのインローは予想済みだったよ……苦手なコースなのは自覚してたからね。そこを集中的に特訓したから苦手じゃ無くなったんだよね……」


泉野の打球は弧を描いて伸びていき……フェンスに直撃した。


俊二『……レフトに飛んだか…センター頭越えならバックホーム考えたけど……仕方ないかな?』


俊二は打球の行方を確認し、三塁でストップした。そして、打った泉野は二塁まで進んでいた。

そして……



和泉『さぁて、打線が援護してくれたし…ノーアウト2,3塁。これは得点に繋げないと怒られるな』


和泉の打席となった。満月はたまらずタイムを取ってマウンドへと駆け寄り、他の内野選手も集まった。


飯島「すまねぇ……多分、次のアイツの時に打たれるかもしれない…」


十五夜「まぁ、今回は相手が1枚上手だったと考えようぜ?」


飯島「そう、だな……」


その時、ベンチから伝令を伝えにある選手がやって来た。


飯島「…伝令か? 友坂……」


友坂「はい。『次の打者が終わったら高嶺に交代するから悔いのない投球をしろ』だそうです」


飯島はその言葉に少し笑みを浮かべた。


飯島「『あの守備にしかあまり興味を持たない監督がそんなことを……』分かった。ありがとよ」


友坂「はい。では、失礼します」


友坂は軽く一礼すると、ベンチへと戻った。


飯島「……そういうことだ。だから、俺はアイツへの投球を楽しむ。打たれても…「良かった」と思える投球にするつもりだ」


十五夜「分かった! 俺達も頑張るからよ、楽しめ!」


飯島「あぁ!」


十五夜と飯島がハイタッチを交わすと、内野メンバーは各々自身のポジションへと戻った。


飯島「……さて、行くぞっ!」


飯島は軽く深呼吸をすると、第1投を投げた。


主審「……ボール」


和泉「っ……?『今のスライダー…さっきとは感じが違う……?』」


和泉は一度見逃したが、その投球にキレが戻った事に気が付いた。


飯島「少し外れたか……!」


和泉『……あぁ、そう言うことなのね。この打席でアイツは降板する…だから、楽しむのか』


飯島が悔しそうに笑って返球を受け取っていたのを見て、和泉はあぁ…と呟き、理由を悟った。そして、和泉も軽く微笑んだ。


和泉『それなら……俺もやってやるよ!』


飯島が厳しいとこを突けば、和泉はそれをファウルにして粘る…そうすること、フルカウントからなんと驚異の27球……


和泉『結構ギリギリの所を突いてくるな……でも、そうでなくちゃ張り合いが無いさ!』


飯島『クッソ……とことんギリギリのコースを突いても捌かれる…流石は広島最高の選球眼……ってとこか?』


既に32球の死闘を繰り広げているとは思えない二人の笑みに両校のベンチからもエールが飛んでくる。


「「「「「飯島 (さん)!! ガンバレー(頑張って下さいっ)!!」」」」


「「「「「和泉 (さん)!! 一発入れろぉ(入れてくださいっ)!!」」」」」


飯島・和泉『『次で……決めるっ!!』』


飯島「ハアアアッ!」


飯島が和泉へ33球目を投げる……


和泉『っ……コレ、ボールになる…けどっ!』


和泉はボールになると思い、一瞬振るのを止めようかとも思ったが何かがその思いを振り切って……




カキィィィィン!


和泉はボールになりそうだった球を思いっきり打った。打球は勢いよく飛んでいき、柘植がそれを追い掛ける。両校の選手らが打球の行方を目で追い掛けるが、飯島はゆっくりと天を見上げた。


飯島『ダメ、か……でも、清々しい打たれ方したな。こんだけ投げて、ボール球になりそうな奴を……』


一塁審「……ホームラン!!」


飯島『あんな綺麗にかっ飛ばされるとは……』


和泉「っしゃあああ!」


打球がフェンスを越えたのを確認した和泉は雄叫びを挙げて自陣ベンチにガッツポーズを見せベースを回っていった。


雷5-0御


~守備交代~

飯島(投)→飯島(一)

八神(一)→高嶺(投)


その後、登板した高嶺は飯島の意を継ぐように続く3人を外野フライで押さえ、この回の失点を3で留めた。

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