6日目
薄暗い雰囲気があったのは木々が鬱蒼と生い茂っていたからだとわかった。
蝉の僕としてもここが楽園であるとは思わない。
樹木に留まり、帰ろうかと考えていれば根元に人間が3人歩いていた。
岩肌の時にもいたし、僕が死んでいると勘違いしていた人間ども。
こんな鬱蒼としたところに何の用があるのだろうか。
僕の知っている人間はこのような場所は敬遠するはずだ。
興味が湧いてきた。
子孫を残すという義務があるが、数時間ぐらい自分のために生きていてもいいだろう。
挑戦を恐れるな。
失敗を恐れるな。
挑戦しないことを恐れよ。
とは、人間にしてはよく言ったものだ。
僕は挑戦しよう。
蝉としてこの人間について行ってみようではないか。
静かに羽ばたき、最後尾を行く人間のオスの背中にしがみつく。
なんと。
これは楽ではないか。
今後の移動は全て人間にくっついてしまおう。
僕はやはり天才なのかもしれない。
人間にしがみつくこと数十分。
人間たちから緊張が伝わっくる。
「この先にいるんだな」
「ようやくこのときが来たわね、勇者」
「あぁ、人類のためにもここを突破しなくてはならない」
「行こう、人類のために」
先頭の人間のオスがドアを押し開けていた。
僕もなぜか心が弾んでくる。
この先に何があるのだろうか。
人間は何に心を躍らせているのだろうか。
部屋に入れば、僕が人間にしがみついておく必要がない。
羽ばたき、壁へ飛び移ろうとする。
カッ
カッ
何ということだ、ここの壁には僕は留まれそうにない。
壁にぶつかる音を人間たちにも聞かれてしまった。
人間たちがこっちを見た。
一緒に来た人間たちだけではなさそうだ。
この部屋の主らしき玉座に座る人間(?)も僕へ視線を向けている。
あの玉座は留まりやすそうだ。
旋回して、玉座へ留まる。
流石、僕だ。
やはり留まることができた。
「魔王、ここでお前の息の根をとめてやる!」
「ハハハッ!勇者よ、その程度の力で我に勝てるとでも思っているのか」
どうやら人間たちは僕の存在を無視することに決めたらしい。
こんな屈辱は耐え難し。
「ここで会ったが百年目!!覚悟しろっ!!!」
また人間のオスが白く煌めく細長い棒を掲げ走ってくる。
それよりも僕を無視したことのほうが許せない。
ミーンミーンミンミンミー
ミーンミーンミンミンミー
ミーンミーンミンミンミー
僕の美しい鳴き声を聞け!
この蝉である僕を無視するとは許せない。
ミーンミーンミンミンミー
ミーンミーンミンミンミー
「ぐっ…ぐわぁぁあ!!」
玉座で鳴いていたら座っていた人間(?)が呻き出した。
「勇者、すぐに防音魔法をかけるわ!」
「勇者今だ!!」
「うぉぉおおおおお!!!」
まばゆい光に包まれて鬱蒼とした森全体に光が生き渡った。




