3日目
僕は北へと向かった。
僕たち蝉が鳴くのは、かわいいメスとの間に子孫を残すという使命があるからだ。
そのためには、メスがいるところを探さなくてはならない。
人間が多くいるところになど、か弱いメスがいるはずがないこのを失念していた。
それに喉も渇いた。
早く樹液や朝露を飲みたい。
人間の住処の上空を飛べば後ろからついてくる人間がいる。
あれは…
一昨日見た人間ではないだろうか?
白く煌めく細長い棒を振り回していた人間。
と、その他2人。
あの棒で僕を捕まえる気なのだろうか?
それは困る。
僕はまだ子孫を残すという義務を果たせて居ないのだから。
人間を撒くように僕は人間の住処を抜け、木々が生い茂るなかへと入っていった。
どの木が美味しい樹液を持っているのだろうか。
よい香りのする木に留まり、一息つく。
口を幹に突き立てればジワァと樹液が溢れてくる。
ふむ、これは甘くて良い。
何という木なのだろうか、公園にすらこんな甘くて美味しいものはなかった。
僕は無我夢中で堪能させてもらった。
腹ごしらえをしたら、義務を果たそうではないか。
体制を整え、腹へと力を込める。
腹をしっかりと震わせればいい声がでる。
ミーンミーンミンミンミー
ミーンミーンミンミンミー
おや?
腹ごしらえしたからだろうか、普段よりもいい声で鳴けている。
それに普段よりも声も大きく、よく響く。
ボトッ
ボトッ
おや?
何かが落ちてきたぞ。
地面を見れば小さい獣がひっくり返っていた。
どうも木の上に生息している獣が落ちたらしい。
かわいそうに。
猿も木から落ちるとは聞くが、本当のことなのだな。
まぁ、他の獣などどうでもいい。
メスの蝉はいないのだろうか?
ミーンミーンミンミンミー
ミーンミーンミンミンミー
ボトッ
ボトッ
ボトッ
また木の上から小さい獣たちがひっくり返って落ちてきた。
まさか、僕の美しい声にやられてしまったのか?
メスだけでなく他の獣まで魅了し始めてしまったのだろうか。
なんと、罪づくりなオスなのだろうか。
しかし、ここにもメスはいないようだ。
さらに北に行ってみよう。
美しい羽を広げ飛び立つ。
ひと羽ばたきでグンと大空へ舞い上がれた。
やはり樹液を飲んで休憩すれば力つくものだ。
すべての道はローマに通ず。
否、
すべての美声はメスの蝉にに通ず!!!




