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メンフィス、テネシー…7

 逆光のユニオン・アヴェニューを、二人は西へと走った。通り過ぎていく電柱の影が、隣り合って座る二人の顔を流れては消えていった。

 二人は多くを語らないままいくつかの交差点を曲がり、『ピラミッド』の駐車場に車を駐め、シースルーのエレヴェイターの向こうに降りていく鉄骨を眺め、二十八階のレストランの楕円柱の水槽の碧い光を横目に過ぎてデックに出て、レイリングにもたれながら眼下に広がるミシシッピ川とメンフィスの街並みを眺めた。褐色の肌の親子が足元を指差してはしゃいでいた。セルフィー・スティックを構えた若者がレンズになにかを語りかけていた。ビリーはものを思いながらマド・アイランドを眺め、それからふと横を見た。地上三〇〇フィートの風に乱れた髪を耳の後ろにかき上げながら目を細めるエルの横顔に、夏の夕陽が深さのある影を作っていた。


 (しゅう)を渡るトラス橋を視界の先に眺め、走り過ぎるアムトラックの車両の響きを聴きながら、川沿いの道をダウンタウンに戻った。タイヤの下に路面電車の線路が揺れ、中心街へのゆるやかなスロープを登った。ビルディングの谷間をしばらく走ると左手に照明塔が見え、それからレンガの外壁が見えてきた。レギュラー・シーズンを八割終えたオートゾーン・パークでは、パシフィック・コースト・リーグの試合が行われているはずだった。午後六時の試合開始から一時間が経過しており、日没まではしばらくの時間を残していたが、メタルハライドのフラッドライトはすでにフィールドのターフとプレイヤーたちを照らしていた。首を伸ばしてウインドシールドの向こうを眺めていたエルが、呟くように言った。

「ボールパークも、あるんだね」

「ああ。みてぇだな」

 ステアリング・ウィールを右に切りながらビリーは答え、タイヤを戻してから付け加えた。

「ベースボール、好きなのか」

「興味はある」

「そうかい」

 ビリーは右手をステアリング・ウィールに添えたまま、左手で唇の下の髭を触り、しばらくなにかを考えているようだった。

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