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メンフィス、テネシー…6
コツコツと控えめに窓を叩く音がして、ビリーは自分が寝ていたことに気がついた。はっとして目を泳がせ、窓の外を見ると、運転席を覗き込むエルと目が合った。太陽は四分の三時間ぶん傾いており、エルの髪の輪郭を消え入りそうな金色の光の中に溶かしていた。ビリーが頷くとエルも少し微笑んで頷き返し、ビリーがシートを起こしている間に、エルは車の後ろをぐるっと回ってきた。今度は助手席に乗ってきた。
「間に合ったのか?」
「うん。ギリギリ」
シートベルトを胸の前に引きながら、エルは答えた。明るく弾んだ声だった。
「そうかい」
後ろを見返り、車を後進させながら、ビリーは言った。
「そりゃよかった」
「うん」
バッグを膝の上に移してノートブックを取り出しながら、エルは頷いた。ステアリング・ウィールをぐるぐると回して進路を切り替えながら、ビリーは訊ねた。
「で、次はどこへ行く?」




