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悪党アルフの片想い~誠実医師の底辺転生~  作者: みそぽんわさび
青年期編

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第26.5話 相棒と恋心 おまけ

残されたアナベルとロイは、一瞬の沈黙のあと、気まずそうに苦笑いを披露しあった。


「えーと、いつからこんなことに?」

「採用してもらった日からだよ」

「うわーアルフ、いざとなったら手早いんだなー。意外だわ」

「?? 迅速に助けてくれて感謝してる」


なるほど、アルフの言葉は嘘では無く、そこまで深い仲ではないのだな、とロイは察した。アルフは恋愛初心者で、アナベルも純朴すぎて、現状は完全にアルフの片想い、しかも遅々として進まない間柄と見た。


――ていうかアルフ、まだ恋愛感情を自認してない段階だったしなー。


恐らくロクなアピールもできていないな。今日ので少し大人になるといいんだけど。

アナベルから銀細工のネックレスを贈るくらいだから、こちらも憎からず思っていそうだけど、この分だとそれも純粋な感謝からなのかもしれない。


アルフとロイは浮浪児時代からの謂わば相棒。ベタベタする気はないにしろ、ロイとしてはアルフに心身ともに健やかで居てもらわねば困る。

ロイはここらで少しアシストをしてやることにした。


「そうなんだよね。アルフって、一見ちょっと冷たいけど、懐に入ったやつのことは見捨てないし、実はけっこう骨のある男なんだよ」


――口は悪いし、依頼であれば人殺しも厭わない悪党で、懐に入れる人間が殆どおらず、大抵の団員は見殺しにしてきたんだけれども。


余計な本音は飲み込んで相棒の長所をアピールしてやったロイに、アナベルが見せた反応は予想の斜め上を行っていた。


「えっ、団長が冷たい?」

「うん、まあ」

「考えたことなかった。いつも優しくて頼もしいなあって思ってたよ」

「アルフの話だよね?」


いけない、ネガティブキャンペーンをするわけにはいかないんだ。ロイは慌てて口を噤んだ。アナベルは気にする素振りもなく続ける。


「だって、初対面の人間を家に泊めてくれるのって相当いいひとじゃないか? しかも個室やベッドまで使っていいって」

「うん、そこはまあ否定はしないけど、初見のアルフについていくアナベルちゃんも大概だね?」

「そうかなぁ? ポーションくれるし、魔術使って助けてくれるし、そ、その、見苦しいものを見せてしまった時も紳士的な対応だったし、団長に着いてきた初日の自分を褒めてやりたいくらいなのに」

「アルフがプライベートで魔術を? しかも他人のために? あと何、紳士的? ちょっと信じられないんだけど」

「ほ、本当なんだよ。だから団長には本当に感謝してるんだ」


言い募るアナベルの頬は、少し、ほんの少しだけ上気している。ロイはそれを見逃さない。


――まだまだだけど、これは。


「脈アリだったかー、よかったよかった」

「えっ? みゃくありって、えっ?」


アナベルは混乱する。脈アリ、という単語は、主に恋愛感情を持つ相手が同様に恋愛感情を持ち得る、という意味合いではなかったか。

――団長が私に? しかも私も団長に、恋愛感情を持ち始めている? そんな馬鹿な。迷惑しかかけていないし。尊敬とか感謝の念には絶えないとはいえ。

でも、ええと、だったら。


思考と目をぐるぐる回してフリーズしたアナベルに、ロイは苦笑する。


――こりゃまた攻略難易度の高い相手だな。俺みたいなのには絶対堕とせないタイプだ。でも、逆にアルフなら。


相棒の恋の行方は明るそうだ。


「まあ、ゆっくり育ててみなよ。お似合いだと思うけどなー」

「えええ!?」

「それじゃ。アルフによろしく」


混乱したままのアナベルを残して、アルフの、いや2人の家を後にしたロイは、今日の宿を誰(・)にしようか思案するのだった。

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