第3話『俺たち救済戦隊!』
―――――ロスレッドは洸で、他のメンバーは施設の住人たちだった・・・まさかの展開に五人とも驚きを隠せない様子であった。
「美景さん、本当に彼がレッドで良いんですか?」
ロストルームにて、陽子は素朴な疑問を美景にぶつけた。全く信用のない発言に軽く傷ついたように唖然とする洸を尻目に、美景は言った。
「俺はこいつしかいないと思っている!まあ、戦闘経験はまだまだ未熟だがな。それに関してはこれから訓練を積んでいけばいい。どうした?信用できないか?」
そう美景に訊ねられ、陽子はどこか素っ気ない顔でこう返す。
「少し。如何にも『自分は被害者です』って言ってるような顔の人がリーダーだなんて信用できないです。」
「そんな・・・いや、待って。リーダー?」
陽子の辛辣な言葉にショックを受けつつ、洸は唐突に出てきた「リーダー」というワードに唖然とする。それに対し、海香が横からこう言った。
「ロスレッドは『覚悟』の戦士。だからこそ、その決断力を生かしてチームを鼓舞する役割をもたせるために『リーダー』という立場に据えるのが最適だってカゲは前々から言っていたんだ。」
「なるほど・・・けど、僕で良いんですか?僕はまだ入ったばかりなのに。それだったら愛河さんの方がしっかりしてるし、愛河さんがリーダーになるべきなんじゃ・・・」
自身のない様子でそう告げる洸を見、陽子はため息をついた。
「美景さん、やっぱり無理なんじゃないですか?なんか、眞木さんの百倍は頼りない雰囲気だし」
「遠回しに心に来ること言うのやめてくれる・・・!?」
陽子の毒舌に巻き込まれ、ちょっぴり傷ついたようにツッコむ空也・・・すると。
『くせ毛でメガネって時点で、頼りないキャラ感満載だからしょーがねーよなっ』
大地の肩からひょっこりと何かが顔を出す・・・あの「チロプ」と呼ばれていた犬型ロボットだ。
「その犬、ロボット・・・だよね?いつも根岸さんと一緒なの?」
「『CHIROLU・33』、通称『チロル』。大地のサポートが彼の仕事だ。特殊なAIが搭載されているために賢いが、如何せん偉そうで口が悪い!」
指をさす洸に、美景が凛々しい顔で説明する。チロルは洸の反応にムッとしていた。
『指さすな、指~!言っとくけどお前の方が後から来たんだから、俺の方が上でお前は下っ端だかんな!』
「チロプ、後輩いびりです。意地悪はやめましょう。」
大地に宥められてムッとするチロル・・・どうやら相棒からは「チロプ」と呼ばれているらしい。
「というわけで!洸にはこれから沢山のことを覚えてもらわなくてはならない!お前たちも仲間として協力するように!」
「ハイ!それが自分の仕事ですから・・・!」
「言われなくとも・・・分からないことがあったら、何でも訊きなよ?」
美景に言われ、空也はにこやかに頷いた。海香も当然だという顔をして洸に優しく声をかけた。一方で、陽子は相変わらず納得いかないような表情をしており、大地は能天気にチロルの毛を弄っていた・・・。
「では、授業を始めます。まず最初に、僕たちが使用するアイテムについて紹介しましょうか。」
翌日・・・ロストルームに備え付けられた楕円形のテーブルに着く洸は早速、ホワイトボードを前にした空也から講義を受けていた。
「僕たちが変身するために必要不可欠なブレス・・・僕たちはこれを『ギブチェンジャー』と呼んでいる。このギブチェンジャーには『とある物質』が組み込まれてるんだよ。」
空也は自身の腕についている青いハートが組み込まれたブレスを見せる・・・「物質」と聞いて洸は一瞬首を傾げ、唖然とする。
「それって、もしや例の『物質X』・・・?」
「うん、厳密には『Xの親戚』と言った所だね。GAPは知ってるね?それに組み込まれているXに近い物質を少量、尚且つ安全に使用できるよう改良し凝縮した物が、この『パワードハート』。GAPはXで人間を内側から変形させる形だが、こちらは戦闘スーツに変形したXを体の外側に纏っていることになる。」
「ちなみに、パワードハートと名付けたのは美景さんですか?」
「よく分かったね。(あの人、ネーミングセンスは毎度小学生レベルか厨二病だからなぁ・・・。)」
遠い目をしつつ、空也はボードに重要なワードを書きながら解説を続ける。
「物質Xは人の感情を増幅させる効果がある。GAPに含まれるXには、主に人のドーパミンと呼ばれる物質を活性化させる・・・だが、それは主に『負の感情』によって作用する。つまり『怒り』や『悲しみ』、あるいは『悪意』があるほど強力なものとなるんだ。」
「ちゃんとギミックがあるんだ。じゃあ、パワードハートは?」
「よく聞いてくれた。GAPとは逆に、パワードハートは『正の感情』・・・早い話が『善意』に近い心によって力を発揮する。例えば僕は『誠意』、何事にも真摯に取り組む誠実な心だ。自分で言うのも何か変だけどね。ちなみに海姐さんは『慈愛』、根岸君は『根性』・・・そして陽子さんは『勇気』。それぞれ「ヒーロー」として必要不可欠な要素を持っている。」
「僕の『覚悟』の心もヒーローの要素の一つってことか・・・そういえば、どこから不死鳥やペガサスの発想が?」
作り手の趣味らしいよ?・・・と、空也は苦笑いでそう返した。ロストレンジャーのスーツはそれぞれ美景の好きな幻獣がモチーフとなっており、レッドが不死鳥、ブルーがペガサス、イエローがサラマンダー、ピンクが人魚、グリーンがケット・シーだそうだ。
「(美景さんって、結構変わってるよな・・・知ってたけど。)けど、一体どこからそんなものを作る資金が・・・??」
洸の直球すぎる疑問に対し、空也はこう返した。
「ここと連携してる企業があってね、ようはそこがスポンサー兼技術面の協力者になってくれてるんだよ。この辺はあんまり知らなくてもいいかな・・・それよりも知っておくべきなのは、ロストレンジャーの正体を知っている人物はごく僅かということ。ここだと僕たち五人と一匹、所長、明石さん、ココ先生だけ・・・外部の人間には極秘中の極秘だ。それだけは憶えておくように。」
ロストレンジャーは腐りきった世の中から少しでも助けを求める人々を救いたいという美景の正義感から誕生した、政府・非公認の組織・・・ようは自警団のようなものである。このご時世だ、正体がバレようものなら一気に拡散されて人生が終わる。何なら法律違反で逮捕される可能性だってある。
(その『非公認の自警団』が作られたのも、全部過去の法律や政府のせいなんだけどね・・・)
心の中で空也は密かに皮肉る。そもそも政府が過去に愚かな政策を実行しなければ、日本は今の状態になっていなかったのである。
(『暗黒の十年』・・・あの時期があったせいで、秘密裏にGAPが大量生産されたことに誰も気づけなかった。今もどこかで、ベリアロイド予備軍は息をひそめている・・・!)
「アハハハハハハ」
路地裏にて、数人の高校生が大怪我を負って倒れている男子生徒を見下ろしていた。明らかに虐めの場面である・・・主犯格と思わしき少年は既に呻く力もない同級生を見、子供のように無邪気に笑っている。
「な、なあ・・・今日は流石にやりすぎじゃないか?誰かに見つかったら捕まるって・・・!」
取り巻きの一人が囁く。すると、主犯は不思議そうに首を傾げる。
「え、何で?面白いじゃん。もっとボコして、何ならネットで晒して社会的に殺しちゃおうよ。大丈夫だって~ここには誰も来ねーし、こんな奴いなくなった所で誰も悲しまねーから。アハハハ」
まるで悪びれた様子もなく告げて袖を捲る・・・手首にはGAPがつけられており、取り巻きは唖然とした。
「それって確か非合法のやつじゃあ・・・!」
「ああ、これ?先輩からもらったんだよ。これつけたら調子いいんだ。」
見てな・・・と、主犯は第三者に生理的嫌悪感を与えるような笑みを浮かべ、GAPがついた腕を掲げた。
「『ヒア・トゥルーセルフ!!』」
変身コードを発し、主犯はカッターナイフ等の凶器をモチーフとし、絶えず口角が上がっているベリアロイドに変貌した。周りが歓声を上げる中、唯一ヘタレな取り巻きは狼狽え始める。
「ちょ、ヤベェって!知り合いから聞いたよ、そのパッチで怪物に変身した奴は最終的に死ぬか廃人化するって!」
「アハハ!そういうのは心も体も貧弱だから耐えきれなくなったってケースだろ!つーか、さっきから白けることばっかり言いやがって・・・お前もこうなりたいわけ?」
ベリアロイドに言われ、青ざめる取り巻きはブンブンと首を横に振った。鼻で笑うベリアロイドは被害者の前に出、左手を突き出す・・・その手はライターのようになっている。
「まずは~髪の毛燃やしてみるか~」
その残忍な発言が聞こえた被害者は硬直し、蚊の鳴くようなか細い声を出す。
「や・・・やめて・・・助、けて・・・!」
ライターの手から炎が放出されかける・・・その時だった。
「やめなさい!!」
後方から誰かが呼び止める・・・陽子だ。手にしたスマホには『ヒロ活』の通知が入っており、彼女はそれを仕舞ってブレスを構えた。
「アンタたちみたいな人間のクズ・・・絶対に許さない!」
「あ?誰だよ、邪魔すんなよ!良いとこだったのに!」
「あいつ、どこの高校?」「女子大生だろ」「めっちゃ可愛いじゃん、遊んでやろーよ」
口々に言うベリアロイドとその仲間たち・・・すると、取り巻きの一人が陽子に食って掛かる。
「お姉さん、どう?一緒にあいつで憂さ晴らししない?それとも後で っぐえ!」
突如、不快そうな顔をする陽子は取り巻きの脇腹を突いて襟首を掴んだ。
「邪魔、どいて」
見かけからは想像もつかない腕力で取り巻きを投げ飛ばし、陽子はポーズを取る。
「『プリーズ!パワード・オン!!』」
黄色い炎を放つサラマンダーを体に纏う・・・ロスイエローに変身したことで、加害者グループは驚愕する。
「何だアイツ!?」「知ってるぞ!怪物が現れたら、必ずそこにカラフルなヒーローが現れるって・・・!」
アックスを装備するロスイエローは闘志を奮い立たせるため、声を張る。
「勇気、全開!!」
本気でこちらを邪魔しにかかる気だと分かり、見据えるベリアロイドは舌打ちした。
「ヒーローだか何だか知らねぇが・・・そんなにヤりたきゃ、俺が遊んでやるよ!アハハハハ!!」
「ベリアロイド、出現!!」
素早く手元のキーボードを操作することで「ヒロ活」の通知を一斉送信し、明石は洸にスマホを渡した。講義を受ける前に預けていた彼のスマホなのだが、ロストレンジャーのマークが描かれた分厚いスマホカバーを付けられていた。
「敵の出現を知らせるための専用アプリを入れた。それと、戦闘中に壊れないよう改造したからね。これからは『ロスターフォン』とでも呼ぶと良いわ。これさえあれば、キーがなくてもロストルームに入れるからね。」
スマホ画面には、「ボランティア」と書かれたアプリが入れてあった。このアプリ名はダミーであり、ベリアロイドの出現は「ヒロ活」という合言葉で知らされるシステムになっているのだ。
「あら、ヒコちゃんが戦ってるわ。苦戦してるみたいだし、早く飛んでってあげなさい。」
モニターにベリアロイドと戦うロスイエローが映し出され、明石は二人を促す。
「洸君、変身して行った方が早い!急ぐぞ!」
空也と共に格納庫へ駆け出し、扉が開かれると同時に二人は腕を突き出す。
「「『プリーズ!パワード・オン!!』」」
赤い不死鳥と青いペガサスが舞い、二人はロスレッドとロスブルーに変身する。
『如何にも『自分は被害者です』って言ってるような顔の人がリーダーだなんて信用できないです。』
『美景さん、やっぱり無理なんじゃないですか?』
(陽子さん、君は俺のことを信用しないって言ってたね。それでも・・・!)
両腕が翼となり、ロスレッドは格納庫の扉から外へと飛び立った。一方、ロスブルーはパワードハートに手をかざし、クラウチングスタートの体勢を取った。
「いざ、誠心誠意・・・マインドパワー、解放!!」
『ペガサス・ダッシング!!』
青い風が吹く。それと同時に、ロスブルーはマッハの速度で駆け出した。これこそがロスブルーの能力・・・天馬の如く駆ける、超・最速の戦士なのだ。
「くっ・・・!」
地面に投げ出されたロスイエローは咄嗟に起き上がり、ベリアロイドが手から放った火炎放射に向けて自分も口から黄色い炎を放った。炎は相殺するが、ベリアロイドは立て続けに棘のついたバットを振りかざした。
「ハハハハ!!死ね、クソアマ!!」
バットが振り下ろされた、その瞬間・・・ロスイエローはその場から消えていた。ハッとベリアロイドが振り返ると、そこには急ブレーキをかけるロスブルーがロスイエローを担いでいた。
「良かった、間に合った!」
「・・・ありがと、助かった」
呆気に取られつつも礼を言い、ロスイエローは地面に降ろされる。仲間が応援に来たのだと理解したベリアロイドは舌打ちし・・・口角を上げた。
「おい、お前ら!!分かってんだろーな!?」
取り巻きたちに指示を出す。すると、彼らは倒れたままだった被害者を拘束し、その頭部にカッターナイフを突きつけた。
「その子を人質にする気か・・・!」
ロスブルーは手にしていたペガサスマグナムを下ろしかける・・・ニヤリと笑うベリアロイドは動けない二人にライターの手を向け、怒鳴りつけた。
「武器を捨てろ!さもないと俺の仲間にアレを殺させるぞ!」
「っ本当に殺す勇気なんてないくせに・・・!」
ロスイエローはワイバーンアックスの柄を握りしめるが、指示に従わない場合は本当に被害者が傷つけられてしまうだろう。こちらが動けなくなっていることに味を占めたのか、取り巻きたちは余裕の笑みを浮かべてナイフの刃を被害者の頬に押し付ける。
血が滲んだ瞬間、ロスブルーはマグナムを足元に落とした。その音を聞き、ロスイエローも歯を食いしばりながらアックスを地面に置く・・・直後。
「ぎゃははは!!ざまぁ見ろ!!」
ベリアロイドの手から炎が放たれる・・・二人が両腕を顔の前に持っていき防御の姿勢を取った時だった。
「そこまでだぁぁ!!」
何者かが前に降り立ち、炎を真正面から浴びる。ロスレッドだった。焦げた赤い羽根が舞い散る中、ブルーとイエローは唖然とした。
「洸君!」
「何してんの?いくらスーツを纏ってるからって全くダメージが無いわけじゃないでしょ!?早くどきなさい!」
炎を浴びたまま動かないロスレッド・・・まるで、何かを待ちながら耐え忍んでいるようにも見えた。
「またヒーローかよ・・・まぁ良い。だったら、お前から火あぶりにしてやる!全員そのまま動くんじゃねえぞ!?もし一歩でも動けばあいつの顔を剥がすからな!ハハハ!」
ベリアロイドはそう吐き捨て、火力を上げた。全く動く気配がないロスレッドはひたすら炎を耐えつつ、マスクの中で口角を上げる。
「分かってるさ。俺は最初から、攻撃される覚悟でここに来た。それに『必ず間に合ってくれる』って信じてるからな・・・!」
ほざけ!!・・・ベリアロイドは更に腕に力を籠め、ロスレッドを焼き尽くそうとした。
「逃げて・・・逃げて、洸!!」
ロスイエローが叫んだ、その時・・・。
『シー・ザ・パレード!!』
取り巻きの背後から、一匹の猫がそろりそろりと近寄り・・・一人に威嚇した。それを皮切りに、別の猫やネズミ等の小動物の群れが取り巻きたちに一斉に飛び掛かった。
「うわあああ!!」「何だ!?」「ぎゃー!ネズミ~!!」
突然の動物たちの襲撃に、取り巻きたちは悲鳴を上げて逃げ出す。その後方には、ヨーヨーを上に掲げているロスグリーンがいた。
「みなさん、ご協力ありがとうございます。」
『ロスグリーンのマインドパワー、「シー・ザ・パレード」!動物と心を一つにして操れるんだ、スゲェだろ!』
取り巻きを追う動物たちに礼を言うロスグリーンの背で、チロプがモニターの目でウインクしつつ解説する。呆気なく逃亡してしまう仲間に、ベリアロイドは愕然とした。
「おい、どこ行くんだよ!この裏切り者共ーっ!!」
口角を上げたまま激怒し、その拍子に火炎放射を中断してしまう。同時に、ロスレッドは翼を大きく仰いで炎を掻き消した。
「『フェニックスダガー』!」
フェニックスダガーを召喚したロスレッドはその刃に光のエネルギーを籠め、ベリアロイド目掛けて放った。その一方で、投げ出された被害者をロスピンクが受け止めていた。
「酷い怪我だ。洸の通信を聞いた時は耳を疑ったけど、ここまで腐った連中だったとはね・・・」
そう呟いて回復技を発動させ、止血するロスピンク・・・「通信」と聞き、ロスイエローは首を傾げた。
「あんた、いつの間に二人に連絡したの?」
「ここに降り立つ直前、あの集団がその人を引きずるのが見えたんだ。それで何か悪いことを企んでるって思って・・・!」
空から「取り巻きたちが人質を取ろうとしている」と察したロスレッドは即座にこちらへ向かっている海香と大地に連絡し、自分は二人が人質を救出するまでの囮を買って出ていたのだ。
「そう、なんだ・・・やるじゃん。」
「不安な面が無くはなかったとはいえ、彼をリーダーに指名した所長の判断は間違っていなかった、ということだね。」
ロスイエローは素直に称賛し、ロスブルーも納得したように頷いた。すると、攻撃を喰らった上に仲間に逃げられたベリアロイドが笑いながら憤慨しだす。
「ヒャァ~ハハハ!!どいつもこいつもぉぉ!!笑えねーんだよ!!」
片手に鈍器を構え、ロストレンジャーに向けた。ロスレッドはギブチェンジャーに右手をかざす。
「マインドパワー、解放!」
『ファイヤーバード・リボーン』
ロスレッドは赤い光を纏い、ボロボロだった体を元に戻した。自動的に全快した彼の姿に、ロスイエローは唖然とする。
「え、何それ?あんた、自分で回復できんの?」
「ここに来る前、眞木先生からロストレンジャーについて色々教わったんだ。俺は不死鳥のような再生能力を持ってる。だから易々と囮役を引き受ける気になれたんだよね・・・。」
そう返してロスレッドは苦笑いする。人質の少年を安全な場所へ避難させたピンクとグリーンも合流し、五人並び立った所でロスレッドは言った。
「よし、それじゃあ・・・士気上げにアレやるぞ!」
『アレ』の意味を察し、ロスイエローは呆れたようにため息をつく。他の三人も思わず唖然としかけるが、ロスレッドのやる気に感化されて頷いた。
「『覚悟の不死鳥 ロスレッド』!!」
「『誠意の天馬 ロスブルー』!!」
「『勇気の火竜 ロスイエロー』!!」
「『慈愛の人魚 ロスピンク』・・・!!」
「『根性の妖猫 ロスグリーン』~!」
「俺たち、救済戦隊!」
「「「「「ロストレンジャー!!」」」」」
「う~む、五人名乗り最高っ・・・美しい!」
いつの間にかロストルームに来ていた美景はモニターに映し出される光景を見、思わずガッツポーズを決める。それに対し、明石は横で冷めた目を向けていたとは言うまでもない・・・。
・・・唐突に始まった名乗りに思わず愕然としていたベリアロイドであったが、五人がポーズを決めた瞬間に我に返る。
「ハハハハ!お前らダセェんだよ!名乗りって、ヒーローごっこかよ!」
「〝ごっこ〟じゃない、本物だ!行くぞ!レッツゴー、覚悟!!」
ロスレッドの号令で五人は一斉に武器を手にし、迎え撃つ。ロスイエローが先手を切ってアックスによる斬撃を繰り出し、ベリアロイドの鈍器をへし折った。怯んだ所へロスブルーが銃撃し、立て続けにロスレッドとロスピンクの斬撃と刺突、更にロスグリーンがヨーヨーをぶつけた。
「ぐぅぅ~~~!一人相手に寄ってたかって、お前ら恥ずかしくねーのかよ!ハハハ!」
「よく言うわ!さっきまで生身の人間一人に集団で、それも私たちより多い人数でボコしてたくせに!」
ロスイエローがそう正論で返すと、鼻で笑うベリアロイドは両肩からバットを所持した腕を生やし、五人に襲い掛かろうとする。
「やる気かい・・・仕方ない、だったらアタシも本気を出させてもらおうか!」
フーっとため息をついたロスピンクはギブチェンジャーに手をかざし、桃色の水を纏った。
「マインドパワー、解放!!」
『マーレクイーン!!』
ロスピンクの「慈愛」のエネルギーが解き放たれる・・・刹那、ロスピンクの姿形が一回り大きくなる。下半身は人魚のそれに変形し、上半身は筋骨隆々に、マスクから現れた口には凶悪な牙が生えた。
「あ、愛河さん・・・!?」
「これがロスピンクのもう一つの力・・・回復技が使えなくなる代わりに、パワーが桁違いに上がるんだ。」
ギョッとするロスレッドに、ロスブルーがそう解説する。怪人に近い姿となったロスピンクは咆哮を上げ、ベリアロイドに襲い掛かった。
「そう、『愛』は時に人を怪物にするものだからな・・・!」
モニターに映るマーレクイーンの戦いを見、美景は得意げにそう語った。それを横目に、明石は再び呆れ顔になり「ケッ」と声を漏らすのだった・・・。
「ぎゃはは!どう見てもヒーローじゃなくて化け物じゃねーか!」
「さっきからアンタの発言、特大ブーメランなんだよっ!!」
振り下ろされたバットを片手で受け止め、ロスピンクは間髪入れずにアッパーを喰らわせる。ベリアロイドが後ろへ仰け反った瞬間、ロスブルーは手を狙って銃撃することでバットを手放させた。
「バカが!武器ならまだ残ってんだよぉ!」
ベリアロイドはライターの手を向けて炎を放出する・・・が、その瞬間にロスピンクは水中に潜り込むように地中へ逃げ、火炎放射を回避した。炎は付近にある建物を巻き込みかけるも、緑色のバリアによって防がれる。
『いっそのことホントに壊させて、公共物の破壊で訴えても良いんだけどなっ』
「人の物を壊してはいけません。」
縁起でもないチロルの発言に対し、大地は冷静にツッコミを入れる。ここで、ベリアロイドの炎が途切れた。どうやら腕のライターが燃料切れになったらしい。
「マジかよ、こんないい所で・・・!」
「アンタみたく、計画性のない奴から自滅するのさ!」
背後からロスピンクが現れ、ベリアロイドに掴みかかってぶん回す。そのままジタバタ暴れるベリアロイドを宙へ放り投げた。
「ハァッ!」
飛翔したロスレッドが空中でベリアロイドを斬りつけ、落下した所をロスイエローがアックスで斬撃を喰らわせた。地面を転がるベリアロイド・・・降り立ったロスレッドは止めを刺そうとした。
「ハハッ・・・ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
これで終わりだと察したのか、ベリアロイドは急に焦ったように告げた。
「勘弁してくれよ、俺は人間だぞ!?一般市民を殺ろうってのか!?自分たちとは姿形が違うってだけで殺せるのか!?お前らそれでもヒーローかよ!!」
この場に及んで、ベリアロイドは惨めに命乞いをし始めたのだ。しかし、ロスレッドは特に躊躇ったり呆れかえったりすることもなくキッパリと返す。
「殺さない。お前はこれから償うんだ。一生かけて、人を傷つけたという事実を永久に忘れることなく、『虐め加害者』という十字架を背負って生きるんだ。」
今度こそ手をかざし、ロスレッドは拳に赤い光を纏わせる・・・!
「さあ、お前も覚悟を決めろ!」
『フェニックス・フィスト!!』
不死鳥を模した赤い光が放たれ、真っ直ぐ飛ばされたそれはベリアロイドの体を焼く・・・!
「ぎゃははは!!マジかよおおお!!」
断末魔を上げると共に爆発が起きる・・・煙が晴れ、そこには虐め加害者の主犯が倒れていた。その傍には砕けたGAPも落ちている。
「明石さん、救急車を。それと警察も・・・!」
『お疲れちゃん。とっくに呼んだわよ』
ロスレッドの呼びかけに対し、明石は飄々と返す。その直後にパトカーと救急車のサイレンが聞こえ始めた・・・。
――――数日後・・・洸と陽子は花束を手にした美景に連れられ、被害者が入院している病院を訪れた。
「時に洸、心なしか垢ぬけたな。」
「変えるならまず、髪型からかなって思って」
似合ってるぞ、主人公っぽくて!と、美景に褒められる洸は現在、やや頼りない雰囲気だった髪型から赤毛の短髪になっている。
ちなみに・・・あれから主犯は暴行罪とGAPを所持していたことで逮捕された。逃亡を図った取り巻きたちもコマーンが撮影した映像と明石の情報能力によって顔や住所を特定されたので、もう逃げられない。
「初めまして、猿渡君。私は『ホビットの家』の責任者、寛田美景と申します。こちらは今回の騒動で通報を行った(という〝てい〟の)志野田と勇見です。」
「あ・・・その節はどうも」
被害者こと猿渡はベッドに横になったまま三人に会釈し、洸と陽子もペコリと頭を下げた。打撲や切り傷、肋骨を折る等の怪我を負った猿渡であったが、命に別状はなかったようだ。
「ご両親から聞いたと思うが・・・主犯は少年院行き、取り巻きは全員退学処分となった。それでも君が受けた傷は簡単には治らないかもしれないが。君さえ望むなら、うちと連携しているカウンセラーなんかも紹介してやれる。ご両親にも伝えておくから一度相談すると良い。」
「ありがとうございます・・・」
美景からの話に、猿渡は頭を下げ・・・彼らに向けてこう溢した。
「あの・・・『五人組のヒーロー』について、何か知ってますか?」
「・・・いや、知らないな。聞いたことならあるがな。」
「信じてもらえないでしょうけど・・・俺、その人たちに助けてもらったんです。今まで誰も俺が虐められても助けてくれなかったけど、あの人たちは俺のために怒ってくれた。戦って、命を救ってくれた・・・っもしあの人たちに会うことがあったら、俺が感謝してたって伝えてくれませんか!?一生感謝してもしきれないって!」
そう語る猿渡は目頭を熱くしながら、彼らに頼み込んだ。それを受けた洸は一瞬目を見開き・・・噛み締めるように頷いた。
「分かりました。会えたら必ず伝えます。必ず・・・!」
ロストレンジャーは非公認の自警団的存在である。おそらく、世間は彼らを求めてなどいない・・・しかし、彼らの活躍によって心を救われた者も存在している。その事実に洸は胸を熱くするのだった。
「あれからずっと言いそびれてたから言うけど・・・あんた、私が思ってた以上に勇敢なのね。」
帰り道、陽子はそう洸に溢した。呆気に取られる洸にこう続けた。
「この前の戦い、身をもって私と眞木さんのこと庇ってくれた。いくら再生能力があるからって、痛いもんは痛いでしょ?相当の勇気がいるはずだったけど、ちゃんとやり遂げてた。それに、見ただけで状況を把握して仲間と連携が取れる辺りも、そこそこリーダーシップがあるって証拠だろうし。」
ついでに、命乞いするベリアロイドに対する台詞もシビれた・・・と、こちらを見ることなく話す陽子に対し、洸は首を傾げて訊ねる。
「えっと・・・それって、僕のこと認めてくれるってこと?」
「・・・そういうこと」
ちょっぴり照れ臭そうに返す陽子に、洸は口角を上げた。
「ありがとう、陽子さん!」
「ああ・・・呼び方、『ヒコ』って呼び捨てで良いから。どーせ年もそんなに変わらないだろうし」
「!・・・分かったよ、陽子。僕、これからも頑張るから・・・!」
洸の眼差しに、陽子は思わずキョトンとした。ひょっとしたら、この素直で純粋な一面こそが美景に・・・そして「パワードハート」に選ばれた所以、なのかもしれない。
「そ、そう・・・ていうか気になってたんだけど、変身前と変身後で『僕』と『俺』を使い分けるのって意味あるの?」
「いや、『俺』って言う方が王道のヒーローっぽいかと思ったものの、急に一人称を変えるのは変かなって思って使い分けてみたんだけど・・・変かな?」
「さあ?洸がそうしたいなら、すればいいんじゃない?」
戦いを通して打ち解けることができたらしい二人の会話を後ろから眺めながら、美景は凛々しい笑顔で頷いた。
(性別や年齢を問わず、『ヒーロー』の意志を通じて結ばれる絆・・・やはり美しい。)
五人揃ったロストレンジャー・・・彼らの戦いはまだまだ始まったばかりなのである。
「そういえば・・・陽子って年いくつ?僕、みんなのこと何も知らないからさ。ちなみに僕は今16歳で高2、だった。」
「見た目まんまだね。私は18歳。今は大学行くために勉強してる。あと、眞木さんは25歳。大地は20歳で、海香さんは28歳くらいだったかな~」
「え、もしかしてロストレンジャーの最年少って僕!?だから頼りなさそうって目で見られてたのか・・・美景さんは?」
「俺は35だぞ♪」
「なんかそんな気がした。明石さんやココ先生は?」
「あのさぁ、洸・・・本人に訊けば?」
「そ、そうだよね。ゴメン」
「わははっ(まだまだ学ぶことが多そうだな、洸☆)」
〖ベリアロイドfile〗
ベリアロイド№0050『スマイリーボーイ』
変身者:嶋谷博史
モチーフ:カッターナイフ、バット、ライター
罪状:虐めや集団リンチによる傷害罪、暴行罪
末路:少年院行きにより退学
・スクールカースト上位の不良。カースト下位のクラスメイトに対し、度重なる暴力や脅迫を繰り返してきた。相手が傷つくのを見て優越感に浸っては笑っている。
・「弱者は甚振られて当然、虐められる方が悪い」とマジで思っている。




