27. 下衆の極み母子
「何ですって!あの猛毒令嬢に毒がなくなったと?それは本当なの?」
「はい、母上。僕は確かに聞きました。そして念のため父上にも確認しましたら、確かにシャルロット嬢の毒は抜けたと。」
あのあと皇后の私室を訪れたミゲル皇子は、シャルロットの毒が抜けたことを皇后に告げた。
「何てこと。せっかく計画していたことも、もう使えないわね。」
「母上、今度は何を計画されていたのです?」
「今度陛下主催でシャルロット歓迎のための晩餐会を開くことになっているでしょう?あの場でカイとヒュンケル、ジュールにいっぺんにいなくなってもらおうと思っていたのに。」
「成る程。ずっと晩餐会を反対なさっていた母上が急に承諾なさったからどうされたのかと思っていたのですよ。そういうことだったのですか。」
母親から兄の殺害計画を聞いても平然としているこの皇子は、幼い頃から皇后の英才教育とも言える子育てでこのように下衆の極みとなったのだ。
「あの放蕩者の兄上たちは、いつも僕のことをおかしな目で見てくるところが気に食わないのです。そして会えば『かわいそうな奴だ』などと言うのですよ。何の役にも立たない皇族まがいのくせに。」
「あの子たちも私と全く同じ色味ならばまだ良かったのだけれど、彼らの色味が出てしまったから役に立つこともないわ。あの子たちの瞳を見るたびに胸が悪くなる。」
「ねえ、母上。傍に父上も居てやりにくい晩餐会の時でなくとも、例えばもうすぐ行われる狩猟大会の時などどうでしょう?」
「そうね、どうせならその時にはヴィンセントにこの世から居なくなってもらいましょう。そうすればあの腰抜け皇子たちは次は自分たちだと逃げ出すに違いないわ。」
本当にこの母子は似た者同士の下衆の極みで、猛毒令嬢と呼ばれたシャルロットよりもよほど多くの人を傷つけ、そして闇で殺してきたのだ。
「狩猟大会ともなれば大きな獲物が出てもおかしくありませんからね。私の実家から頼もしい助っ人を呼んでおいたら楽しい大会になりそうね。」
「母上!それは楽しみですね!」
皇后はとても楽しいことを思いついたようにその真っ黒な瞳を煌めかせた。
そんな母親を見て息子ミゲルもまた嬉しそうに笑って母親に抱きつくのである。




