28. 歓迎晩餐会
今宵は遅ればせながら皇帝主催でシャルロット歓迎のための晩餐会が開かれることとなった。
シャルロットと皇太子の他には皇帝をはじめ、皇后と四人の皇子たちが席に着く。
「シャルロット嬢、もうこの城での暮らしと妃教育には慣れたかな?ユーゴに会いたくて辺境の地へ戻りたいと思ったりはしていないか?」
「皇帝陛下、おかげさまで皆良くしてくださいますから日々順調に過ごさせていただいております。父に会えないことは寂しいですが、手紙のやりとりはしておりますので、私の皇太子妃教育での成長を喜んでおります。」
皇帝はまず皇太子の隣に座るシャルロットへ声をかけた。
「それは何より。それではシャルロット嬢の歓迎と身体の回復を祝って今宵の晩餐を始めよう。」
皇帝は始まりの言葉でシャルロットの身体から毒が抜けたことを祝った。
それに続きカイ皇子、ヒュンケル皇子、ジュール皇子は本心からの笑顔で喜びを述べた。
皇后とミゲル皇子はつまらないといった感情を隠すことなく退屈そうな顔をしている。
「殿下、あの皇帝陛下と皇后陛下のお飲みになっている飲み物は何ですか?」
「あれは皇后の出身国で作られている酒だ。」
「中に入っているのは蛇ですか?」
「そうだ。若返り効果と慈養強壮にいいからと毎夜嗜まれている。」
皇帝と皇后の前には瓶の中に蛇が一匹入った酒が置いてあり、そこから二人はグラスへと注いで飲んでいる。
シャルロットは蛇が嫌いな為、あのような飲み物を口にするなど真平と目を逸らした。
あのようなゲテモノを嗜んでいるから皇后は好色家なのだと確信できた。
暫くして、皇帝と皇后、ミゲル皇子は先にさがるとのことで晩餐会場には皇太子、シャルロット、そして三人の皇子たちとなった。
「ヴィンセント兄上、シャルロット嬢の身体が全快されたとのこと本当に喜ばしいことですね。」
「ありがとう。先日はカイから話を聞いたお陰でシャルロットと遠乗りを楽しめた。それについても礼を言おう。」
意味ありげな視線をシャルロットに向けて口元に弧を描いた皇太子は、シャルロットがそれに対して恥じらうところを確認して満足気に笑った。
「ヴィンセント兄上とシャルロット嬢が仲睦まじいようで何よりだな。同じ仲睦まじいでも父上と母上には見ていて反吐が出そうだが。」
「ヒュンケル兄上、そのようなことを言っていたらいの一番に消されてしまいますよ。ほら、部屋の外には騎士たちも控えているのですからね。誰が母上の間諜か分かりませんよ。」
「ジュール、心配してくれているのか。お前は可愛いな。」
ヒュンケル皇子とジュール皇子は軽口を叩いているが、一見楽しそうに話すその会話の内容は殺伐としている。
「間諜か間男か分かったものではないがな。」
「あー、ヴィンセント兄上まで。危ないですよー。僕は知りませんよ。」
「ヴィンセント兄上ならば返り討ちにしてくださるだろう。」
皇太子とジュール皇子、カイ皇子の会話でさえ実の母の話をしているとは思えないほどの冷えた内容である。
シャルロットはこの場で下手なことは話すまいと口を貝のようにつぐんでいた。
イヴァンは黙って壁際で控えていたが、少し口元が緩んでいるようにも見えた。
そうしてシャルロット歓迎の晩餐会は、息子たちによる母への罵りと誹謗中傷で大盛り上がりの後に解散となった。




