ナニがとは言わないがバインバイン
「甚平さんは助手席に華凛達は後ろの席に乗ってくれ」
俺の家の前には一台のワンボックスカーが駐車している。
この日のためにあらかじめ予約していたレンタカーだ。
俺の普段使っている車では乗れて5人だが甚平さん達の体格を考えるとキツキツになってしまう。
そのため俺はゆったり乗れるワンボックスカーをレンタルしたのだ。
「けっこう中は広いんだな……」
「これが移動手段なのですね。原理は何なのでしょうか?」
「原理まではわかんないですけどガソリンっていう燃料で走る機械ですよ。あっそうだ!これを先に渡しておきますね」
俺は袋から1人一つづつ財布を渡す。
「中にとりあえず五万円を入れておきました。足りなかったらいってください」
そういって俺はみんなに財布を配る。
財布は特に高いものを選んではいないが甚平さんには紳士用の長財布、華夜さんには女性用の黄色の財布、華凛と羽歌にはキャラクター物のデフォルメされた首から下げられるがま口を渡した。
「何から何まですみません」
「良いんすよ。甚平さんから貰った水晶が良い値段になりましたから全然痛く無いですからね。華夜さんには母ちゃんのですけどバッグもどうぞ、簡単な財布と小物入れに使ってください」
華夜さんにバッグを渡すととりあえず財布をバッグへとしまう。
「最初はどこに行きましょうか?」
時刻は9時。朝食も食べたばかりだし、最初は買い物とかで良いかな?
「買い物や店を見て回りますか?」
「俺は何でも良いぜ!」
「私もっす!」
「えぇ、初めてですので康成君に任せます」
「了解、それじゃあ最初はショッピングモールだな」
行き先も決まり俺は車を発進させる。
5分程で村から国道へ出ると華凛と羽歌は窓から外を眺め初めて見る景色や物に興奮している。
甚平さんや華夜さんも前を見たり横を見たりと忙しそうだ。
途中コンビニへ寄って簡単な買い物を済ませ再度出発すると。
「いやぁ、今のコンビニですか?あの店だけであんなに色々な物があるのですね。それに飲み物や菓子も安いのですね」
「これで驚いてたらキリが無いですよ」
「今の所で買い物してみたけど本当に紙で買えるんだな。改めて驚いたぜ」
後ろでは華凛と羽歌が所持金の計算をしている。
「えーと……今のとこで420円使ったから……残りが……」
「今のうちに慣れておけよ?まぁ足りなくなっても補充してやるから今日は気にしないで楽しめよ」
「あー!アニキが声をかけるから分かんなくなったっす!」
「お?この芋の菓子旨いぞ!」
楽しんでいるようで何よりだ。
その後も走行中特に暇をせず目的のショッピングモールへと到着した。
田舎あるあるだが街を抜けて少ししたところに大型のショッピングモールは建てられている。
○○地方で1番大きい!とかも謳い文句で良く使われる。
まぁ土地も安いし駐車場も作り安いしな。
「はぇー、遠くから見つけた時もびっくりしたっすけど……近くで見るとさらにデカイっすねぇー」
「本当だな!こんなに大きな建物は初めてだぜ!まるで領主の城みたいだな」
「村の近くの森の方がでかいだろ?」
「わかってねーなぁ。森と建物を比べても意味がねーだろ?」
確かに同じ高さの山と建物なら建物の方が興奮するな。
「それでは案内をよろしくお願いします」
俺達は中央の入り口から入るとインフォメーションの所にある地図を眺める。
「最初はどこが良いかなぁ……っと、見たい場所はありますか?」
「大きいだけあって色んなお店が入っているのね。もし良かったら最初に服が見たいわ」
「「え?」」
あっ三人ハモった。
「華夜さん最初に買ってしまうと荷物になりますよ?最後の方が良いのでは無いですか?」
「そうだぜ母ちゃん!荷物になるから最後にしようぜ!」
「そうっす!そのほうが良いっす!」
「確かにそうねぇ……荷物が沢山あると他の物を見れなくなるわねぇ……」
華夜さん以外が一斉に畳み掛けるとインフォメーションのお姉さんが声をかけてきた。
「お客さん。ご安心ください。荷物が多くて困っている場合でもこちらの受付で無料お預かりサービスをいたしておりますのでゆっくりお買い物いただけますよ。いかがでしょうか?」
「「!!!!!」」
「聞いたかしらあなた!無料で預かってくれるらしいわよ!良かったわ。これで安心して買い物できるわね!」
主婦は無料とサービスという言葉に弱い。
最初の買い物先は洋服コーナーに決まった。
それと同時にみんなの目から光が消えた。
服屋と言っても若者向け、婦人向けなど多数の店があるモール内で全てを見て回るのは不可能だと説明し、モールの経営下のプライベートブランドの店とシンプルなデザインの大衆向けの店へと向かうことになった。
イ○ンブランドとユニ○ロですねわかります。
簡単な文字や数字は読める華夜さんだが○○%オフやジーンズといった英語、横文字には弱かったため俺も簡単な説明をしながら一緒に買い物をして回った。
一気に全員分の買い物は難しく俺は最初に説明をすると「あとは店員さんに聞くから大丈夫」と言う華夜さんと甚平さんを残して隣のゲームセンターへと華凛と羽歌を連れてきた。
「うわぁ!いっぱいキラキラしてるっす!」
「本当だな羽歌!なぁ康成?これは全部遊ぶための場所なのか!?」
「そうだよ。この規模のゲーセンはここくらいだから種類も豊富で楽しめるぞ。何からする?」
「んーとだな、あれは何だ!?」
「これはUFOキャッチャーといってだな……口で説明するより実際にやってみるか」
俺はゲーム機に金を入れスティックを動かす。
久しぶりだからなぁ……ここに引っかけてっと!
ぬいぐるみの服の隙間にアームを入れ引っかけるようにして出口へと落とす。
「まぁこんなもんだ。これは華凛にやるよ」
「おっ!サンキュー!でもこれなんだ?」
「最近見ないがどこだかの県の非公認のゆるキャラだったかな?」
「ふーん、まぁ可愛いからいっか」
「アネキも可愛い物が好きなんすねぇ」
「別に良いだろ?羽歌も康成に何か取ってもらえよ」
「うーん、そうっすねぇ……あっ!アニキ!私はあれが良いっす!」
羽歌が欲しがったのは某アニメのフィギュアだ。
「これか?」
「何か可愛い女の子の人形みたいで欲しいっす!」
これがなかなかの強敵だった。
絶妙な配置、弱いアーム、でも少しづつ動くから取れない訳じゃない。
少しづつ動かしながらゴールを目指し2,000円を使いようやく穴に落とすことができた。
「悔しいが完全に店の思惑に乗っちまったぜ……」
「やったっす!アニキありがとうっす!」
箱を抱え喜ぶ羽歌とそれを見て笑う華凛を見ると「まっいいか」と俺は苦笑した。
「ここに居ましたか。つぎは華凛と羽歌さんですよ。お待たせしました……」
後ろから声をかけられると袋わ、抱え少しやつれた甚平さんが立っていた。
「えぇー!もう来たのかよー!」
「仕方ないっすよアネキ……」
「大変でしたけど楽しかったですよ。それに華夜さんもイキイキしていました」
「そっかぁ……母ちゃん楽しんでるのか。仕方ねーな!よし羽歌、行くぞ!」
「あいよっす!」
「俺らはどうしますか?どこかで休みますか?」
「そうですね……康成君、私もここで遊んでみたいです。凄く少年の心を思い出す気がしてワクワクします」
「良いですよ。どれにしましょうか?」
俺と甚平さんが店を周り結局ガンシューティングで2人プレイで教えながら遊んだ。
全てが初めての甚平さんは少年の用にキラキラした目で楽しめていたようだ。
そして甚平さんシューティングゲーム無茶苦茶上手かった……
何だよ命中率98って……
………………
「ぷはぁーー!!終わったぜー!」
「終わったっすーー!!」
「可愛い服が沢山買えたわね!康成君、ここの服屋さんはとても安いのね。びっくりしちゃったわ」
「あっちの服屋は高いんですか?」
「服を買うなんて祝い事の服くらいよ。可愛くないし高いし、それに比べてこっちの服は安いし可愛いし質もとっても良いものばかりだわ!満足よ!」
ふんすー!と鼻息を荒く、熱く語り出す華夜さんは大量の袋を抱えていた。
小休憩ながらソファーで缶ジュースを飲んでいると甚平さんがそわそわしている。
「康成君、あそこに見えるのは本を扱っているお店では無いでしょうか?本と看板が見えます」
「そういえば甚平さんのメインは本でしたね。見に行きますか?」
「是非!!」
「みんなはどうする?」
「俺はパス」
「私は行ってみたいっす」
「私は少し休憩しているわ」
「じゃあここで休んでるか?それとも喫茶店で休むか?」
「喫茶店ってなんだよ?」
「小休憩するとこだよ。軽く飲み物を飲んだり軽食を食べるとこだな」
「うーん……昼飯はガッツリ食べたいからなぁ……俺はいいや」
「私もここで大丈夫よ。少し休んだら本屋を覗いてみるわ」
「じゃあ康成、さっきのゲーセンにまた行こうぜ!」
「おう良いぞ。少し本屋の説明をしてくるから待ってろ」
俺は甚平さんと羽歌を本屋へと連れていく。
本の種類や棚の説明をする。甚平さんは「とりあえず端から見てみます」と意気込んで入店していった。
「あんなにウキウキぐ顔に表れてる族長は初めて見たっす。私はこの図鑑コーナーを見てるっす」
「あいよ。羽歌に俺の時計を貸してやるからとりあえず一時間したらさっきのソファーに集合な」
「わかったっす。確かこの時計が一周で一時間っすね?」
「そうだ。じゃあまた後でな」
「康成早く行こーぜ!」
華凛に急かされ俺らはゲーセンへと戻る。
「うぉーーー!!!」
今俺の前で華凛が全力で踊っている。
俗にいうダンス○ンスレボリューションだ。
もともと運動神経の良い華凛は先にプレイしていた人を見て興味を持ったみたいだ。
とりあえず普通の難易度で始めてみたが普通に上手い。
曲を知らない華凛は最初降ってくる矢印をタイミングをあわせて踏んでいたが次第にリズムが体に馴染んできたようでリズムに合わせ体が動くようになってきた。
俺は真横から見ていたが……
まぁ凄い……
バインバインだ。
縦横斜め縦横無尽に暴れる質量の暴力を間近で見ることができる。
この出会いに感謝しよう。
合掌。
………………
華凛は音ゲーの才能があるようだ。
他の人がプレイしている曲を聴いて手と足でリズムをとり、「さっきのやつを入れてくれ」と俺に頼む。
一度聴くと体が覚えるようで感覚だけでプレイしている。
リズム感が良いのか音感があるのかはわからないが意外にも華凛には音楽の才能があるみたいだ。
曲が気に入ったようで終わった後も鼻歌が聞こえた。




