夢の中であったような……
多分夢何だと思う。
気がついたら見たことの無い多分病院の部屋の中にいた。
部屋には10人以上の人が集まっていて、1つのベッドを囲むように立ったり座ったりしている。
俺はそれを部屋の隅で第三者のように見ている。
そのベッドには1人の初老の男性が寝ていた。
呼吸器をつけていたしもう長くは無いのだろう。
それでも見舞いの人達も泣くことなく笑っている。
男性も苦しそうな表情はせずニカッと笑っていた。
なんとなく良い家族関係だったのであろうと感じ取れた。
見舞いの家族の中に見知った顔を見つけた。
銀弧だ。
耳や尻尾は無かったがあの銀髪と胸は間違いなく銀弧だろう。
他にも華凛に似た女性や羽歌に似た女性が居たが似ているだけで今よりももっとアダルトな感じだ。
羽歌に似た女性何て背も高いし胸もそこそこな大きさだ。
あれは羽歌じゃない。
羽歌はもっとちんちくりんだ。
そんなことを考えていると銀弧がこちらを見ている。
口は動いていないが銀弧の声で「なるほど……これの事じゃったか……」と聞こえ俺は首を傾げた。
「気にするな、まだまだ長い先の事じゃよ。お主はただの夢を見ておるだけじゃ。夢の続きはそのうち解るわい。それではまた後での」
そのまま俺は夢の中なのに眠くなり意識を手放した。
……………………
「………ん、んーふぁぁー」
目が覚め横を見ると夜中暑苦しかったのか彩ちゃんが布団からはみ出し足が俺の顔に乗っていた。
いやー、不思議だなぁ。朝起きて智之の足が顔に乗っていたら最悪の目覚めなのに彩ちゃんだと何でも許せるわー。
俺は彩ちゃんの足を外すと体を起こし軽くストレッチする。
「不思議な夢だったなぁ……夢銀弧はそのうち解るって言ってたけど……何だったんだ?」
首をコキコキ鳴らし俺は大きくあくびをする。
時計を見るとまだ6時前だった。
保育園はあるが彩ちゃんを起こすには少し早いと思いどうするか悩んでいると微かに階段を登る音が聞こえる。
耳をすませると複数の声が聞こえた。
「大丈夫っす。まだ寝てるはずっすよ……」
「羽歌……本当にやるのか?」
「昨日智之に聞いたっす……寝起きドッキリって言うらしいっす……」
智之のやつ……
仕方ねーなぁ……せっかくだし面白そうだ引っ掛かってやるか。
俺は静かに布団に戻り寝ているふりをする。
部屋の襖が静かに開く音がすると羽歌の「クックック」と押し殺した笑い声が聞こえた。
さて、どんなドッキリをしてくれるんだ?
もぞもぞと動く音が聞こえると布団の中に羽歌が入ってきた。
「……ほらっアネキも反対から入るっす……」
「……わかったよ……」
よし、全力で寝たふりだ!!
「寝起きで美女が2人もいるっすよーあっ彩音ちゃんもいるから3人っす」
俺の背中に羽歌が抱きついてくる。
確かに華凛と比べると小さいのだが確かに存在する感触に俺は満足する。
横を向いている俺が薄目を開けると彩ちゃんを挟んで華凛が俺を見ていた。
「親子並んで寝てると寝方もそっくりだな……」
「本当っすねぇ」
「で、これからどうやって起こすんだ?」
「抱きついたら起きるかと思ったのに起きなかったのは予想外っす……アニキの布団が暖かくてまた眠くなってきたっす」
「おい羽歌、寝るな」
俺にとっても予想外でなんと羽歌はそのまま寝息をたててしまった。
「……どうしたらいいんだよ……」
1人取り残され困っている華凛に寝ている彩ちゃんが抱きついた。
「んみゃぁ……」
彩ちゃんは華凛の簡易的な浴衣形の寝巻きに抱きつくと手でまさぐるように確認し吸い寄せられるように胸に顔を埋めた。
「!!!っおい……」
俺も彩ちゃんのまさかの行動に今さら寝たふりだとも言えずとりあえず薄目をキープしながら表情に出さないように呼吸を整えた。
彩ちゃんは3歳だとしてもまだ赤ちゃんから卒業したてのようなものだ。
本能的に胸に吸い寄せられた彩ちゃんは寝ながら胸を……いや、おっぱいを確認すると手と頭で服と下着をかき分ける。
昨日真由美さんが用意してくれた下着だろう。
薄い青の下着が彩ちゃんごしに微かに見える。
薄目のためいつもより視界が狭い……もう少し開ければはっきり見えるのに……
「むにゅむにゅだぁ……」
感触か!?感触なのか!?
「……おい、止めろってば……っん……」
とうとうゴールへと到着したであろう彩ちゃんは華凛へ完全に密着した。
「おい……俺はまだ出ねーぞ……摘まんだり吸ったりするなって……はぁはぁ……」
ちゅーちゅーと何かを吸う音が聞こえるが彩ちゃんの頭で完全にブロックされ薄目の俺では見ることができない……
どうにかできないかと思考を巡らしていると「ふえ?危ない危ない、少し寝てたっす」と俺の後ろで羽歌が目を覚ました。
華凛はヤバイと思ったのか彩ちゃんを抱き抱えたまま反対側へとゆっくりと体勢を変える。
動かす時に「ちゅぽん」と何かが口から外れる音がし、体勢より先に華凛の視線が反対側へと向いたため俺は全力で目を見開いた。
1秒にも満たない時間だったが待ち望んだ俺には充分だった。
鮮明に何かの色や形を脳裏に焼き付けた俺は再度目を閉じ寝たふりを再開する。
華凛が反対側を向き、服を直し終えるのを待ち俺は今目が覚めましたよー感を出す。
「ん?誰だ?羽歌、布団に入り込んでどうしたんだよ?」
うむ、アカデミー賞は貰ったな。
「アニキに寝起きドッキリをしようとしたら寝ちゃってたっす……失敗したっす……」
羽歌は少し悔しそうにしていた。
華凛は少し息が粗かったが平静を保ちながら「いやー俺も彩音と寝ちまってたぜ!」と彩ちゃんを抱えたまま起き上がった。
「どうっすかアニキ?朝、目が覚めたら美女3人と同じ布団に寝てたっやつっす!」
「あぁ、悪くなかったぞ羽歌」
最高の目覚めだったよ。
「あれー?予定ではもう少し焦るはずだったんすけど?あまり面白味がないっすねぇ」
あっやべ。
「いや、これでも焦ったぞ?何とか平静を保ってるだけだぞ?本当だぞ?」
「そうっすか!それならまた忘れた頃に挑戦するっすね!」
毎日でも良いぞ?
「んーパパおはよー?あれ?鬼のお姉ちゃん?何で?」
「康成と彩音を起こしに来たんだよ。おはよう」
「そっかぁ。あのね、わからないけどね。凄くむにゅむにゅの夢を見たんだよ!凄く柔らかかったの!」
「そ、そ、そっかぁ良かったな……」
「羽歌ーー!!康成は起きたかのー?」
階段の下から銀弧の声が聞こえる。
「今起きたっすよー!今行くっすー!」
俺達4人が下に降りると母ちゃんと華夜さん銀弧が台所に立っていた。
「お客さんなのに朝から手伝ってもらって悪いね」
「自然に目が覚めちゃうんですよ。いつも朝ごはんの準備をしているからしないと何か変な気がして、それに勉強にもなりますからお手伝いはさせてください」
「それじゃあ遠慮なく使わせてもらうよ。稲荷さんは盛り付けたのを座敷に持っていっておくれ。人数が多いから台所じゃ食べれないからね。華夜ちゃんは味噌汁の味を整えておくれ。味見をしながら味噌と出汁を少しづつ加えるんだよ」
「わかったのじゃ!」
「わかりました」
普段から料理をしている華夜さんは初めての材料でも簡単な説明でどんどんこなしていく。
まだ少しかかりそうだと思った俺はリビングへと向かうと新聞を読んでコーヒーを飲む甚平さんがいた。
「おはようございます。私は台所から弾かれてしまいました……でも新聞とテレビを見ながらこのコーヒーを飲むと凄く落ち着きますね。何故でしょう?」
良くテレビで見る出勤前のサラリーマンみたいだ……
俺達も特にする事が無かったため各々顔を洗ったり飲み物を飲みながら朝食の準備を待つ。
しばらくすると準備も終わり声がかかる。
今日の朝食はご飯に味噌汁と昨日の残り物を温め直したものだ。
彩ちゃんも朝から好きなオードブルを食べられご機嫌だった。
俺は朝からがっつりはなかなか厳しいので軽く済ませたが甚平さんと華凛は平常運転だ。
俺は朝食の席で銀弧に夢の話をしてみた。
「ほう、なかなか面白い夢を見たのじゃのぉ」
「何か解るのか?」
「全然わからん」
「おい」
「予知夢なのかただの夢なのか解らぬが夢の中の我がそのうち解ると言ったのじゃろ?それならそのうち解るじゃろ」
「俺達に似たのもいたんだろ?どんなんだったんだよ?」
「気になるっす」
「みんなもっと大人っぽくなってた感じだな」
「私もっすか!?」
「羽歌っぽいのもいたけど……あれは羽歌じゃないな」
「何でっすか?」
「普通にスタイルが、良くて胸があった。羽歌はきっと大人になってもちんちくりんだからな」
「アニキ?怒るっすよ?」
「でも寝てたのは誰なんだろうね?」
「アニキじゃないんすか?」
「俺だとして俺はあんなに老けてて何で華凛や羽歌(仮)は少ししか年をとってないんだよ?」
「(仮)ってなんすかね!?」
「まぁ言うても夢じゃからのぉ。何とも言えんわい」
「ごちそうさまでした!彩ちゃん1番だよ!」
俺達が話に集中していると彩ちゃんが先に食べ終わってしまった。
「ご飯時に少し話過ぎたね」
「そうだな。早く食べてしまうか」
その後、俺達も食べ終わりゆっくりしていると登園の時間が近づいてきた。
「彩ちゃんそろそろ保育園行こうか」
「うん!」
「それじゃあ俺は送ってくるから少し抜けるな」
「なぁ康成、俺少しついていっても良いか?腹ごなしに散歩でもしたくてよ」
「私も行きたいっす!」
「まぁ良いけどよそんなには歩かねーぞ?」
「我も行ってみようかのぉ」
「やったぁ!みんなで行こうよ!」
5人で家を出て保育園に向かうと彩ちゃんはみんなに花が綺麗な場所、猫が良くいる場所などのお気に入りスポットを教えながら先頭を歩く。
「すげーなぁ彩音は何でも知ってるんだな」
「うん!パパが教えてくれたんだよ!」
「アニキ、意外と立派なお父さんしてるんすね」
「意外とは余計だ」
「ねぇパパ?保育園では鬼のお姉ちゃん達のことは話さない方が良いんでしょ?」
「んー、話しても良いんだけどね。鬼って言うとみんなびっくりしちゃうからパパやなつばばのお友達が来たよってなら教えても大丈夫だよ」
「わかった!」
「本当のことが言えんとはなかなか世知辛のぉ」
「まぁ昨日の話を聞いたら確かに子供は怖がりそうだもんな」
「悪いな……」
「アニキが気にすることないっすよ。これから鬼や天狗のイメージアップをすれば良いんすよ」
保育園に着くと先生に軽く挨拶を済ませると彩ちゃんは保育園へと入っていった。
「おぉー子供がいっぱいっすねアニキ」
「この村にはこんなに子供がいたのかの」
「街から来てる子供もいるからだよ。仕事の都合で遅れても6時半までなら預かってくれるから街の保育園よりも人気なんだよ」
「すげーなぁ、おい康成、あれは何だ?」
華凛が指差す方向を見ると高校生がバスを待っていた。
「あの子達もこれから学校だよ。こっちでは大人になるまではよっぽどのことがない限り学校でいろんなことを学ぶんだよ」
「寺子屋みたいじゃの」
「まぁそれの延長みたいなもんだ」
「俺は勉強苦手だなぁ……」
「そうっすか?私は結構好きっすよ?」
「少し働いてみてわかったがの今の現世は皆頭が良くてびっくりしたわい」
「今度簡単な計算や現代常識くらいなら教えてやるよ」
「うへー」
「こっちで遊ぶのに簡単な計算とかできなきゃ苦労するぞ?」
あっちと文字の基本は同じだけどカタカナとか簡単な英語が今の社会には混じってるからな。
帰りに簡単なかけ算やわり算を聞いてみると羽歌は軽く説明するだけで理解した。
華凛は普段から肉や薪などの分配を手伝っているのもありかけ算は問題なかったがわり算でつまずいた。
銀弧は「そんなの簡単じゃよ。これに入れるだけですぐに教えてくれるからの!」とどこからか電卓を取り出しチートすんな!と俺に取り上げられた。
仕事で使うらしいから後で返してやった。
家に帰り華凛と羽歌が子供がいっぱいいたと話すと「帰りの迎えは私も行きたいです」と甚平さんと華夜さんもついてくることになった。
時間的に出かけるにはまだ早いがみんな楽しみにしているようで早々に着替えをし、リビングで街の情報誌やローカル番組で期待に胸を膨らませていた。
プレッシャーが凄い……




