ポテト味の復刻を望む
「これ、なんすか?」
「ちょっとしたお菓子だよ。明日は現世に行くんだ。少しでも肉体を得ておかないとしんどいみたいだからな。沢山持ってきたから暇があれば食べろよ」
羽歌が銀の包みを空けると中から長方形の食べ物が出てくる。
「何かよくわからない形の食べ物だな。遠出するときの狩りの非常食みたいだ」
まぁ間違いではないな。少ない量でカロリーが摂取できる。
学生の時は腹減ったら軽食用にこいつを常備してたな。
「その通りだな。簡単にバランス良く栄養をとることができる。カロリーの友達だよ」
カロリーメ○トは毎日買うには高いからいつも類似品を100円ショップで買ってたなぁ……
「本当にこんなんで栄養がとれるのか?まぁ確かに良い匂いはするな」
「確かに少し甘い匂いがするっすね」
「羽歌、食うか?先に良いぞ?」
「あたしが毒味っすか?まぁアニキが持ってきた食べ物だから大丈夫だとは思うっすけど……オススメはどれっすか?」
「オススメか?初めてなら……チョコが食べやすいんじゃないか?俺はポテト味が好きだけどな」
俺がチョコ味の包みを空けると羽歌はなんとも微妙な顔で首を傾げる。
「アニキ、これ本当にオススメっすか?黒いっすよ?焦げて苦そうっすね……」
「まぁ見た目はな。でもこういうもんなんだよ」
「羽歌が食わねーなら俺が食べるぞ?」
華凛はチョコ味のカロリー菓子を躊躇なく半分程口に入れ咀嚼する。
モグモグモグモグ
「…………ん?…………んーー、ちょっとわかんねーなぁ」
華凛は残りを口に放ると無言で2本目に手を伸ばす。
ガシッ!
伸ばした手を羽歌が止める。
「アネキ?正直に言うっすよ?旨かったっすね?」
「いーや、まだわかんねーなぁ。ほのかに苦味は感じるが香りと甘さが……」
「その感想は美味しい時に言うもんすよ!?私も食べたいっす!」
「ったく……しかたねーなぁ。ほらよ」
華凛はそういうと2本目を半分に割り羽歌へと渡す。
「何で半分っすか!?」
「1本目は毒味だよ。2本目からが本番だろ?俺と羽歌で半分こだ」
「なんか納得いかないっすね……あっ本当に旨いっす。苦味がほどよくて甘さがちょうど良いっすね」
「他のはどうする?プレーンにフルーツ、チーズにポテトなんてのもあるぞ?」
康成はリュックから大量のカロリー菓子を出すと羽歌と華凛は1つづつ取り出し味と感想を言い合っている。
「甚平さん達もどうですか?」
「おや?良いのですか?」
「もともとみんなの為に持ってきたんだ。足しになるかはわからないけど肉体の足しにしてください」
「あなた、せっかくだものいただきましょ?私もチョコ味が気になるわ。一緒に食べ比べしましょ?」
「そうですね。いただきますか」
そこからは全員で食べ比べが始まった。
結果、華凛はチーズ味を気に入り、羽歌はチョコ、甚平さんがプレーン、華夜さんがフルーツ味と好みが別れた。
俺のオススメのポテト味はみんなにはイマイチだったようで俺が消費することになった。
解せぬ………
………………
「明日は3時くらいに迎えに来ますね」
「わかりました。本当に着替え等はいらないのですね?」
「あっちで揃えるから大丈夫ですよ。持っていくとしても小物くらいじゃないですかね?」
「なんか荷物がないと旅行って感じはしないな」
「そうっすね。こっちだと長距離は馬と大荷物が必須っすからね」
「羽歌達も馬を使うのか?飛べるだろ?」
「一泊二泊くらいなら少ない荷物で飛んで行けるっすけど長旅用の荷物は流石に無理っすよ。まぁ今の私なら多分大丈夫っすけど」
まぁ確かにずっと飛ぶとか、筋肉を使う分ずっと走ると同じだもんな。
「わかったわ、簡単に髪留めみたいな小物だけにしておくわね。それて康成君、今さらなのだけれど費用とかは大丈夫かしら?服も用意して貰っちゃって、買い物や食事もでしょ?この人達の食費だけで結構行くわよ?」
「あー、全然大丈夫っすよ。甚平さんに貰った霊水晶を少し換金してみたら偉い額になりましたんで気にしなくて大丈夫ですね。好きなものを気にせずに食べたり買ってください」
「それは良かったです。現世でも価値がついたのは助かりますね」
助かったのはこっちなんだけどなぁ……
あっちでは気にしないで遊んで貰えるようにしなきゃな。
「康成!」
「なんだよ?」
「明日からよろしく頼むな!楽しみにしてるぜ?」
「私も楽しみにしてるっす!」
「おう、期待してもらって良いぞ。楽しい旅行だ。遠慮するなよな」
「それではよろしくお願いします」
日差しが真上から降り注ぎ、夏が近づく。
「良い天気だな。よーし!まずは帰って寝るか!」
夜勤前だしな……
…………………
康成が帰宅すると棗の車はなかった。
代わりに家の車ではないワゴン車が止まっていた。
「銀弧は仕事だし母ちゃんは明日の買い出しか?なんだこの車は?もしかして泥棒か?」
康成は玄関から入りバットを持つとリビングへ足を運ぶ。
リビングに近づくと独特の悪臭が漂っている。
リビングでは康成のよく知る人物がいた。
「智之、お前何してんだよ?」
リビングで智之が納豆ご飯を食ってた。
「げふー、いやー食った食った。同じ納豆なのに何故か康成の家で食べる納豆が旨いんだよな。なんでだろ?」
「しらねーよ。多分お前の家が、がっちがちの洋風な家だからだろ。雰囲気だ雰囲気」
「そうかふいんきか」
「雰囲気」
「ふいんき」
「ふんいき」
「ふい……」
「ふん、いき」
「ふんいき」
「そう!ふんいき!」
「ふいんき!」
だめだ。手遅れだ……
「まぁどっちでも良いだろ?それより荷物どこに置けば良い?」
「何の荷物だよ?」
「お前がうちの嫁に頼んだんだろ?」
あぁ、服か。
「もしかして表の車は真由美さんの所のやつか?」
「そうだよ。休みだったのに真由美の会社に呼ばれてな。康成から頼まれたから持っていってくれってさ。まじで重かったぞ。腰がパンパンだ」
「それはわかったけどよ。何で智之がうちで飯食べてるんだよ?」
「着いたらちょうどお前の母ちゃんから、買い出しに行って手伝いできないから康成が帰って来るまで冷蔵庫から適当に使って飯食べてろって言われた」
「ちなみに何食べたんだよ」
「納豆2パック、ネギ半分をごま油で炒めた。流石に家ですると真由美が煩いから封印してた食べ方だ。今度試してみろよ。無茶苦茶旨いぞ。俺のスペシャリテだ」
こいつ、ヒトの家で……
臭いは酷いが確かに旨そうだな。
「だからこんなに臭いが漂ってるのかよ」
「そんなに臭うか?それよりさっさと荷物降ろしてしまおうぜ」
「まぁ俺が頼んだ荷物だからな」
智之が車のトランクを開けると中には後部座席をたたみ、段ボールが10個入っていた。
うわぁ……まじかぁ……
確かに正確なサイズがわからないし四人分なら正当な数か。
試しに一つ持ってみたが軽く30キロはある。
「よし、やるか。荷物は座敷の端に並べていこうぜ」
「あいよ」
それから康成と智之は2人協力すると10分程で荷物を降ろし終える。
「いやぁ、重かったなぁ。謎の達成感があるな」
「だから無茶苦茶重いって言ったろ?」
仕事前に腰がパンパンだぜ……
「康成今から暇か?夕方に娘達の迎えがあるからそれまで暇なんだ。ゲームでもしようぜ?」
「馬鹿、俺は夕方から仕事だよ」
「なんだよ夜勤かよ。それなら2時間くらいしかできねーじゃねーか」
俺は4時には家を出るんだぞ?
今は丁度1時だ。2時間後は3時だ。
こいつ馬鹿か?
「なぁ頼むよ。暇なんだよ。ほら84のデトブラやろうぜ?」
「はぁ……しかたねーなぁ。何でデトブラなんだよ?しかも84って」
デトロイトブラザーズ
通称デトブラ
悶天堂の人気キャラが集まり殴ったり蹴ったりアイテムでぼこぼこにしたりと爽快系の対戦ゲームだ。
初代は悶天堂84で発売され、現在も最新のハードで好評の人気作品だ。
「うちの84壊れてるんだよ。お前んちのはまだまだ現役だろ?ほらコントローラーも持ってきたぜ」
「じゃあ俺はウッホな」
「お前のウッホ好きだなぁ。俺は蹴雄にするか」
「もちろんアイテムは?」
「「ボムだけ!」」
そこから2時間はあっという間に過ぎ気がつけば3時半前だった。
「もうこんな時間か、仕事頑張れよな。俺は娘達の迎えに行ってくるぜ」
「結局寝れなかったな。まぁしかたねーなぁ。明日はちゃんと来いよな」
「わかってるよ。うちの双子も彩愛ちゃんと風呂に入るって張り切ってたぞ」
「夕食は寿司とオードブルだぞ」
「もちろん?」
「納豆巻きも個別で頼んである」
「流石、わかってるじゃねーかよ」
「それじゃあ明日な」
「おう」
智之はワゴン車に乗り込むと街の方角へと走りだし曲がり角で康成へと手を降った。
「さてと……今日の夜勤は暇でありますように……」
フラグである。
康成は軽くシャワーを浴びると着替え夜勤へとむかった。
その後、フラグは壊れることも知らずに効力を発揮し康成の夜勤はコールの嵐であった。




