炒飯は最初から最後まで強火
翌日
康成は日勤が終わり携帯を開くと知らない番号から着信が数件入っていた。
「どこからだ?携帯番号じゃないし……どこかの店か?」
携帯の検索サイトで番号を検索すると先日買い取りを依頼した店の番号だった。
「あーすっかり忘れてたわ」
霊水晶を鑑定に出したけど、何か分かったのか?
みんな来るし少しでも良い値がつけば御の字だな。
帰宅途中に商店街があるため康成はついでに済ませてしまおうと車を走らせる。
駐車場に車を停めるとトランクから残りの霊水晶を数個取り出す。
「高値がついたらその場で追加で買い取りしてもらうかな」
夕方から夜に差し掛かる時間のため客足も少なくなってきた商店街を歩くとアーケードの真ん中に位置する買い取り店に到着した。
看板のライトがついていることを確認し店内への扉を開くと以前も居た受付のお姉さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいま…………店長ー!!!」
「うわっ!?なに?まだ俺何もしてないよ!?」
後退りし入ってきた扉が背中につく瞬間、扉からガチャンと大きな施錠する音が聞こえた。
え?鍵かかったんだけど!?
ちょっ!?まじ!?嘘!?何で!?
受付を見ると焦りながら何かしらのスイッチであろうボタンを押している受付嬢が必死に笑顔を作り康成を見ていた。
「あの……」
「店長が来るまで少々お待ちください」
「この鍵……」
「店長が来るまで少々お待ちください」
その後も康成が声をかけるが同じ返答のみの受付嬢に困惑していると店の奥から以前鑑定して貰った店員が現れた。
「天童様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
「鍵かかったんだけど?」
「鍵?あぁ、受付のものが失礼しました。天童様が入らしたら私が来るまで何としてもお持ち頂くように言っておいたものですから……まさか泥棒用の鍵をかけるとは思いませんでしたが……」
なんで鍵かけられたんだ?
康成は頭を捻りながら奥の個室へと案内されると既に一人の白衣を着た女性が座っていた。
「お連れしました。これ以上はお客様の個人情報ですのでお互いに交渉してください。何かあれば内線でお呼びください」
男はそういうと部屋の外へと出ていった。
二人きりになると女は立ち上がり話し出す。
「急にすまなかったね。そんなに警戒しないでくれよ。まぁまずは私の自己紹介から服装からだいたい想像できるとは思うだろうが科学者をさせてもらっている。早田宗近だ。武将みたいな名前だろ?祖父がつけてくれたんだ。先行は物理で所属はすまないがまだ言えない」
「天童康成だ26歳、パパをやっている。娘は3歳、仕事は介護だ」
「そうか、介護とはなかなかハードだと聞くよ。今日は仕事終わりかな?お疲れさん、立ち話もなんだからお互い座ろうか」
二人は席につくと宗近から話し出す。
「話をする機会をいただいてなんなんだが……警戒はしてないのか?」
「いきなり鍵をかけられて店の奥に通されて、俺としては理由はわからないが完全に裏の人に目をつけられて面倒事に巻き込まれたと思ったらあんたが一人で居たからな。一周回って落ち着いてるよ」
「なるほど……すまなかったね……店員に君のことを聴いても個人情報がって言ってなかなか教えてくれなくてね。私の素性を話したらギリギリ関係者だからね。あとはお互い話し合ってくれと言われてね。このような場所を貸して貰ったんだよ」
「素性?」
「まぁ詳しくはまだ言えないが……この国に属してるとだけ教えておこうか」
oh……いきなり国かよ……
確かにそこまで言われて情報を公開しなかった店は逆に凄いのかもしれないな……
「それで話ってなんだ?」
「まぁ察しているとは思うが君が持ち込んだ水晶のような物についてだ。どこで見つけたんだい?」
「近くの川原だ。散歩中に落ちてたから拾った」
「本当に?」
「99%本当」
「まだあると思うかい?」
「あったら嬉しい?」
「嬉しい」
「あったら良いね」
「なんか色々はぐらかされたような気もするが……川原に無いとも言えないし……まぁ少し探してみるよ。話をもどそうか。君が持ってきた水晶?だが店でわからないと言われて鑑定の依頼が来たんだ。たまたまその施設に私が用事で足をはこんで居てね。見たことの無い水晶でそこの学者も頭を捻っていたから私が代理で鑑定することになったんだ」
「それで何かわかったのか?」
「何もわからないから困っているんだ。わかったこともあるが……世間には好評できないことが多すぎてね……まだこの水晶のことは私の研究室で止まっているよ。簡単にこの水晶についてわかったことを説明すると水晶を媒体にすると、エネルギーが飛躍的にアップするんだ」
「どういうことだ?」
「そうだな……例えばコンロがあるとしよう。火加減は弱火だ。弱火のままではお湯が沸くまで時間がかかってしまう。早くお湯を沸かせるにはどうすれば良いと思う?」
「強火にすれば良いだろ?」
「そう、正解だ。弱い火より当然強火のほうが早く沸く。しかし、強火にするには何が必要かな?」
「ガスだろ?右に捻ってガス量を調整するんだ」
「正解だ。ガスとは簡単な括りで説明するとエネルギー資源だ。今回この水晶を使って様々な実験をさせて貰った」
宗近はポケットから鑑定用に渡した小さな霊水晶を取り出す。
「この水晶を弱火の火に近づけたらどうなったと思う?」
「話から理解すると強火になったんだろ?」
「超強火だ。弱火が中華料理用のコンロみたいな火をあげたときは研究室が燃えるかと思ったよ」
「もうちょい調整したら使い勝手良さそうだな。家のコンロだと火が弱くて中華鍋を活かせてないんだよ。超火力でパラパラ炒飯作りたいな」
「この話を聞いての感想がそれかい……ちなみに電気でも似たようなことが起きた。電気は同じように出力が上がったね。」
「なんで上がったんだろうな?」
「わからない困ってるんだよ。聞けば君は鑑定用とは違ってもう一つ水晶を持ってきたと言うじゃないか。鑑定用のサイズでこの増加量だ。手のひらサイズの物を使ったらどうなることやら……」
「確かに鑑定用と比べたら20倍くらいはでかいもんな」
「それでだ。私にこの水晶を買い取らせてもらいたい。当然鑑定用も一緒に買い取らせてくれ。科学やエネルギー学の常識が変わるかもしれない私はその研究がしたい。もちろん国も関係ない私個人の研究だ。頼む!」
宗近は頭を机につける勢いで頭を下げる
「おう、いいぞ」
「頼む!え?」
「いいぞって言ったんだ。許可する。ただし、条件が一つある」
「じょ、条件?」
「研究の進歩を俺にも教えてくれよな。楽しそうだ。あれだろ?小さな力をこの水晶がブースターになって力を増すってことだろ?ロボット造れそうだ」
男の子はそういうのが大好きです。
「まぁ私個人の研究だから、構わないが本当に売ってくれるのか?」
「ちなみにいくらくらいになるんだ?」
「そうだったね。研究費用からの購入にはできないから私の懐からになると思うから……簡単に計算すると……」
なかなか貴重な水晶みたいだからな、50万位いったりして……
いやいや、貰っただけの水晶がそんなになったら甚平さんに悪いなぁ。
もし高値だったら三人がこっちに来たら色々なもん買ってやるか。
「そうだね。1200万位でどうかな?」
「…………ん?聞き間違いか?」
「いや、やはり安いか……これ以上は分割払いになると思うが……そうだ!身体で払おう!男性は女性、しかも処女が好きなのだろう?もう私は25だが研究に没頭していてな、男性経験は無いのだ。あまり若くはないが好きにしてくれても良いぞ?」
「………………えっ?本当に?まじで好きなように調教しても良いの?うわぁ、どうしよっかなぁ……露出……白衣……ありだな……」
「いやっ、調教とまではいってないが……おかしいな、大学時代の後輩にこう言えば男は紳士面をして安値でもどうにかなるときいたのだが……」
見た目でわかるくらい宗近は冷や汗をかいている。
「知ってるよ。そんなこと言う女はだいたい金に困ってるか、ただのビッチだ。そんなことばかり言ってると本当に悪い男にヤラれちまうぞ?ちょっと焦っただろ?」
「ははは……背中に嫌な汗をかいたよ。でも男性経験は本当にないぞ?」
「その報告はいらねーよ」
「それで、いくらなら納得してくれるかな?」
「いやいや、1200万で充分大金だぞ?もともと50万も行けば夢見れるなって思ってたくらいだ。でもホントにそこまでの価値はあるのか?なんか悪い気がしてきたな……そうだ!念のために持ってきたこれも持っていけよ!」
ポケットから同じ大きさの石を3つ出すと宗近は口を大きく開け放心状態になった。
「やっぱり他にも持ってたじゃないか……しかもかなり大きい」
「そんなジト目で見るなよな。1%の嘘だよ。でももうないぞ?ほらほら」
ポケットを裏返すがもう何も入ってはいない。
「全く康成君は面白い人だ。本当に貰っても良いのかい?」
「おう、所詮拾い物だからな」
まぁまだ車のトランクと家に一箱の半分位は残ってるんだけどな……
「わかったよ。今はお金を持ってきていないから明日にでも家に届けるよ。住所と電話番号を聞いてもいいかな?」
「明日は遅番だから夜8時位なら家に居ると思うぞ」
「念のために誓約書でも書こうか?大金だし」
「大丈夫だろ?国に属してるなら馬鹿なことはしないだろ?」
「国に属する位の研究馬鹿だけどね」
「俺も国に属してるとかカッコいい言い方してみたいなぁ」
「ためしに属してみたらいいよ。なかなか面倒くさいけどね。給料は良いよ」
「そんな属せる程の才能はおれにはねーよ」
「私も才能で就職したわけじゃないよ。必死に勉強をしたよ」
「いーや、そいつは努力する才能だ。俺にはできねーや」
「ははっ、努力の才能か……その言い方は好きだね」
「それじゃあ俺は帰るぞ?」
「あぁ、急な話で悪かったよ。明日は宜しく頼むね」
話もまとまり俺と宗近は個室から入り口まで出ると店長と受付嬢が頭を下げ見送りをしてくれた。
受付嬢は最後まで警戒していたようだけど、店長はまた是非ご贔屓にと笑顔で挨拶をしてくれた。
最初は俺の情報を守ってくれたけど国に後ろ盾があるとわかってるから今後の上客になる可能性は充分あるからな。
まぁ俺じゃなくて宗近の後ろ盾だけどな。
いや……
後ろ盾じゃないけど神と鬼と天狗は知り合いにいるぞ。
多分世界で俺だけじゃね?




