ハーレムは嫌いじゃないです。むしろ大好き
「ほれ、銀狐の分の土産だ。キーホルダーになってるから自転車の鍵にでもつけろよ」
トイレから出た康成はなんとも言えない気持ちになりながらもお土産を渡す。
「おお!これは良いの!狐じゃし色合いも我にぴったりじゃ!さっそくあーばれすとに付けてくるわい」
銀狐はキーホルダーが気に入った様子で自転車に装着するため玄関へと向かう。
「これで全員に渡し終わったかな?」
「自分の分は買わなかったのかい?」
「俺のか?これだよ」
リュックからシャツを出す。
「そういえば修学旅行でもあんたはシャツを買って来てたね」
「毎回自分用の土産って何買うか迷うんだよな」
「あんたは自分には無頓着だからね」
「うるせい」
「鬼さん達は確か来るのは3日後だったかい?夕食はどうする?」
「そういえばそんなこといっておったのぉ」
自転車にキーホルダーを装着させた銀狐は満足そうにリビングへ戻ってきた。
「我はどうしたら良い?客人が来るのであればいない方が良いかの?」
ビシッ!
「あだっ!!急に何をするのじゃ!?」
康成は銀狐の頭頂部へチョップをすると銀狐は涙目で反論する。
「確かに客人だけどな泊まる場所も決まってるから大丈夫だ。気にするな。どうせここ以外まともに泊まる場所ねーだろ?」
「まぁ確かにそうじゃが……」
「稲荷さんは一応神様だろ?神様を家から追い出したらバチがあたりそうだしね」
「鬼人族の客も銀狐と話をしてみたいようだからな。それに良いのか?その日はご馳走にする予定だぞ?」
「まぁ……二人がそういうのであれば……仕方ないのぉ」
「もしかしてご馳走に惹かれたか?」
「違うわい!棗殿のご厚意に甘えるだけじゃい!」
「よだれ出てるぞ?」
銀狐は急いで口の周りを確認する。
「嘘だよ」
「謀ったなお主!?」
「寸劇はそのくらいにしといて夕食は家で良いのかい?」
「その予定だな。こっちの服を着てみたいようだからさっき真由美さんに頼んできたよ。智之と娘、一緒に飯を食べに来いよってな」
「パパ?鬼さん来る日に智之来るの?真希ちゃんと咲希ちゃんも?」
「二人とも来るよ。彩ちゃんと遊ぶって言ってたよ」
「本当!?やったぁ!一緒にお風呂入っても良い?前に約束したの!」
「もちろん良いよ」
あとで智之に入浴セット持ってこいって連絡しとくか。
「何か作るかい?」
「半分は寿司とかオードブルでも注文しようかな?残りは汁物とか、簡単なおかずでも作るか。2日目からはその場の成り行きで行こうかと思ってる」
「そういえば肉が大量に残ってたね。またトンカツでも作るかい?」
「仕込みに時間かからないか?」
「まぁ多少はかかるけど大丈夫だよ。朝から予定はないから時間はたっぷりあるしね」
「我にも手伝いをさせてくれ。その日はちょうど休みじゃから手伝いはできるぞい」
「ありがとさん。それじゃあ稲荷さんにも手伝ってもらうかね」
「彩ちゃんも手伝う!」
「彩愛はそうだね……お皿を並べてもらおうかね」
「うん!いっぱいお手伝いするね!」
「よし!決まりだな。銀狐もありがとな」
「気にするでない。我は居候の身じゃからな。神はタダ飯は食わんのじゃ」
そういうと嬉しそうに銀狐は胸を張る。
………………
予定も決まり夕食を食べ終え雑談をしていると銀狐の話題になった。
「初日の感想かや?」
「光雄には良くしてくれっては頼んだから大丈夫だと思うけどね。頼んだ身としては稲荷さんがうまくやってるか心配なんだよ」
「今日はの制服を貰ったぞ。確かここにあったような……あった!これじゃよ」
銀狐は康成のお下がりのリュックからシャツを取り出す。
シャツには真ん中に大きく「鬼麺堂」と書かれていた。
「銀狐用にしては少し大きくないか?」
シャツは銀狐の身長に対して少し大きくタグを見るとLサイズだった。
「確かに店長も言っておったわい。でもこの一つ下のものじゃと少しキツくてな……」
なるほど胸がですね。わかります。
「しばらくはこれで我慢してくれと言われたわい。今度は女性用のシャツを用意すると言っておったな」
「あの店で女性店員は見たことがないからね。勝手がわからなかったんじゃないかい?」
「確かに周りの店員は男だけじゃったの。みんなガタイが良くて大きかったわい」
「逆ハーレムだな」
「なんじゃそれは?」
「女の子一人が沢山の男にモテてちやほやされるってことだよ」
「おぉ!我はモテモテになるのじゃな?確かに今日はみんなに沢山の質問をされたのぉ。綺麗な髪だね?とか肌艶々だねどんな化粧品使ってる?とか、あとは……」
ん?質問おかしくね?女子が女子に質問するみたいな……
「店長ってカッコいいよね?とかかの」
「私もあまり考えたくはなかったけどね……光雄のやつ結構モテるんだよ。男に……」
「おぅ……そうか……」
光雄さんが男にモテるのは何ハーレムと呼べば良いのだろうか?
「なんて答えたんだい?」
「髪や化粧品はわからんからの、シャンプーは風呂場にある適当なものを、化粧品は使っておらんと言ったら羨ましがられたぞ?店長はカッコいいがの我はもう少し細い方が好みじゃと答えたらライバルが減ったって言われたぞ?ライバルってなんじゃ?」
「気にしなくてもいいよ。私は知らない言葉だね」
「そうだ気にすんなよな。俺もライバルなんて言葉知らねーよ」
「あと今日はレジ打ちを覚えてきたぞ!あれは慣れれば簡単じゃったわい。注文は食券じゃが、追加のトッピングはなかなか覚えにくいのぉ」
あぁ、マシマシ系のやつか……
「稲荷さんも初日にしてはなかなか頑張ったんじゃないかい?」
「想像してたよりは覚えることができてよかったわい。賄いとやらでチャーシュー丼とラーメンを食べてきたがあれは上手いのぉ。なんでもチャーシュー丼はメニューには無い裏メニューらしいからの」
確かにあの店のチャーシューは旨いな。
その肉でチャーシュー丼か……今度言ったら頼んでみようかな。
チャーシュー丼を想像していると彩愛が康成の袖を引っ張る。
「パパ、眠くなってきた」
「もうそんな時間か」
時計を確認すると時刻は21時を回る所だった。
「よし、パパと寝るか」
「うーんとね、あのね、今日ね銀ちゃんと寝ても良い?」
「おぉ、そういえば彩愛と風呂で約束したのぉ。我は構わぬぞ?どうじゃ康成?」
「彩ちゃんパパは一人で寝るのかな?」
「寂しいの?だったらパパはなつばばと寝たら?そしたら寂しくないよ?」
康成は棗を横目に見ると顔を反らし笑いを堪えている。
一人で寝ます。
寂しくないです。
銀狐が彩愛を連れて離れに行くと康成はやけ酒のようにハイボールを煽り、一人寂しく寝室へと向かう。
布団に入り目を閉じると部屋の襖が少し空く。
部屋に何か入って来た気配がしたため入り口を見ると銀狐の使いの狐が入ってきていた。
狐は器用に襖を閉める。
「お前は俺を励ましに来てくれたんだな?よし良いぞ今日は俺と一緒に寝るか」
康成の許可が出ると狐は康成の布団に入りくっつくように横になる。
狐の尻尾をモフモフするとケモナーも悪く無いなと思いながら眠りについた。




