お土産はあげても貰っても嬉しい
さんざん悩んだあげく結局康成は自分用に湯ノヶ原と書かれたシャツを購入した。
試着してみると現世のシャツと比べると少しゴワゴワする。
近所用の普段着にしようかな……
智之にも色違いをお土産にしてやるか。
「康成、もう買ったか?」
待ち合わせ場所に戻ると既に三人はお土産を抱え康成を待っていた。
「すまん、俺が一番最後か」
「いや、私達もちょうど集合したばかりですよ。康成君はもう良いのですか?」
「俺はばっちりだよ。みんなはもう良いのか?」
「俺は母ちゃんと自分用に買うだけだからな。そんなに時間はかかんなかったぜ」
「自分もっす!」
華凛と羽歌はそういうと自分が買った小物やお菓子のお土産を見せてくる。
「私も華夜さんに自宅の風呂に使える。温泉の効能がそのままと書いてある入浴剤、後は飲めるありがたい温泉水ですね」
甚平さん……
入浴剤はまだしも、ありがたい温泉水はあかん……
康成と羽歌は顔を見合せるとお互いに苦笑いを見せる。
「アニキの言ってた通り、そういう商売はどこにでもあるんすね……やっぱり買う人いるんすね……」
「まぁ買った本人が納得していれば詐欺にもならないからな……思い込みの商売だよ」
「どうかしましたか?」
「何でもないっす!」
「何でもないです!」
「全員揃ったし買い物も終わったな?そろそろ帰るか?」
康成が時計を確認すると時刻は15時に差し掛かる所だった。
「そうだな。今から帰れば夕食には余裕で間に合いそうだ」
「そうですね。暗くなる前に帰りましょうか。早く移動することはできますが、暗くなるとさすがに危険ですからね」
「それじゃあ行くっす!帰りは荷物が少ないから来た時より早く帰れるっすよ!」
「せっかく温泉に入ったのにな。また汗をかいちまうな……」
華凛は「はぁ」とため息をつく。
「まぁ、しかたねーよ。今度は現世の温泉に連れて行ってやるよ。車があるから行きも帰りも走ったりはしないからゆっくり入浴して帰れるぞ」
健康ランドだけどな。
「へっへっへ、現世の温泉か……楽しみだぜ!約束だからな?」
…………………
行きとは違い、お土産を持ちやすい位置にくくりつけ、四人は湯ノヶ原を出発した。
帰りも一度休憩を挟んだが、盗賊が出た。巨大な猪に襲われた等も無く行きより早く一時間程で村へと到着することができた。
「行きも帰りも何にもなかったな……盗賊が出たらどうしようかとか色々考えてたんだけどな……ちょっと拍子抜けだな」
「本当にな、一応霊砲も持っていったんだけどな。逆に荷物になっちまったな……」
「まぁ念のためですからね。何もないのが一番ですよ。今日はすぐに家に向かいましょうか。華夜さんに早くお土産を渡したいですから」
「甚平さんも村の何人かに渡すお土産買ってましたよね?今日渡さなくても良いんですか?」
「日持ちするものですし明日でも後日でも大丈夫ですよ。康成君も家族には早くお土産を渡したいでしょう?」
「まぁな」
甚平さんの家に到着すると華夜さんが出迎えてくれた。
「予定よりだいぶは早かったわね?売ってから全然休めて無いんじゃない?」
「逆に想像以上に早くつきましたのでゆっくり温泉に入ってから帰ってきましたよ。あっ、これ華夜さんにお土産です」
「俺も母ちゃんにこれ、土産だ!」
「二人ともありがとう。あら入浴剤じゃない。湯ノヶ原の入浴剤って肌がすべすべになるのよね。これは何かしら?ありがたい温泉水?」
「料理や飲み水としても使えるものみたいですよ」
「そ、そう……ありがとう」
あっ、華夜さんの目が泳いでる。
「水はさておいて……華凛のは何かしらね?あら、石鹸じゃない。凄く良い匂いね。嬉しいわ」
華凛にしては凄くまともなの買ってるな……
その光景を見ていると羽歌が近づいて来て「アネキ、最初は木刀をお土産に買おうとしてたっす。上手く誤魔化してなんとか石鹸に変更したっすよ……」
羽歌ナイスだ。
「私も買ったっす!ブローチっす!」
羽歌は紙袋から紫色のブローチを取り出す。
「あら?羽歌ちゃんも買ってくれたのね?ありがとう、花のブローチね?紫は好きな色なの嬉しいわ」
華夜さんは早速ブローチを胸に着けてみる。
「みんな渡すなら俺も渡さないとな。俺は華夜さんと甚平さんに色違いのブレスレットだ」
そういうと康成は華夜に紫、甚平に緑のブレスレットを渡す。
「おや、私にもですか?何かすみません。ありがとうございます」
「だいたいのサイズで買ったけどピッタリみたいだな」
「康成君も私が紫好きなの知ってたのかしら?」
「たまたまですよ……たまたま……は、ははは……」
まさか下着の色で選んだとか言えないからな……
それ以外の色もあったけどもう華夜さんは紫のイメージができちまったからな……
華夜さん、甚平さんにも渡したし。ついでに二人にも渡すか。
「華凛、羽歌、ちょっとこっちに来いよ」
「なんだよ?」
「なんすか?」
急に康成に呼ばれ不思議な顔をした二人は康成の近くへと歩み寄る。
「羽歌はそのままで良いな。華凛この椅子に座ってくれ。座ったら目を瞑れよ」
「なんだよ?」と華凛は少し警戒したが羽歌は「これで良いっすか?」と迷い無く目を瞑ったため華凛も目を瞑る。
康成が紙袋から髪飾りを出すと甚平は首をかしげていたが華夜はすぐに気がつき鏡を持ってくる。
「まずは羽歌からだな。二人とも動くなよ?」
康成は普段から娘の髪を編んだりとかしているため同じ要領で羽歌の髪を手櫛で整えると前髪の両サイドを赤と緑の紙留めで止める。
「よし、これで羽歌は良いな。まだ目は開けるなよ?次は華凛だな」
康成は座っている華凛の後ろに立つと羽歌と同じ要領で髪を整える。
急に髪を触られた華凛は少し驚き身体をピクッと動かしたが康成が髪をとかしていることに気づくと顔を少し紅くしながらも大人しく座っている。
髪をまとめるだけのため時間もかからず、康成は5分程で二人の髪を整える。
「よし!二人とも目を開けても良いぞ」
二人が目を開きお互いを確かめると驚きで言葉を無くす。
羽歌の髪は両サイドを紙留めで止め、前髪を上で結んだ。イメージはでこっぱち。
華凛の髪はボリュームもあったため後ろでまとめながら紙留めの紐で編み込み、改造ポニーテールにしてみた。
先に言葉を発したのは羽歌だった。
「アネキ、凄く似合ってるっすよ」
「う、羽歌も似合ってるぞ……」
「あらあら?華凛ちゃん?照れてるのかしら?」
「本当ですね。顔が真っ赤です」
「う、うるせーよ……」
「鏡を持ってきたから二人とも自分を見てみなさい。二人とも、とっても可愛いわよ?」
華夜が持ってきた鏡を見る華凛は更に顔を紅く染め、羽歌は嬉しそうに鏡を色々な角度から覗く。
「俺がこんな髪飾りつけて似合うかよ?」
「似合うと思ったから買ったんだよ」
「アニキ、ありがとうっす!」
「おう、羽歌も可愛いぞ」
「康成君は女の子の髪を編むのが上手ですね?」
「毎日娘の細い髪で鍛えてますから、たいしたもんでしょ?」
「康成君、二人のハートをがっちり掴んだわね。料理もできて、髪も編める。力もあれば気遣いもできる。100点あげちゃうわ」
「そんな大層なもんじゃないですよ。こっちに来てから色々世話になってるんだ。そりゃあ、お土産くらいは買って来ますよ」
「なぁ?康成この髪、俺は一人じゃ作れないぞ?」
「大丈夫よ華凛ちゃん!さっきみてやり方を覚えたから毎朝私が結んであげるわね?康成君、他にはどんな結び方があるのかしら?」
「他ですか?ポニーテール、ツインテール、三つ編み、ハーフアップ、後はお団子とかですかね?すみません、娘の髪でできるものしか覚えてなくて……今度カタログでも持ってきましょうか?」
「お願いするわ、今度から毎朝、華凛ちゃんの髪は私がとかして結んであげるわね。羽歌ちゃんもセットしてあげるわね?」
「やったっす!私は髪が短いから少し伸ばしてみるっすかね?」
「それも良いわね!華凛ちゃん、羽歌ちゃん!もっと可愛くしてあげるわね」
「母ちゃん、別にそこまでしなくてもいいからな?」
「何言ってるのよ!華凛ちゃんはもう少し女の子らしくしてみなさい!わかったわね!?そうだ、今から二人の髪で色々試してみましょう!」
「は、はいっ!」
「あのようになってしまうと華夜さんは止まりませんし止められません」
「さて、土産渡したし帰るかな……」
康成はその場を静かに立ち去ろうとしたが甚平に肩をガシッ!と掴まれる。
「康成君?逃げれませんし逃がしませんよ?私を一人にしないでください……お願いします……お願いします……」
何か甚平さん前よりだいぶ力がついてきたな……
その後、華夜は華凛と羽歌で色々な髪型を試し夕方の鐘が鳴ると「あら?もうそんな時間?」と夕食の準備に取りかかった。
「疲れたっす……」
「俺もだよ……」
解放され疲れきった二人の頭をポンポンと撫でると康成は保育園の迎えに向かった。




